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五話

 魔物の国ガルーシア。


 私がこの国について知っていることは少ない。


 明日からはたくさん勉強もしなければならないなと、私は意気込んだのであった。


 太陽の光が高く上ったころ、私は目を覚ました。どうやらかなり眠ってしまっていたようで、起きたのはお昼を過ぎていた。


 ルルは私が目覚めるとすぐに着替えの準備や食事の準備を整えてくれた。そして食事を食べた後、私はユイン様の執務室へと案内された。


 ルルには何があるのか尋ねても、ユイン様にお尋ねくださいと言われるばかりで、結局何の情報もないままである。


 部屋をノックするとすぐに返事があり、中に入った。


 ユイン様の執務室は小さな図書館のようであり、これまたかなりの広さがあった。


 魔物の国はどの部屋も大きく作られているのだなと思いながら、ユイン様の元へと進んでいくと、ユイン様は一度手を止めると顔をあげ、立ち上がるとソファの方へと私を促し、自分も向かい側の席へと腰掛けた。


「少しはゆっくりできたか? その……昨日は本当にすまなかった」


 そう言われ、私は昨日のことをもい出して、顔が熱くなるのを感じながら首を横に振った。


「い、いえ。私が潜ったりしたから、助けようとしてくれたのですよね」


「あ、あぁ……だが本当に申し訳ない」


「いいのです! あ、あの、恥ずかしいので忘れてください! お願いします!」


「あ……あぁ。善処する」


 忘れてはくれないのかと心の中で叫んでしまう。


 私は深呼吸をすると、午前中ゆっくりとさせてもらったことのお礼を言わなければと、顔をあげて言った。


「あの、午前中はゆっくりさせていただきありがとうございました」


「疲れがたまっているのだろう。それはそうだ。あんな馬車にずっと乗せられていたのだから……大変な思いをさせてしまったな」


「え? あぁ……いえ」


 ほぼ追放であったから、あんな馬車であったし、荷物のない状態であった。


 こちらについてありがたかったのは、ドレスなど生活用品一式がちゃんと整えられていたことであり、私の為に準備してもらったのだと思うと、嬉しかった。


 ルルは私とユイン様の前へと紅茶と菓子を用意してくれている。


 目の前に置かれた紅茶からは、嗅いだことのない香りがして、お菓子もまた見たことのない物であった。


 おそらくそれを察したのだろう。ルルが私の為に説明を加えてくれた。


「こちらはガルーシアではよく飲まれる紅茶でして、さわやかな味わいのものとなっております。こちらの菓子は、ユイン様が好んで食べられる焼き菓子でございます」


 私はそれに手を伸ばそうとした時であった。


 その皿ごとユイン様が持ち上げてしまい、私は一体どうしてと首をかしげると、ユイン様は私の横へと座りなおして焼き菓子を私の口元へと差し出した。


「え?」


 私は意味が分からずにルルへと助けを求めるように視線を向けようとしたのだけれど、気が付けばルルの姿はなく、部屋には私とユイン様だけとなっていた。


「え?」


「どうした? 食べないのか?」


「へ? えっと……私、自分で食べられますが?」


 そう言うと、ユイン様は眉間にしわを寄せて小首を傾げた。


「何故俺がいるのに自分で食べる必要がある?」


「へ?」


「俺が一緒にいる時には、俺の手から食べればいいだろう?」


 頭の中で言葉の意味を解釈しようとするけれど、いまいちよく分からず、瞼を閉じてもう一度先ほどの言葉を反芻する。


 けれどやはり分からず、目を開けると率直に尋ねた。


「あの、リュディガー王国では、自分でお菓子などは食べるのですが、ガルーシアは違うのですか?」


 ユイン様はその言葉に逆に驚いたようだ。


「何故、花嫁にそのようなことを自分でさせるのだ?」


「ほう」


 郷に入っては郷に従え。私は静かに納得をすると口を開いた。


「あーん」


「あぁ。ふふっ……どうだ? 口に合うといいのだが」


「おいふぃれふ」


 もぐもぐしながら、少し一口が大きかったななんてことを思っていると、ユイン様の猫目が三日月を描き、嬉しそうに微笑まれた。


 突然の微笑みに、私の心臓はぎゅんっとなり、不意打ちにバクバクと心臓が鳴ってしまう。


 今までこんな勘定抱いたことがなく、私は自分の心臓がおかしくなったのかと思う。


「色々心配はあると思うが、俺が幸せにする……だから、逃げようなどと考えぬことだ」


 そう言われ、私はどうして私が逃げようと考えている前提なのだろうかと疑問に思う。


 自分は逃げるつもりはないというか、むしろリュディガー王国をほぼ追放されたような形なので、この国にいさせてもらわないと困る。


 今のこの現状からして頭の上からガブリと食べられることはなさそうだし、出来ることならば平和に暮らしていけたらベストである。


 だがしかし、その為には、『浮気、絶対ダメ!』ということをちゃんと訴えていかなければならないと思った。


 元婚約者のコンラッド様のように、浮気をするような男と結婚など絶対にご免である。


 その為に、浮気をさせない環境づくりを徹底していかなければと私は思い、顔をあげると尋ねた。


「あの、今後私はどのように生活をしていけばいいのでしょうか」


 私の言葉に、ユイン様は机の上へと日程表を広げて説明を始めた。


 そこには事細かに日程と勉強すべき事項やどこで何をするかなどが記入されていた。そして一番驚いたのが、ほとんどの時間をユイン様と共に過ごすように組まれているという事である。


 四六時中一緒にいると言っていたが本当だったのだなと思い、こちらとしては好都合であると私はほくそえんだ。


 浮気なんて絶対にさせるものかという決意は変わらない。


 基本的に勉強などはユイン様の仕事をすることの執務室で受けることとなっているようだ。


 恐らくユイン様の動きに合わせて日程は組まれているのであろう。


 騎士団の訓練見学などの時間も設けられており、そこではユイン様の戦う姿が見られるのだろうかとわくわくしてしまう。


 コンラッド様とはほとんど一緒に過ごす時間がなかったので、異性と一緒にこのように時間を共有するのは初めてで、わくわくというかちょっとドキドキとする。


「今日は。そなたとの仲を、出来れば深めていきたいと思っていて……なのでこの後の時間は自由に使えるようにしてあるのだ」


「え? そうなのですか?」


「あ、あぁ。その……そなたも我が花嫁となり、疑問などもあるだろう? 答えられることは答える。何でも聞いてくれ」


 私はその言葉に、ならば気になることを聞いていこうと思い、少し考えると口を開いた。


「あの、気になっていた点について尋ねてもよろしいですか?」


「うむ。答えられることであれば応えよう」


 私は頷いてから一番まずは気になっていたことを尋ねた。


「どうしてガルーシアはリュディガー王国から百年に一度、花嫁を迎えるのですか?」


 一番気になっていた点である。


 リュディガー王国とガルーシア王国はあまり交流関係がない。故に、この百年に一度の婚姻は何のためなのか気になっていた。


 私は意気込んでそれについて尋ねたのであった。


読んでくださる皆様に感謝です!

少しでも楽しいと思ってもらえたら嬉しいです('ω')

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