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Ch3.5 それでも探究者は(2)

一昨日に投稿できていませんでした……。

申し訳ない。明日に今日の分を投稿してスケジュールを戻します。


ブクマ登録ありがとうございます。励まされます!

 ……さて、チャプター1の狙いは、単純に異世界での生存(サバイバル)能力の確保だろう。

 異世界に放り込まれて、その地の法則(ルール)を学び、対処する。前情報なしでの、処理能(アドリブ)力も試していたのだろう。


 チャプター2の狙いは、おおかた見せかけ(フェイスバリュー)に騙されるなという訓戒だろう。

 美しい者(エルフ)からの伝聞と、醜い者(ピグモン)の優しさ。最初の情報を、追加で判明する情報に照らし合わせ、物事を判断し対処する。間違った姿勢(スタンス)から脱却する、切り替え力を量っていたのだろう。


 その2つの章はアキヒトの父親である森教授によって監督(ディレクト)されたという。

 身を持って体験させることによってプレイヤーに()()伝えたいことを落とし込む。暗喩で賢い方法だ。



 では、このイベントの狙いはなんでしょうね?


 今回森教授は監督していない。

 ということは図らずとも、森教授個人の狙いではなく、()()()()()()狙いが強く現れ出ているということ。

 ……まあ所長の可愛い考え(あくい)も出ているのかもしれないが。


 まだ答えは出ない。


 ……。そろそろ考察だけではなく、攻略も進めようかしら。考え事をしていたら古城付近まで無事に到着できた。


「――あら」


 そのまま奥へと足を進めていると、先ほど深水を漂っていたホタルの光がこの空間に続々と集まってきているのに気づいた。

 近くで眺めてから分かったが、彼らはとても大きい。1つ1つが差異はあれど人間大の大きさは維持して明滅している。


 ――()()? わたしは今光のことを彼らと表現したか。


 少し離れた塀の上や、うち滅ぼされ展望台と化した階上からわたしのことをじっと見つめているかのように静止している。


 ――そうね。ただの光ではなさそう。なにか意思があるかのような動きだ。

 というか野次馬ね。暇なのかしら。


 水の世界では特定生物への攻撃を禁じられている。

 彼らがその特定の生物なのか、そしてそのペナルティもわかっていない。


 コツ、コツと足を進ませる音だけが空しく城に響き渡っていく。


 時折先程の光が形を変えて――例えば片手剣だとかブーメランに形を変えて――空中から襲いかかってきたが、念動力で歩きながら適当に蹴散らした。

 残る光は遠くから見てくる野次馬たちだけとなる。……彼らは分別をわきまえている様子。

 彼らは敵意もなさそうなので放っておく。例えるなら襲いかかってきた光たちは血気盛んな若者で、遠くからわたしを眺めているのは落ち着いた老人たちとでも言えようか。光にも色々と性格があるらしい。


 ちなみにペナルティは無い様子。あれが生物でないという判定なのか、そして別に生物がいるということで確定だろうか。


 歩み続ける。中に進むにつれどんどん薄暗くなっていったが、次第になぜか薄明けのような光に城中のディテールが照らされていく。


 壁に掛かる破かれたタペストリー。藻で覆われ薄汚れた青の絨毯。ろうが溶け切った燭台。

 雑居のような楕円の広部屋を通り抜けていく。


 石でできた長く広いテーブル。テーブルの周りの戸棚は石版が敷き詰められている。何枚か手に取って、いや浮かせて目の前に持ってくる。


 淡く光り輝くバーコードのような丸い象形文字が写されている。


『ゴブリンの出汁の取り方 *注意:ゴブリンは焼いたほうが格段に美味い』


『エルフは食いでもなく味も悪い。ただし歯ごたえが良いので生野菜と共に食べるのが吉』


『プテラゴたちは捕りづらいが、珍味として希少。スープに入れるが良し』

 

 ……。


 ここの居住者たちは悪食であったのかしら。

 図解付きで色々な種族の調理方法について書いてあった。


 ……気を取り直して歩みを進める。

 奥へ進み階段を上がると広い廊下のような部屋。その奥に螺旋階段。

 さらに上へ上がりきると、玉座を奥に据えた展望台のような円造形の部屋にたどり着いた。


 ……あら。玉座の後ろ手に細い通路が見えた。中を進むと光度がどんどん増していく。

 

 しばらくすると、いかにもな場所へとたどり着いた。


 さきほどの城や王宮のイメージから一変して、まるで神仏を扱っているかのような荘厳な空間とでも言えようか。

 先ほどと同じ煌めく象形文字が円形の部屋の壁中にびっしりと描かれていて、そしてその文字群はこぞって中央の台座へと吸い込まれているかように集約していく。


「……十中八九これがアーティファクトというやつね」


 丸い、揺蕩う水球のオーブが中央の台座の上を浮いている。

 ガラス張りのような丸い器に、透明な光り輝く液体が満ちていて、辺りを悲哀な色(ブルー)で淡く照らしている。

 

 手は、伸ばさない。

 多分、というかあからさまにトラップだ。

 手を伸ばせば何が起きるのかは分からないが――。


「――そこんとこ、……どうなの? 教えてくれない? そこの丸い(まあるい)アナタ」


 見やるにアーティファクトは()()()使()()()()()

 ということは自身で()()()()()想像することができると仮定できる。


『クカカ。ヨクキヅイタ。……ハジメテミルシュゾクダガ、キサハハ』


 ――我に何を望む。そう問いかけてくる水球のオーブ。


 ……なるほど。この世界での勝負(ルール)()()()()か。

 ……面白いわね。

 受けて立とうじゃない。

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