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短編大作選

夜光虫のあいまい

掲載日:2022/09/11

「虫みたいだね」

「ウザったいからさ」

「耳がうっとおしいよ」

「ちょっと静かにね」


それを、何回聞いたことか。

それを、何回言われたことか。

それから、口数が減った。

動作も、最小限になった。




朝から夕方は、ずっと部屋にこもった。

太陽の光は、焼けるように熱いから。


夜は毎日、散歩をすることにした。

まあまあ、人のいる街だ。

だけど、深い夜に不快は少ない。




道に迷った。

何千回、歩いてきたのに。

道の記憶があいまいだった。

よく行く場所は、少ないから。


その場所と自宅を繋ぐ、最短ルートしか知らなかった。

なのに、知らない道に入ってしまった。


キョロキョロを通り越して、クルクルとしていた。

完全に迷い人だ。


「どうしたんですか?」

「あっ、道に迷いました」


女性の声だった。

持っていたライトを、その人にあてた。

綺麗なお姉さんだった。


「廣田くんだよね?」

「はい、えっ? そうですけど」

「中学の時に、同じクラスだった中野だけど」

「ああっ」


覚えていない。

学校の思い出も、あの日以来、あいまいにしていた。

わざと、ぼやけさせていた。

紙に描いたパステルを、指で擦るみたいに。


「覚えてないか。私は廣田くんが、一気に元気がなくなって、学校に来なくなってから、ずっと心配してたんだけどね」

「あ、ありがとうございます」

「記憶から私も、消しちゃったんだね」

「すみません」

「私、告白したんだけどな。元気がなくなったすぐ後に」


ハテナが溢れた。

そのお姉さんが、さらに輝いて見えた。


「そんなわけは、ありません」

「今、空いてる? よかったら、話さない?」

「はい」


この記憶が、あいまいな記憶になることは、きっとないだろう。

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