89話 通称”ZERO隊”…この響き、超かっこいい!
【王国騎士団専用宿泊所近くの木の上・”奇跡を司る者”専用部隊零・フェノール(偽名・本名レオ)視点】
俺の所属は、天上界事務局”奇跡を司る者”専用部隊零。
通称”ZERO隊”と、呼ばれている。
この響き、超かっこいい!
密かに憧れていたこの”ZERO隊”に配属が決まった時は、嬉しくて、自慢したくてウズウズしていた。だが、極秘機関であるため、親や兄弟、妻や子であっても”ZERO隊”である事を知られてはいけない。バレたら即行クビだ。
肩書上は、”天上界事務局防犯対策課地域交流係主任フェノール・マイケル”(もちろん偽名)として、日々ミカエル様一行の極秘警護任務に当たっている。
ミカエル様及び、その執事や部下(ポンコツ護衛集団七つの光、他)への接触は原則として禁止されている。
+++
ミカエル・キング様が、王国騎士団の天使族マルクス様に保護され、サミュエル・ヒューゴが王国騎士団専用宿泊所に戻った事を確認した。
これから俺は、ペアを組んでいるもう一人の隊員に合流する。
今夜は、勇者ルーシーの滞在する宿”ホテルホーリーウッド”に部屋を確保し、今回の”ミッションリーダー”ベンゼン(偽名)さんと一緒にミカエル様の極秘警護に当たる。
一応、ミカエル様信者の兄弟に見えるよう、支給品である[I♡ミカエル]と刺繍を施したペアルックのTシャツを着用している。王国中の教会で販売している、天使界公認のミカエル様応援グッズだ。
今回、アクアラグーンの騒動を治めるべく動いた”ZERO隊”隊員は10名。
ホテルロイヤルラグーン内に2名、ホテルホーリーウッド内に2名、外警護に2名、宿場町巡回に2名、残り2名は、ホーリーウッド近くの宿に連絡要員として待機している。明日の状況次第でまた人員を増やすかどうか検討中だ。
騎士団の宿泊所からホーリーウッドへ戻ろうとすると、聞き覚えのある声が道の向うから聞こえ、とっさに身を潜めた。
この声は、オルトさん?
「お願いします。どうかお放し下さい! 決して、怪しものでは……!」
「うっ……グスッ……(嗚咽している)」
「怪しいよ!」
「どうか、お願いです。連絡だけでも」
「詳しい話は、騎士団の宿泊所で聞くから」
「宿泊所!? そんな……!?」
「覗き魔、最低!」「ルー、いつも窓開けて着替えてるから」「え、カーテンは閉めてたけど」「隙間から見えてるかもよ」「ヤダーっ」
女の子の声もする。
覗き?
「そんな……覗きなど」
「うっ……グスッ……ウェっ……ズッ……(嗚咽)」
泣いているのは、オルトさんとペアを組んでいる新人メタだ。何があったんだ?
「変態!」「気持ち悪い」
男が2人。女の子が3人……いや4人。
覗きに、変態!?
「違います! 誤解です」
「うっせぇな。お前らのせいで睡眠時間減るだろうが!」
ドスの効いた女の子の声が森に響いた。
恐る恐る、木陰から声のする方に視線を向けると、そこには、ホテルホーリーウッドの外警護を担当しているZERO隊員2人が、勇者ルーシーのイケメンの兄と、迷彩服の緑髪の双剣の騎士に、縄で縛られ連行されている最中だった。
その後には、青白く輝く”勇者の剣”を構えた王国の勇者ルーシーと、弓を持ったバンディ城のホムラ嬢、ルーシーの同級生の美女2名も弓を構え警戒しながら後に続いていた。
なに捕まってんだ!?
二人は支給品のTシャツがズタズタに切り裂かれ血で染まり、ガックリと項垂れ足もフラついている……既に満身創痍だ。
ZERO隊の精鋭二人だぞ!?
何があったんだ!?
