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1話

 ベッドから落ちた衝撃で目を覚ました俺は、見慣れぬ天井を見上げていた。なんだかグラグラして気分が悪い。


 二日酔いかと思ったが、じきに揺れているのは地面の方だと気づいた。


 最近地震が多かったが、ベットから落ちるほど揺れたのは始めてだ。ここで決して俺の寝相が悪いから転落したのではないと明言しておく。


 揺れがなかなか収まらないのでしばらく天井を見上げていた。ホテルの天井に見慣れた頃、地面の揺れが止まった。


 俺は起き上がってスマホを探した。スマホは枕の下敷きになっていた。


 昨晩イイ夢を見ようとして卑猥な画像を表示した状態で枕の下に置いたのであった。酔った上での行動である。


 地震の情報を検索しようとしたがバッテリーが空であった。俺は舌打ちしてスマホを充電器に繋ぎ、とりあえずシャワーでも浴びることにした。


 シャワーを浴びながら、俺はホテル缶詰作戦の初日が全くの無駄に終わったことを悔いていた。


 大学を卒業して5年。俺は小説家になるという夢を捨てきれず、会社員として働きながら小説を書き続けていた。しかし、いつまでたっても新人賞に応募するに足る作品を産み出せずにいた。 


 そこで一念発起して長めの休暇をとり、ホテルに籠って応募作品を書くことにしたのであった。 


 しかし作戦初日、一人決起集会と称してホテルの部屋で酒を浴び気が大きくなった俺は、デリバリーのおねえさんを呼んだはいいがうまくいかず、結局拗ねて卑猥な画像を下敷きにして寝て終わるという始末であった。


 熱いシャワーを浴びながら己のような意志薄弱の徒が物書きとなるには、司馬遷のごとく自らのジュニアとお別れするぐらいの覚悟が必要ではないかと思い始めたころ、腹の虫が鳴った。胃の切除も必要かもしれない。


 腹の虫を物理的に黙らせるのはまたの機会にするとして、俺は朝食を買いにホテルをでた。


 俺は今回の作戦にあたり、あくまで目的は小説の執筆であって旅行ではないことを鑑み近所のホテル、すなわち三島駅南口をでてすぐのホテルに宿泊していた。


 だから毎日出勤するときと同じように駅のパン屋で朝食を買おうと思ったのだが、駅の方に向かって歩くうちに何かがおかしいことに気づいた。


 平日の朝だというのにサラリーマンの姿がほとんど見えない。三島市は都会ではないとはいえ、朝の駅周辺はそこそこ賑わうものだ。それが今日は閑散としている。しかも目当てのパン屋もシャッターが降りていた。


 明らかに何かがおかしいと感じつつも、酒が残っていてどうにも頭が回らない。さては今日は何かの祝日だったろうかと考えながら、俺は散歩がてら開いている喫茶店を探すことにした。


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