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十二話 完結

最後まで読んでくださった皆様に感謝です。ありがとうございます('ω')

 その日の夜のことであった。


 私はメリーという女性の声とシルエットをふとベッドの中で思い出して、ずっと何かが引っかかっていることに気が付いた。


 そして、思いつく。


「メリル様?」


 私はハッとして飛び起きると、慌てて夜着ではあったけれどユイン様の元へと向かおうとした。


「あーら、だめですわ」


「え?」


 突然、部屋の中に気配を感じ、私は動きを止めた。


 首元に冷たい物が当てられているのが感触でわかる。


「貴方は……メリル様?」


「あら、気づかれてしまったのですねぇ。はい。貴方からご婚約者を奪ったメリルです」


 私は驚きながら身を固くすると、メリル様が楽しそうに言った。


「ふふふ。貴方の元へと転移できるように絵具を付着させて魔法をかけておいて良かったですわ」


「絵具? あ……でも洗ったのに……」


「関係ないわよ~」


「メリル様、貴方は一体何者なの?」


 私がそう尋ねると、メリル様は楽しそうに私を椅子へと促して座らせると、その正面に座っていった。


「私はね、ガルーシアはもっともっと国土を広めていくべきだと思っているの。だから、スパイとしてリュディガー王国へ潜入し、そして王太子を篭絡した。後は、私が得た情報を元にリュディガー王国に攻め入ればいいのに、ユイン様はそれを良しとはしなかったの」


「え?」


「だから私はもう一人の王の器であったゲリル様側についた。ただあまりうまくいっていなくてね、私大変なのよ。だから手っ取り早く貴方を手に入れに来たの。貴方がゲリル様の子を妊娠させれば完璧だわ」


「え?」


「リュディガー王国から嫁いできた花嫁と結婚した方が時期国王よ。結局は先に結ばれて子宝に恵まれたら、そちらが王になるしかないでしょう?」


 私はその言葉にぞっとした。


 あまりにも短絡的な考え。


 強者でなくても時期国王になれるのであろうか。


「ふふふ。さて、ではゲートをつなぐわ」


 私は逃げようとしたけれど、ナイフを向けられ、そして命令をされる。


「さあゲートの中へと入りなさい。この先にゲリル様が待っているわ!」


「い、いや」


 けれど、メリル様の放った魔法によって私の体はゲートの中へと吸い寄せられていく。


「い、嫌! ユイン様! ユイン様ぁぁあぁ!」


 私は恐怖から叫び声をあげた。


「ふふふ。叫んだって聞こえるわけが」


―――― どごぉぉぉぉぉん!!!