特にオルトさんは新人の訓練指導もしている、熟練の隊員なのに……。
宿泊所に到着し、勇者ルーシーとホムラ嬢が中に入ってすぐに、サミュエル・ヒューゴと、小柄な少年が宿泊所から出てきた。
「ええっ!? なんで!?」
サミュエル・ヒューゴが、声を挙げた。
「ああっ……サム坊ちゃま……」(オルト)
「「「「「ええええっ!」」」」(他全員)
「お知り合いだったんですか!?」(勇者の兄)
「ええ、まあ。……何やってんですか、エドモンドさん」
「坊ちゃま……。これには事情が」
「女の子たちが”部屋の外に怪しい人がいる”って、見てみたら、双眼鏡でこちらを覗いていたので、その、事情を聴こうと3人で弓で威嚇したんですが、それでも逃げたので……追い込んで、ルーの防御壁で”バン”って挟んで動きを止めて、一人の肩の骨を外して、イムさんがもう一人を捕縛して、ようやく捕まえたんです。少し、てこずりました」
勇者の兄の説明に、サミュエル・ヒューゴが顔色を変えた。
「……っていうか、みんな怪我は?」
「大丈夫だ」(イム)
「ない」(レイ)
「ないわよ」(スカーレット)
「ないわ」(ロナ)
「ないです」(ルーシー)
「ない! で……”坊ちゃま”って……フッ」(ホムラ)
ホムラ嬢が吹きだすと、他の女の子たちも小さく吹き出した。
「フフフッ」「フフッ、サミュエル副隊長、お坊ちゃんだったんですか!?」「……見えない」「クッ……笑ったら失礼よ、フ、フフ」
サミュエル・ヒューゴは、女の子たちの嘲笑に顔色一つ変えず、オルト(偽名)の顔を見つめながら考え込んでいる。
「これには事情が……」(オルト)
「わかった。とりあえず、この二人はここで預かることにして……レイ、宿に戻ったらターナーに連絡を」(サミュエル)
「マルクスさんが、既に伝えていると思いますが」
「一応、再度、報告を頼む。イムは引き続き任務に当たってくれ」
「はいよ!」
「じゃあもう遅いので、サミュエルさん、あとお願いします」
勇者の兄が敬礼すると、女の子たちもそれに追従するようにビシッと敬礼した。
「おう、おやすみ。気をつけてな!」(サミュエル)
「寄り道すんなよ!」(小柄な少年は、口ぶりからして女の子たちの上官かな)
「はーい。おやすみなさーい」「おやすみ」「おやすみ、坊ちゃまー」
「うるせぇ、さっさと帰るんだ」「フフフっ、……サム坊ちゃま」「もっかい言ったら殺すぞー」「こわっ、おやすみなさーい」
女の子たちがサミュエル・ヒューゴと小柄な少年騎士に、手を振り、”おやすみ”の挨拶やいくつか言葉交わし、来た道を楽しそうに戻って行った。
……なんか、いいな。
+++
「じゃあ、これから尋問すっか!」
小柄な少年騎士が嬉しそうに笑った。
一瞬で、我に返った。
「ダメだ。スチュワート様に連絡が先だ。じゃあ、エドモンドさんと、そちらの方、お名前は?」
「グスッ……”メイスン”……うっ……です……」
メタが泣きながら名前を言った。恐らく本名だ!
ダメじゃないか、すぐ本名言っちゃ!?
「エドモンドさんと、メイスンさん。事情を伺いますので、中へどうぞ」
二人は、終始紳士的な対応をするサミュエル・ヒューゴと、小柄な少年騎士に連れられ、大人しく宿泊所の中へと入って行った。
これはマズいな……。
とにかく戻り、このミッションのリーダ”ベンゼンさん”に相談しないと!
+++
急がないといけないのに、道の先には勇者たち一行がいた。
ベンゼンさんのいる宿は、勇者一行と同じ宿。
連絡要員も、その先の一つ隣の宿。
森を通って行こうとしていたら、迷彩服の騎士が途中で森の中へ入って行くし、ホムラ嬢は焦る俺に気付き、さっきから後方を気にしはじめた!
マズイ。
木陰に身を潜め、勇者たちが去っていくのを待っていると。
「ふーん。君は何者?」
突然目の前に、さっき宿泊所にいた小柄な少年騎士が現れ、”カッ”と見開いた青い瞳で俺を見つめた。
!?ギンっ
少年の青い瞳が黒く染まり、そのまま目の前が暗くなった。
「幻術……しくっ…た……
ドサッ
+++++
【王国騎士団専用宿泊所近くの森・ハント副隊長視点】
レイたちが連れた来た”覗き犯”の仲間らしき人物の気配が、宿へ戻るルーシー達の方へ向かって行くのに気づき、追いかけた。
「深追いはするな」とサミュエルさんに言われていたが、こいつの動き……普通じゃない!
