Ch3.8 Hack完了(1)
青髪の少年は話し続ける。
『気付いていたかい? このダンジョンに出てくる全モンスターが人型であったことに。あれはね、乗り移って操縦しやすくするためなのさ』
青髪の少年?は話し続ける。
『我ちゃんは何かを乗っ取って操縦することは大の得意なのさ。それこそ、他の神たちと違ってね。彼奴らじゃあ、こんな状態じゃ完全にコントロールできないからね』
どこか得体のしれない少年は話を止めない。
『そうそう、色々とそちらの世界を調べていたら、見つけたのさ。この機体を。なんと我ちゃんたちの元々の身体のコピー体さ。それはもう驚いたね。性能は、まあそんな良くないけど』
そうして得体の知れない何者かは、最後に結論づける。
『だから、そう。分かりやすく言えば、我ちゃんは神だね。土の神。……少したどたどしかったかな? あまりこの魔法には慣れていないんだ』
……野口だと普通の名前を名乗りながら、自らは神だというこの得体の知れない輩。
ははーん さては 狂属性だな?
現地スタッフかと思ったら、新世界の神であられた様子。
……うーん。この正体不明な場所も相まって新境地すぎる。この僕の目をもってしても読めない展開だ。
「……所長、ほんとに見えないんですか」
「……んん。なんかおぼろげに見えるような、見えないような……でも声は――、聞こえるわ……怖いけど」
バグか何かなのかしら、と少し余裕を取り戻したのか思考を巡らし始めている。
『なんだい、キミたち。我ちゃんの言葉を何も信じてないのかい。……ハァ。全く、信仰心が足りないんじゃないかい?』
うひゃあやっぱまだコワイィ、と少し甲高い声を上げる所長。
ん?
……声。
「……アレ。所長。……その、声って、どんな風に聞こえてますか」
「どんな風に、って……。なんかたどたどしいけど、なんとなく意味がわかる……みたいな?」
……。
なんとなく、分かる?
不意に情景が思い出される。
――あ、ああなんとなく。おい、ていうかおまえ。話せるのか?
なつかしい、トッツォのセリフ。
初めて以心伝心を使った時の情景と今の状況が、似ても似つかないのに重なり合ってしまう。
あ。
まずい。
『あ。気づかれちゃった? しょうがない。二人まとめて洗脳しちゃおうと思っていたけど、予定変更だね』
こいつ親父と一緒で悪意も無しに――。
――間に合うか?
開いた口から言葉を発する。言葉に以心伝心で信念を乗せる。
「――。所長! 見えないものは信じないでください! それと、魔法なんてただのまやかし――」
『――ひどいな、アキ君。そんなに我ちゃんたちを全否定しないでくれよ』
――! こいつ、もうどこまで――。
『それと、ちなみにショチョウは敵だ。……そうだなァ。撃ち殺した方がいいよ』
――――――。
――――。
――。
ああ。
確かに そうだな。
確かに 野口さんの 言う通りだ。
……僕のことをモンスターの大群から助けてくれたのは野口さんなんだから。
その助言は正しいのだろうな。
「……なに一人で騒いでいるのよ。わかった、わかったわ。気休めだけど、そうね、この幽霊っぽい声は無視するわ。……ありが――」
照準は頭。
照れてるのかこちらを見ようとしない所長の頭に――。
ドン、と。
僕はレールガンを発射した。