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六話

「ふむ。おそらくそちらの国では伝承が途切れたのだろうな。リュディガー王国とガルーシア王国の祖は元々は一つであった。しかし魔と人は分裂し、国を分けたと言われている。しかし、この大地を守護する精霊は魔物も人間も平等に愛している故に、両国が仲が良ければ土地が潤い、仲が悪ければ土地が枯れるのだ。だからこそ、百年に一度、人間の国の花嫁を娶ることで精霊に仲の良さを見せつけているのだ。魔物が人間の国に嫁ぐこともあったそうなのだが、どうにも迫害が酷かったようで……その為現在は魔物の国に花嫁がリュディガー王国より来ることになったのだ」


 初耳の情報に、私はそのような重要なことがリュディガー王国では歴史から失われているのかと驚いた。


「まぁ、仕方がないのだ。人間は百年ほどで死ぬが、魔物は短くても二百年、長ければ千年生きるからな。未だに昨日のことのようにその約束を覚えている魔物がいる。故に伝承としてしっかりと受け継がれているのだ」


 確かに寿命が長いことは伝承が受け継がれることにもつながるのだろう。


 そう納得しながら、寿命が長いという事に私は驚いて目を見張った。


「ユイン様も寿命が長いのですか⁉」


 思わずそう尋ねると、ユイン様は視線を彷徨わせた後に、頷いた。


「あぁ。だが、現在の年齢は二十五だ。歴代の王は、人間の国の女性と年齢を合わせるために、若さも必要条件でな……あと、その……いや、これについてはまた話をする」


「え?」


「年齢と寿命についてだが、今はまだ早い……うむ、それで次の質問は?」


 私は慌てて気になっていたことを尋ねた。


「あの、一応確認なのですが、花嫁って、普通に花嫁なのですよね? 生贄とか、頭から急にガブリって食べられたりは、しないですよね?」


「ぶっ……いや、そんなわけはなかろう! 食わん。魔物は見た目はそりゃあ様々だが、食事は基本的に人間と同じで、そのようなことはないから安心しろ」


 私はほっと胸をなでおろすと、次に気になっていたことを尋ねた。


「……あの、どうして昨日私がお風呂潜っているのに気づいたのですか?」


「ぶっ……いや、その、す、すまない。本当にすまなかった」


「いえ、もう忘れてください。違うのです。なんでかなぁ~って気になりまして」


 私の問いかけに、ユイン様はあーとかうーとかしどろもどろになった後に、小さな声で言った。


「……すまない。その、心配で……そなたは、小さくてその、可愛らしくて、その、だからすぐに死んでしまいそうで……だから、その何かあればすぐに分かるように、魔法をかけておいたのだ」


「え?」


「すまない。自分でもストーカーのようであったと反省した。もうしない」


 しょぼんと猫耳が垂れているようなその姿に、私は胸がきゅんとしてしまう。


 本当にこの国について少ししかたっていないし、ユイン様のことなどまだ全然知らないのに、どうしてこうも胸が高鳴るのか不思議でならない。


「わかりました。そのいいです。あの、ではあと一つだけ。あの、この花嫁は誰でもよいのですか?」


 その言葉に、ユイン様は顔をあげると、腕を組み、それから悩まし気に考えると口を開いた。


「それに関しては、難しいところだ」


「難しい、ですか?」


 ユイン様は頷いた後に立ち上がると本棚から一冊の本を取り出しそれを開いた。


 それは歴代の花嫁について書かれており、私はそれを見つめた。


「貴族の令嬢もいれば平民の女性もいる。選んでいるのはリュディガー王国側のはずだ。だけれど、何かの因果が働いているのか、必ずと言っていい程、精霊に好かれる女性がこの国の花嫁としてやってくる。そなたもだ」


「え?」


「一目見た瞬間、驚いた。そなたは精霊に愛されている。そして、そなたを一目見た瞬間から俺の心臓はおかしいほどに高鳴っている。運命……それがあるのではないかと思ったほどだ」


「へ?」


「魔物にとって花嫁とは自らの命よりも大切な存在だ。時期国王に選ばれた時、自分の花嫁はどのような女性なのか考えに耽ったが……俺の創造を遥かに超える素敵な女性であるそなたが来てくれた。精霊には感謝しかない」


 私は愛の告白をされているようだと思いながら、バクバクと鳴る心臓を抑えた。


 好んでもらっているのだろうか。


 そう思うと、顔が熱くなるけれど、ふと考えてしまう。


 ここに来たのが私じゃなかったら、その人にユイン様は今のような言葉を告げたのだろうか。


 胸の中がチリリと痛む。


 私は小さく深呼吸をすると、嫌な考えを打ち消すように顔をあげ、そして口を開いた。


「私も、ここに来れて良かったです。ユイン様もルルも親切ですし、あ、あと、竜の魔物さん! 昨日ですね、竜の魔物さんに会ったのです!」


 その言葉に、ユイン様が視線を反らしながら言った。


「そうか。……魔物は恐ろしくはないか?」


「え? 人間は食べないと聞きましたし、それに、その……ふわふわのもこもこで、触らせてもらったら本当に柔らかくて、とても幸せな気持ちになりました」


「……ふわふわもこもこが好きなのか? 竜なのに毛が生えていることに疑問は抱かないのか?」


「え? いいえ。だって魔物なんてここに来るまで見たことありませんでしたし、それに私、ふわふわもこもこ大好きなんです! はぁぁあ。また竜さんに会いたいです」


「そ、そうか」


 何故かにやにやとしているユイン様に、私は小首を傾げながら尋ねた。


「そういえば、ユイン様はどのような魔物に変化されるのですか? えっと、あれ? あの、姿を変えられるっていう考えであってますか?」


 私はまだ魔物の常識が分からないのでそう尋ねると、ユイン様はうなずいた。


「あぁ。魔物にとっては人型も魔物型も同じように自分であるからな。まぁ……そのうち教える」


 ユイン様はそう言うと、立ち上がっていった。


「さて、これからまだまだ疑問に思うことはあるだろう。何かあればいつでも答える」


「ありがとうございます」


「あぁ。ではレリア嬢。この後は城の中を案内しよう」


「はい!」


 私はエスコートしてくださるのかと思い、差し出された手を取ったのだけれど、次の瞬間にはお姫様だっこをされていた。


 ん?


 考えが追い付かない私は尋ねた。


「あの何故、私は抱き上げられているのでしょうか」


「俺がいるのになぜそなたが歩く必要がある?」


 骨が弱くなったらどうしてくれるのだと思うけれど、ユイン様は私を下ろす気はないようでそのまま歩き始めた。


寒くなってきましたねぇ~。会ったか寝具を準備しないといけない季節です(●´ω`●)

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