音もたてずに樹々に飛び移り、一定の距離を保ちルーシー達を尾行している。
俺も気を抜いていたら見失いそうになるほど動きが早い。
だが、振り返ったホムラに動揺したのか動きが止まった。
ホムラの事だ、こいつか俺の気配に気付いたんだろう。
で、幸い、こいつは俺に気付いていない。
不意を突き、サクッと幻術をかけた。
「どれどれ………よいしょっ。重いなー」
倒れた男をひっくり返し、身体検査をした。
身体つきは中肉中背、意外と筋肉質で、年齢は俺くらいかな……顔は普通。金髪を黒く染め、黒地に[I♡ミカエル]と刺繍された変なTシャツを着ている。
白い羽を背中に器用に折り畳み天使族であることを隠していて。……うわっ、体中に武器が仕込んである。速攻幻術かけて正解だった。
動きや武器から推測すると、どこかの”特殊部隊”か”隠密”。
……ここで殺るか?
「ハントさん! この人何なんですか?」
ビクッ!
ウィリアム……ついてきてたのか!?
「さあな。ウィル、手伝え!」
変なTシャツを脱がせ、武器を取り外しその上に置いていった。
うわ、パンツの中にもあった。やだな。
「こいつ、エリックさん(ミカエル様)の信者の振りして、ルーを狙ってたのかな?」
「かもな、……にしても、ダッセーTシャツだな」
「こんな危なそうな奴が……ルーを……」
いつもは可愛らしく笑うウィリアムが、険しい表情を見せた。
【王国騎士団専用宿泊所近くの森→王国騎士団専用宿泊所・ハント視点】
ギィィィ……
ウィリアムと一緒に、縛った男を宿泊所に運び入れ、ロビーのベンチに寝かせた。
消灯時間が過ぎ、照明が消えたロビーに人けはなく、談話室のドアの隙間から灯りが漏れていた。
コンコン
「サミュエルさん、戻りました」
「早かったな」
「って、縄解いちゃっていいんですか!?」
談話室には、さっきズタボロにされていた二人が、縄をほどかれ治癒を済ませた状態で、お茶を入れているサミュエルさんを前に、大人しく座っていた。
上半身裸で座るサミュエルさんの知り合いの金髪のおじさんは、優しそうな顔とは裏腹に、ムキムキの筋肉に無数の傷跡、羽は両方ともちぎれて途中で無くなっていた。
もう一人の方は、まだ若いのか、さっきの変なTシャツの奴のようなタイプの、中肉中背筋肉質。金髪の短髪で、顔は普通っていうか地味。泣いていたせいか頬が赤い。
「まず、お茶をどうぞ。あと何か着るもの……」
「サム坊ちゃん! いいんです。お気を使わないでください!」
「いや、ここ、夜は結構冷えるから。ウィル、支給品になんかないか?」
「探してみる」
ウィリアムが倉庫の方へ走って行った。
「(小声)サミュエルさん、で、こいつら何者?」
サミュエルさんの隣に座り、小声で尋ねた。
「天上界、って知ってるか?」
「は? 天使界じゃなくて?」
「その上の機関だ」
「そいつらがなんで? あ、ミカエル様か……」
「そうだ……」
上半身裸の二人が、申し訳なさそうに俺を見て頷いた。
「じゃあ、警護してるって言ってくれれば、放っといたのに……」
「あくまで極秘機関ですので、原則、誰からも気付かれぬよう動いていたつもりでしたが」
サミュエルさんの知り合いのおじさんが申し訳なさそうに答えた。
「……それはちょっと無理があると思うよ」(ハント)
「お恥ずかしい限りです。万が一、見つかったとしても、逃げ切れると考えておりました。……勇者様や、王国騎士団の皆様のお強さが予想以上で」
「う……ううっ……グスッ……すいません…………ズっ……う……」
若い方は、また何か思い出したのか泣きだし、手をクロスさせ二の腕を抱きしめるようにして、ガタガタ震え出した。相当、怖い思いをしたのだろう。
「あいつらは特にな……」
サミュエルさんがため息をついた。
「サミュエルさん、これでいいですか?」
開けっ放しのドアから、ウィリアムが訓練用のジャージの上着を持って入ってきた。
「ありがとな」
「で、この人誰なんですか?」
ウィリアムが、先ほどからサミュエルさんを「サム坊ちゃん」という金髪のおじさんを見つめた。
「……そうだな……知りたいか?」
「うん」
ジャージを渡された二人が袖を通すまで待って、サミュエルさんが仕方なく話し出した。
「俺の実家が、天使軍の訓練所で……小さい頃、俺の訓練相手をしてくれた、エドモンドさんだ」
「実家が訓練所! 訓練相手!」
ウィリアムの目がキラっと光った。
「エドモンドさん、こうして話をするのは、13年ぶりですか」
「はい……サム坊ちゃん。ご立派になられて……」
サミュエルさんを、愛おしむような優しい目で見つめた。
「その、親父から、エドモンドさんが天上界に引き抜かれたって聞いていたので、もしかしたら”ZERO隊”に選ばれたんじゃないかって俺、ずっと思ってたんです!」
サミュエルさんが子供のように瞳を輝かせて、エドモンドさんに詰め寄った。
”ぜろたい”?
