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一話

短編では満足できなかった作者です('ω')

 人生とは残酷なものである。


 前世の記憶を取り戻し、自分が悪役令嬢なる者に生まれ変わったと思い出したのが今、この瞬間なのだから、やるせないものだ。


「レリア・ヒューバートン! お前との婚約を破棄する! お前の罪は重い! よって、お前には魔物の国であるガルーシアへと嫁ぐことを命じる!」


 舞踏会のダンスホールに響き渡るその声の主は、私の婚約者であるコンラッド・リュディガーのものであることは間違いなく、私はそれを呆然と見つめていた。


 ないないない。


 どうして今のタイミングで私は自分が悪役令嬢であると思い出してしまったのか。


 せめてもう少し前に前世の記憶を思い出していたかった。もし思い出していたならば、どうにかできたかもしれないが、すでに断罪の場面であり、コンラッドの横には麗しの聖なる乙女であるメリル様が涙にぬれた瞳でしなだれかかっている。


「この婚約破棄は決定事項である! すでにお前の乗る馬車は用意してある! 連れていけ!」


 騎士達が私のころを乱雑につかむと、引きずるようにして私を連れて行こうとする。


 このままではまずいと私は声をあげた。


「わ、私は無実でございます!」


 そりゃあ、メリル様が邪魔なのは確実で、はっきり言えば記憶を思い出す前の私は些細な嫌味を言った覚えはある。


 そりゃあそうだ。


 婚約者になれなれしく触れる女性がいれば牽制するのは当たり前であったけれど、罪など犯してはいない。


 そこで私はハッとした。


「あーーーーーーーーなるほどぉぉぉぉぉぉ」


 騎士に引き摺られて遠ざかっていくダンスホールを見つめながらヒロインのメリル様へと視線を移せば、楽しそうにひらひらと私に向かって手を振っていた。


 なるほど。ヒロイン様も転生者系の物語でしたか~と、心の中で思った。


 最近の流行りとしてはヒロインが最終的にざまぁされるものだというのに、私に至っては、馬車の中へと押し込められてしまい、ざまぁどころではない。


 というか現状ざまぁ出来る気すらしない。


 古びた馬車の中は埃っぽくて、窓一つない。


 私は馬車があらあら悪しく揺れ出すのを感じ、どうにか椅子にしがみつきながら頭の中で必死に物語のエンディングを思い出していた。


 けれど、どんなに必死に頭の中を探してみても『悪役令嬢は魔物の国で最悪にして最強の魔物の元へと嫁がされたのであった。その後、彼女がどうなったのか知る者はいない』という言葉しか思い出せない。


 つまりそういうことだ。


 リュディガー王国は王子様とヒロインちゃんとめでたしめでたし。本来ならば転生物語であれば悪役令嬢に転生して、あの手この手でヒロインちゃんに負けないぞぉ~というのが定番のはずが、私は思い出すのが遅すぎたせいでそれもできないときている。


 そして、乙女ゲームのストーリー通りに行ったという事は、悪役令嬢のその後なんて、誰も知らないということだ。


 私はガタンガタンという大きな揺れに耐えながら、胸の中が恐怖で埋め尽くされていくのを感じた。


 魔物の国ガルーシア。


 百年に一度、リュディガー王国はガルーシアへと乙女を嫁がせる仕来りがあった。乙女は馬車にのせられてガルーシアの国境の砦前に花嫁である乙女を捧げるのが仕来りであり、その後はどうなるのかは誰も知らない。


 二百年前、これを怠った年は、ガルーシアから巨大な魔物が現れ、一人の乙女を攫って行ったそうだ。


 魔物になど敵うわけがないと、それならば乙女を一人捧げればいいと、その仕来りは続いていた。


 魔物の王国……。


 私は、大きく深呼吸をすると瞳から溢れ出てきそうな涙をぐっと堪えた。


 幼い頃はあんなに仲が良かったというのに、時間の流れとは残酷なものである。


「コンラッド様の……ばかぁぁぁっ!」


 成長して会話が少なくなっていったのは、お互いに思春期に入り、距離感が出来たからだとばかり思っていた。


 時期が来ればまた昔のように仲良くなり、そしてリュディガー王国をともに栄えさせていくのだとばかり思っていた。


 今までの思い出が走馬灯のように頭の中に流れてくるけれど、そんなものなどなんの意味もなかったと、私は苛立ちが湧き上がってくるのを感じた。


 昨日までの自分がいかにバカだったのかを思い知らされて、私は唇をぐぐぐっと噛んだ。


「浮気をする男なんて……浮気男なんてこっちから願い下げよ!」


 私は拳をぎゅっと握ると決意した。


 魔物だろうが何だろうが、嫁ぐというのであれば自分の婿になるということである。


 あんな浮気男よりはもしかしたらましかもしれない。


 食べられるかもしれないとかそういう悪い考えはしないことにする。


 絶対に浮気なんて許さない。


 魔物だろうと何だろうと、浮気は最低の男のすることである。絶対に許さない。


 そして、私自身変わろうと思った。


 浮気を許すような女になった覚えはなかった。けれど実際にコンラッド様は浮気をして私ではなく違う女性を選んだのだ。


 つまり、私は浮気をされたということで、浮気をされるような余裕を相手に与えていたという事である。


 そうだ。


 余裕なんてもたせてたまるものか。


 ぴたっとくっついて、浮気なんて絶対にさせない。その隙間をつくらせない。そして自分だけを愛してもらえるように努力をしよう。


 魔物だろうと何だろうと、浮気だけは絶対に許さないと、私は心の中に炎を燃やしたのであった。


 そして私は魔物の国へと嫁ぐことになったのだけれど、嫁いだ先にいた時期国王陛下であるユイン様が自分の好みドストライクの顔の猫目の美丈夫であったり、魔物の姿になると、もふもふの竜様に変化するなんて自分の理想そのものだったりするのはこれからのお話。


 そしてそんなユイン様に私が溺愛されて幸せになり、見事コンラッド様にざまぁ出来るなんて、この日の私は知る由もなかった。


 


読んでくださってありがとうございます!

短編であげて、結局続きが書きたくなって長編にしなおしました。

読んでもらえたら嬉しいです。

よろしくお願いします。(●´ω`●)

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[気になる点] ・騎士達が私の「ころ」を乱雑につかむとーーころ? ・私は馬車があらあら悪しくーーあらあら悪しく?荒々しく、ですか?
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