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「そういえばシエル、魔界に帰っちゃったけど、雪人はどうするの? あなた、シエルといっしょにこっちに来たんでしょ?」


「シエルが帰った? なんで……」


 思いもよらない言葉に、キルクは目をしばたたいた。


「捜し物が見つかったって言ってたけど?」


「見つかった?」


 リーズの魂が?

 シエルの捜し物といえば、それしかない。

 だが……と、キルクは眉宇をひそめる。

 もし本当に見つかったのだとしても、なぜそんなにすぐに魔界に戻ったのか。己に何も言わず。


「おい、シエルのやつ、他に何か言ってなかったか?」


「うーん。とくには……。あっ、シドのところにいるとか言ってたかな。訊かれたら、雪人に伝えろって」


「シドだって? なんでシエルがあいつのとこに?」


「そんなの私に訊かれても分かるわけないでしょ。ねえ、シエルはいったい何を見つけたの」


 キルクはやれやれと息をつき、天井を見上げた。

 何がどうなっているのかは分からなかったが、シドの名前が出てくるとは、かなり厄介事のにおいがした。


 シドは王であるシエルの側近という立場だったが、何を考えているのかまったく読めず、得体も知れないので、キルクにとってすすんで関わりたい相手ではなかった。

 おかしなことにならなければいいが……と、キルクは眉根を寄せる。


「ちょっと雪人、私の話、聞いてる?」


「ああ、聞いてるよ。シエルの捜し物の話だろ?」


 ソファの背もたれに片腕をかけ、天井を仰いだい状態で、キルクはちらりと視線だけを桜子に向けた。

 この際、話しておくのもいいかと、ふと思った。

 自分たちがどんな生き物か。

 安易に考えて深く関わらないほうがいいと、きちんと分からせておいたほうがいいかもしれない。


 桜子をそばに置いているのはキルク自身だったが、それすら魔族特有の残酷さがさせることなのだと理解させておいたほうがいいかもしれないと思った。

 彼女はもっと、恐れの感情を抱くべきだ。この先を生きていくためにも。


「おまえ、俺が前に言ったことを覚えてるか? シエルの妃だったリーズは死んだって」


「もちろん覚えてるわ」


 キルクは深くゆっくりと息をついた。

 すぐ横に置かれている桜子の手に、無意識に自分の手を重ねる。


「リーズはな、おまえと一緒だったんだよ」


 ただ、桜子と違い、メルクリーズは魔族だった。

 しかし、それだけだ。力はほとんど無いに等しかった。

 いつもうつむいていた赤銅色の髪をもつ娘の姿が、キルクの脳裏によみがえる。


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