「え、あっ! 坊ちゃん、ZERO隊じゃありません……その、天上界事務局! ZERO隊じゃ「わかってます!」
サミュエルさんが、慌てるエドモンドさんの肩を叩きニッと笑った。
絶対、こいつら”ぜろたい”だ!
「”ぜろたい”って?」
ウィリアムが首を傾げた。
「天上界の特殊部隊だ。ローマ字で”ZERO”って書くんだ」
「ZERO! で、ZERO隊! 特殊部隊! なんか、かっこいい!」
ウィリアムが目を輝かせ、二人を見つめた。
「だろっ! 小さい頃、俺も憧れて……エドモンドさん、夢が叶ったんですね」
「だから、天上界事務局、ZERO隊じゃ「わかってます!」
慌てるエドモンドさんの言葉を遮り、サミュエルさんが親指を立てニッと笑った。
「わかってない! サム坊ちゃん、俺は、天上界事務局で、ZERO隊じゃ「わかってます!」
こいつら絶対”ZERO隊”だろ。
ギィィィィ(ドアの開く音)
「エレーナちゃーーーーん、たっだいまぁぁぁぁ……」
「ジュードさん、宿泊所れす。降ろひまふよ」
夜の町から戻ってきた、とんでもなくご機嫌なジュード団長補佐と、ろれつの回らないブラッド隊長の声。
すっかり忘れてた!?
急いで、談話室から飛び出すと……。
「ヒック……おっふろにしまーーす。あと、エレーナちゃんに、……ちゅ……うって……グフ、グフフフ」
ジュードさんが上着を脱ぎ捨て、ベンチに寝かせていた、変なTシャツ男に抱きつき、べちょーっとキスした。
うわぁ。
「うぇっ……誰だこいつ 。えいっ(ベンチから落とした)……フ、ンフフフ♪」
その男を払い落とし、鼻歌を歌いながらベンチに寝転がり、そのまま眠ってしまった。
変なTシャツの男は、落とされた痛みで表情を歪ませている。まだ、幻術は解けていない。
「フェノールさん!?」
メイソンという”ZERO隊”の若いのが、そいつを見て驚きの声を挙げた。
「あ、ごめん。捕まえてきたの言ってなかった。ハハハ……ハ」
グッ……と、いきなりブラッドさんが俺の腕を掴み、顔を近づけた。
!?
「何が、あっだのれすかあぁ?」
丁寧な言葉遣いとは真逆の、物凄い形相で俺を睨んだ。
ゾクっ……!
2m近くはある身長とガッチリとした筋肉質の体格、汗ばんだ手からブラッドさんの異常な熱が腕に伝わり、鳥肌が立った。
「その……「ゔぁっ、聞こえねえぞ!」
そうだ、この人、第一部隊の隊長だった。強さもジュードさんと互角だと聞いたことがある。
ヤバい。
これ以上何かされたら、上官だけど、手、出しちゃいそうだ。
慌てて談話室から出てきたサミュエルさんが、俺とブラッド隊長の間に割って入った。
「ああっ、ちょっと、いろいろと……「ゔあぁ? なんだサミュエル、ハッキリと言え!」
普段は死んでいるみたいな目を爛々と輝かせ、もの凄い威圧感でサミュエルさんに迫った。
これ、ヤバくないか!?
「あー。不審者かと思って捕まえたら、「ゔあぁっ」ミカエル様の警護の方たちで「ゔあぁっ」
”ゔあぁっ”って、返事!?
あれは返事なの!?
