Ch3.5 かくして闘争者は(2)
ライト正宗、もとい次元刀の強みとは――。
何をも一太刀で断ち切り、そしてどんな攻撃も防ぎきれることだ。
鬼人に成った者と仮にも英雄を志す者。
討ち滅ぼす剣と守る剣。
使う武器は同じであれど、お互いのステータス、そして戦闘方法には差異がある。
だからだろうか。
勝負は長く、決着がつかなかった。
一対一の戦いであったのならば、もはや永遠に決着はつかなかったかもしれない。
しかしこの場は狂騒の場。
どちらにとって有利であるかは、
――自明の理である。
やっかみたる炎が二人の身を焦がし、雹や霰が冷淡にも二人の身を切り裂く。
一方はそれにかまわず四方を攻撃し、もう一方はそれらを完全に防ぎきり、反撃する。
そう、だからこそ――。
……いや。
それにもかかわらず、というべきか。
この勝負、鬼人の勝利である。
なぜならここは贋作と言えど幻想の世界。
個人の信条の強さが、勝負を決定づける一因となる。
スキル【鬼人想華】。
その効果として、傷つけば傷つくほど、HP、ATK、AGIが飛躍的に上がっていく。
計68回。
彼らが刀を打ち合った回数である。
誰も余波に耐えられず、もう二人の周りに動く者などは何も残っていない。
その間カケルの刀は鬼人の耳を削ぎ、腹を削り、四肢に動かせないほどの損耗を与えた。
しかし一太刀。
芯をとらえたたった一太刀が――。
カケルの全身を、袈裟に斬った。
「――」
敗者に言葉は不要。
口は開かずとも悔し気に彼は崩れ去っていく。
「……」
勝者も黙してその様を見届ける。
そして鬼人は翻す。
次なる獲物を見つけに、足を一歩――。
――踏み出せなかった。
なぜなら小石が彼の足に引っかかったから。
そうして彼の体は前に倒れていく。
……それもそのはずか。
彼の状態は、満身創痍などとうに超えている。
ドッと倒れこみ、彼の体も消えていく。
なんのこともない。
二人に闘いはただの痛みわけ。
ひいき目に見ると、引き分けとも言える形で終わるのであった。