 突然壁が砕ける音が響いたかと思うと、竜の姿のユイン様が現れた。けれど私の体はそのままゲートへと吸い寄せられていく。


「ユイン様ぁぁぁ」


「レリア!」


 体がゲートに吸い込まれるが、ユイン様も一緒にゲートへと飛び込んだ。


 メリル様は驚いた瞳でゲートを閉じようとするが、それをユイン様がこじ開け、そして気が付いた瞬間、そこは別の場所であった。


 くつろいだ服のゲリル様がそこにいたのだけれど、なんとその部屋は見覚えのある場所であり、私は驚いた。


 なんと、そこはリュディガー王国の、コンラッド様の私室であった。


「ここは……」


 ユイン様は私のことを抱き込み、そしてメリル様とゲリルはこちらに向かって林セイン耐性を取る。



「メリー! お前、レリア嬢だけをつれてくるはずではなかったのですか!」


「突然ユイン様が飛び込んできたのです! っく。それよりコンラッドはどうしたのですか!? あいつはまだ利用価値があるのに、まさか、殺したのではないでしょうね!」


「殺してはいませんよ。ほら、ここにいます」


 ゲリルが立ち上がると、なんとコンラッド様はゲリルの椅子にされており、両手両足を縛られて、泣きながら椅子として使われていたのである。


「コンラッド様?」


 私はあまりにも哀れな姿に驚くと、私を見てコンラッド様は助けを求めるように声をあげた。


「れりあぁぁあっぁぁ。ううぅぅぅ。まさか、私の為に、来てくれたのかぁぁあ? あぁぁ。やっぱり僕の最愛は君だ。君だぁぁあ」


「いえ、私にはすでにユイン様がおりますので」


「え?」


 コンラッド様にきっぱりとお断りを入れたのだけれど、コンラッド様は錯乱するように言った。


「なんでだよおぉぉぉ。お前はいつも僕のことを考えて、僕の為だけに生きてきたじゃないかぁぁぁ。こいつらを止めろよぉぉぉ」


 泣き叫びながらそういうコンラッド様に、私は幻滅していると、ユイン様がうなり声をあげた。


「お前、二度と俺のレリアの名前を呼ぶな。レリアが汚れる、もし次名前を呼べば、その首切ってやる。いいな」


「ひひひひひぃぃぃ。化けものぉぉぉぉ。ま、まさか、本当に花嫁に?」


 私はコンラッド様に向かってはっきりと告げた。


「はい。私はユイン様の花嫁でございます。コンラッド様の婚約者であった頃よりも、はるかに幸せに暮らしております」


「なななななっ」


 混乱するコンラッド様を、ゲリル様は蹴り上げると黙らせた。


「っは。こんな男の婚約者であったとは、花嫁殿も不運でしたねえ。ですが僕が幸せにしてあげますからね」


 私ははっきりと告げた。


「いいえ結構です。私はユイン様の花嫁ですし、ユイン様以外の方と結婚するつもりはありません」


 その言葉にゲリルは眉間にしわをよせ、そしてユイン様は嬉しそうにしっぽを振った。


 私はユイン様を見上げると、言った。


「私、最初は今度旦那様になる人もいずれ浮気をするのではないかと不安に思っていたのです。男の人なんて浮気をするんだから、見張っておかないとって。でも、違いましたわ。浮気をする男はいる。けれどユイン様はそのような男とは違います」


「なっ」


「うっ」


 ゲリル様とコンラッド様は顔を歪めた。


 メリル様は笑い声をあげると言った。


「あはは! バカねぇ。男なんて皆浮気する生き物よ。ユイン様だってそうに違いないわ」


 メリル様の言葉に、私は首を横に振った。


「いいえ。私、ユイン様のことを信じていますの」


「あっそう。でも、貴方達は結ばれない運命よ!」


 次の瞬間メリル様は巨大な蛇に姿を変え、そしてゲリル様は赤い竜へと姿を変えた。


 ユイン様は私を庇いながら二人からの攻撃をかわした。そして、いとも容易くゲリル様を殴りつけ、メリル様はしっぽで薙ぎ払った。


 二人はうめき声をあげ、何度も攻撃を仕掛けてくるが、ユイン様には実力的にもあまりにも差があるようだった。


 結局すぐに二人は力が尽きて人の姿へと戻ってしまった。


「はぁ。勝ち目はないのは分かっているだろう」


「っく。どうして、どうしてだ! 僕の方が絶対に国王に相応しいはずなのに!」


「そうよ! ガルーシアはもっと国土を広げていくべきよ! それなのに、そんなつもりのないアンタが王になってどうするのよ!」


 二人が叫ぶのを聞いて、ユイン様はため息をつくと人の姿へと戻り、頭を掻くと言った。


「ガルーシアの民は魔物によって個性が違いすぎる。国土を広げたところで、反発し上手くいかないのが目に見えている。今の状況で平和的に関係性を広げていく方がガルーシアにとっては有益だ」


「そんな」


「っく。そんなのやってみなきゃ分からないじゃない! 私が貴方の秘書として働いていた時も、いつも他の国を奪う手はずはできているって言っても、貴方は頷かなかった! 保守的なことは罪よ!」


 メリル様は秘書だったのかと思っていると、ユイン様は大きくため息をついた。


「上手くいく場合といかない場合はあるのだ。ゲリル。お前は国王になってもやりたいことが不確かすぎるし、メリー。お前は金ばかりだ。だが、国は民あってこその国なのだ。お前たちのように益や自己中心的な考えでは国は亡ぶ」