……怖すぎる。
「いま、事情を聴いたうえで「ゔあぁっ」スチュワート様をお待ちしているところ「ゔあぁ!?……スチュワートさまだぁぁぁぁぁ!?」
ギィィィィ(ドアの開く音)
「外まで丸聞こえですよ。ブラッド様」
呆れかえった表情のスチュワート様が、ターナーと、もう一人、長身短髪黒髪メガネで、白地に[I♡ミカエル]と刺繍されたTシャツを着た男と現れた。
あいつの仲間だ!?
「!!! っ……ス、チュワー…………」
スチュワート様を見て驚いたのか、サミュエルさんに抱きつき、そのまま白目を剥き、失神してしまった。
「大丈夫ですか」
俺が声を掛けると「この人、たまにこうなるんだ」と、サミュエルさんが慣れた手つきでブラッドさんをよいしょと担ぎ、大浴場の方のベンチに寝かせた。
「可愛そうに。ジュードさんに、よっぽど飲まされたんだろ。明日、大丈夫かな」
サミュエルさんが優しく笑った。
俺は、この人のこういう優しさが嫌いだ。
いくら上官でも、飲んだくれて絡んでくる奴なんて、ぶん殴ってほっとけばいいのに、気ぃ遣って、憐れんで、心配までして……ミカエル様にだってそうだ、あれこれ世話焼いて、懐かれて……そして、この騒ぎだ。
「ハント、怖かったろ。大丈夫か?」
俺の顔を覗きこみ、優しい水色の瞳で見つめた。
「……はい」
腹の中のモヤモヤする気持ちを抑え、目を逸らした。
サミュエルさんは、優しすぎる。
その優しさが、仇になったりするかもしれないのに……。
+++
スチュワート様が、俺たちを談話室に集め、ゆっくりと話し始めた。
「天上界事務局防犯対策課の皆さま。そして、サミュエル様、ハント様、ウィリアム様。今回の件につきまして、天上界事務局長殿と協議致しました結果。どうかこの件は、外部には絶対に漏らさぬようにと、天上界事務局長殿から要請がございました。アレキサンドライト王国、天使界並びに天上界、共に、今後もより良い友好関係を保てるよう、どうか皆さま、ご協力お願いいたします。そして、天上界事務局防犯対策課の皆さま、アンフェール城騎士によります、勇者ルーシーの護衛のためとはいえ過剰な対応をしてしまいました事、重ねて深くお詫び申し上げます」
スチュワート様がゆっくりとお辞儀をし、顔を下げたまま固まっていた。その無言の圧力に、俺たちもつられて一緒に頭を下げた。
「いえ、そ、そんな!? 護衛とはいえ、許可も取らずに”勇者様”の宿の敷地に入り込んだのは私どもです。大変、申し訳ございませんでした。お前ら、謝れ!」
「「「申し訳ございませんでした!」」」(エドモンド・ベンゼン(偽名)・メイソン)
エドモンドさんが怒鳴り、その場にいた”ZERO隊”全員が頭を下げた。
どうやら、この”ZERO隊”で一番偉いのが、このエドモンドさんだ。
そんな人が、”覗き疑い”で勇者に捕まったなんて、面白いけど、天上界からしてみれば不都合すぎるか……。
+++
ようやく幻術から目覚めた、フェノール(偽名)という”ZERO隊”を連れて、天上界事務局一行は、それぞれの宿や持ち場に戻って行った。
スチュワート様は、今回、任務に就いている天上界事務局防犯対策課(ZERO隊)に、目印として王国の紋章入りのブレスレットを人数分渡し、任務が終わったら返却す旨を伝えていた。このブレスレット、防御系の魔力が込められていて、攻撃を受けると、赤く輝く王国の紋章が飛び出る造りになっている、敵と味方の区別がつくようになっている優れモノ。弱いがバリア機能もあり、遠くから矢で狙われた時など、若干だが軌道を逸らしてくれるらしい。
そして、ルーシー達のいるホテルホーリーウッドには、既に箝口令を布いたと、ターナーから聞かされた。
捕まえた奴らが、天上界事務局から派遣されたミカエル様の隠密の護衛と聞かされ、全員青ざめていたらしい。
あの時、ウィリアムが一緒じゃなかったら、俺は躊躇なくあの場で変なTシャツ男の息の根を止めていた。
……危なかった。
正直、あんな奴らがいるとは知らなかった。
天使界、いや天上界の”特殊部隊”。
「”ZERO隊”か……」
それにしても、この響き、超かっこいい。
お付き合い頂きありがとうございますm(__)m




