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Ch3.3 デコーダー(2)
へええ。キミのおかあさん、どっかいなくなっちゃったんだ。ぼくとおなじだね。
そっちのキミはおもちゃをおみせからぬすんだことがあるんだね。それはすごいなあ。ぼくはやったことないや。
ああそうなんだ。キミも、よくなぐられているんだね。いたいねえ。それをみんなにわかってほしいんだよね?
……え。きみわるい?
なんでそんなことをいうのさ。
たのしいよ?
ひとのことを理解するのは――。
楽しいよ。
思い出している。そして見せている。
その時の情景を。
それを見ながらイマイさんが、僕の念話を微笑んで聞いている。
ただその時はいつもより少し目尻が下がっていて……。
そうだ。この時からイマイさんは言葉を使うようになったんだ。
『アキくん。大切なことを教えよう。悪意を理解してはいけないよ。それも吸収しようとしたら、あまりの多さにつぶれてしまう。だから、悪意は躱しなさい。逃げなさい。そうしたら――』
そうしたら――。
なんだっけ。
思い出そうとしても出てこない。
……あ。
夢が、覚めていく。