 二人はうなだれるほかなく、ユイン様は二人を拘束すると、ゲートの中へと押し戻した。コンラッド様は縄に縛られたままであるが、こちらに向かって叫んだ。


「これを外してくれ!」


 その言葉に、ユイン様は眉間にしわを深く寄せると、コンラッド様の縄を切った後、その肩をポンっと軽く叩き、肩に手を置いた。


「……レリアを我が花嫁として選んでくれたことには感謝しよう。だが、レリアはすでに我が国の花嫁だ。よいな」


「っひ……いってててててててててて。くくくく食い込んでいる! 食い込んでいるぅぅぅ! わわわわ分かってい

ますぅぅぅぅ」


「あぁ。共不干渉でいよう。それがお互いの為だ」


「ひっぃぃぃぃぃ」


 コンラッド様のズボンが、水で何やら濡れ始めたような様子が一瞬目にはいたけれど、私は視線を反らした。


「レリア。帰ろう」


「はい。ユイン様」


 私たちは手をつないでゲートをくぐった。


 コンラッド様が何かつぶやいたような気がしたので、最後にはっきりと告げた。


「浮気男は最低ですわよ。そんな男性に素敵な女性が振り向くことなんてありませんわ。では、さようなら」


 私達がゲートをくぐると、そこにはすでに騎士達が集まっており、ゲリルとメリル様は捕まっていた。


 その後すぐに二人は牢へと入れられ、処分についてはおって裁判にかけられることになった。


 ただ、幽閉か処刑か、どちらかからは逃れないだろうと言われている。




 私とユイン様は、日常の生活に戻り、少しずつ結婚式の準備を進めることとなった。


 盛大に結婚式は開かれる予定となっており、私は楽しみにしている。


 そんな中で、ユイン様と結婚式の前夜一緒にお茶をしていると、ユイン様が真面目な表情で私の目の前に跪くと言った。


「俺はこれから女性として妻としてそなただけを愛し、尊び、幸せにしていくと誓う。これから一緒に長い時を過ごしてくれないか」


「もちろんです。……長い時?」


 私が首をかしげると、ユイン様は私に指輪を差し出した。


「これは、私の人生の半分の命を吹き込んだ指輪だ。そなたの指にはまった瞬間、そなたに私の命の半分が移る」


「え? ということは……」


「死ぬときは殆ど一緒の時期に死ぬという事だ。人間の一生よりも長い時となるのは間違いない」


 私は、少し考えてから、頷いた。


「はい。お受けいたします」


「レリア。ありがとう」


 ユイン様は私を抱きしめると、ほっとしたように息をついた。


「断られたらどうしようかと思った」


「ふふふ。ユイン様とずっと一緒にいたいので、私は嬉しいです。でも本当に良いのですか?」


「あぁもちろんだ。花嫁と長い時一緒に暮らせることは幸せなことだ。これからよろしく頼む」


「はい」


「あぁ、もちろん、俺は浮気などは絶対にしない。命にかけて誓おう」


 私が気にしていたことを、冗談を言うようにユイン様は口にする。


 私は笑った。


「ありがとうございます。ふふふ。信じていますわ」


 私たちは次の日、永遠の愛を誓い合った。


 婚約破棄から始まった私達の幸せな生活は今も続いている。


 ユイン様は私のことを本当に愛してくださっており、周りからは『あのユイン様が』『嘘だろう? あの最強竜が?』『誰があの笑顔を浮かべる男は! 花嫁様は偉大だな!』と言われている。


 これからもずっと、ユイン様と一緒に過ごしていけたら幸せな毎日だろうなと、私は思ったのであった。







読んでくださった皆様、ありがとうございました。

少しでも楽しいなと思っていただけていたら幸いです。


作者かのんよりお知らせ

2022年 12月10日 『心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される』がTOブックス様より書籍化いたします!(●´ω`●) 楽しみです!

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― 新着の感想 ―
[一言] ひどい誤字が多過ぎて直す気にもなれませんでした 推敲全くしないのですか?
[気になる点] 林セイン耐性--臨戦態勢? [一言] お話は面白いと思いますが、余りにも誤字が多すぎて読み辛いのと冷めてしまいます。
[良い点] もふもふは正義! [気になる点] ちょこちょこ出てくる「嚙」←こういうのが気になってしょうがなかったです。 [一言] 短編は読んでいないのですがとてもサクサク読めて良かったで…
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