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Ch0.1 ゴブリンが倒せない

 見つけていただきありがとうございます。

 チャプター0.1から0.9まではゲームを始めるまで、そしてチャプター1からは実際のゲームが始まります。

 チャプター1.5までは書けているので、チャプター2.0までは問題がなければ毎日投稿する予定です。よろしくお願いいたします。

「ご、ごめんなさいいい!」

 

 ゴブリンに追われている僕は、自分でも聞いたことがないような情けない声を叫びながら、海岸の砂浜を爆走している。

 

『オエ、オエ!』『イロジロ*、イロジロ*』『メズラシイ、メズラシイ』


 ゴブリンたちの背丈は僕の半分くらいしかないのに、しっかりとした足取りで僕との距離を詰めてくる。砂浜での走り方をよく知っているのであろう。しかし背丈の2倍くらいな長さの槍をもっているのに、なんであんなに速いんだ!


 「くそ、これはアレか!ゲーム開始早々の戦闘チュートリアルってやつか!」


 思い出すのは過去の自分の決断。ゲーム開始前に選べる6つのユニークスキル。


 「やっぱり戦闘系スキルを選択しておくんだったあ!」


 そんな怒号のような悲鳴はゴブリン島に響き渡った。



 ――――3か月前。


 2030年9月某日。


 留学から帰ってきた僕は、つまりに詰まった郵便受けから1つずつ封筒やらなんやらを引き抜いていく。


 この家を管理していた親父は、僕が留学してから5か月くらいでこの家を発った。なので、この郵便物の量は合わせて7か月分ほどで、大量だ。むしろよくこんなに隙間なく入ったものだと感心する。


 大半は、親父宛だろう。どうやってこの量の郵便物を親父に送ったものかと考えながら、1つずつ雑に確認していると、1つだけ僕あての手紙が入っていた。差出人はなんとその親父。



 

 アキヒトへ。この手紙を読んでいるということは、俺はこの家にはいないだろう。お父さんがいなくても、悲しまないでくれ。ちゃんと俺はいつまでもお前を愛しているぞ♡。

 


 

 イラッとした。破り捨てようと思い、手紙を縦にビリビリと裂いていくと、途中で引っかかった。なにか別の用紙が入っているようだ。


 見てみると、招待状と英語で大きく書かれている、1000円札程度の大きさのプラスチックコーディングされた金色の紙が入っている。


 「なんだ、これ」


 下に小さく、Imagine a Fantasy World version β:イマジン・ファンタジーワールド先行体験、と書かれている。


 親父が開発しようとしている新規独占VRゲームのタイトルだ。もう実機プレイができるようになっていたのか……!興奮してきたな!


 「マジかー!」


 留学帰りの疲れも吹き飛んだ。郵便物の仕分け作業もあらかた終わったので、手紙を持ったまま居間へ直行する。


 手癖でリモコンに手を伸ばし、畳に座りながらテレビに電源を入れた。


『ゲーム業界へ革新。新規独占販売フルダイブVRゲーム:イマジン・ファンタジーワールドの販売予定日が発表されました』


 おお、テレビでも話題のようだ。


 テレビのAIアナウンサーの言葉を聞き過ごしながら、途中まで破り去った手紙の続きを読んでいく。




 留学お疲れ。疲れているとこ悪いんだが、こんど俺の職場へ遊びに来ないか? ゲーム先行体験の招待状と飛行機のチケットもつけとくから、都合が合いそうなら来てくれ。お前の友達用のも何枚かつけとく。じゃあな。愛してるぜ。




 チケットから飛行機の日程を確認すると、約1か月後の予定のようだ。


「僕も愛してるぜ親父!」

 

 なんて、絶対に面とむかって言えないようなセリフが口から飛び出る。

 

 『プレイヤーは6つのユニークスキルの中から、ひとつだけ選び、歴史を修正するために6つのファンタジーの世界を探索するようです。なおゲームに登場するキャラクターの造形がとても美しく作りこまれており、』


 しかし、僕はいけるとして、友達か。誰を誘おう。去年行ってた高校にこれから戻る予定だが、今はもう高2の夏を過ぎている。時期的にも受験への準備を進める人が増えていくだろう。


「うーん」


『見てください、このエルフたちの集落とその周りの自然の美しさを!またエルフたちもまるで現実に存在しているかのようなリアリティーです』


『いやー、きれいですねぇ。ゲームの中でしか会えないのが残念です』


『またそんなことを言って。奥さんも見ていらっしゃるかもしれませんよ?』


 いやー、まいったなあ!アハハハ、じゃないよ、うるさいなあ。テレビのリモコンに手を伸ばし、電源を落とす。


 プツン。


 考えを巡らせてみると、思い当たる人物が二人ほど頭に浮かんできた。受験よりもこういった体験を優先しそうな友人たちだ。


 まずは、小学生来の幼馴染。


「カケルに連絡してみるか」

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