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70話 勇者パーティ あっちじゃない、そっちだ!

【ノール帝国バレーヌ城・ルーシー視点】


 国王べリアスとともに私達5人は移動用魔法陣でバンディ城から、北の海洋国家ノール帝国首都バレーヌの王宮へ到着した。ノール帝国は遠方のため、移動用魔法陣では必要最小限の限られた人数しか行くことが出来ず、近衛騎士のクリスさんとジンさん、そしてノエルさんはバンディ城で待機することとなった。


 挨拶品の豪華な装飾のケースを持ったスチュワート様と、ほぼ手ぶらの他4名。計5名で魔法陣に吸い込まれながら、これはさながら勇者パーティのようだと想像し頬が緩んだ。


 

 魔法使い:国王べリアス

 賢者:宰相兼執事スチュワート

 戦士:近衛騎士オスカー

 魔法戦士:勇者ルーシー

 僧侶:騎士サミュエル


 ざっと、こんな感じかな。



 バレーヌ王宮中庭に無事到着した私達は、アレクセイ王子とカール首席補佐官に案内され、”謁見の間”へ通された。


 王宮の建物は、白と鮮やかなオレンジ色を基調とし、クメール建築に見られるような高い尖塔を中心に三角の大きな屋根がいくつも重なり組み合わさった造りをしている。雰囲気は、転生前の”南アジア諸国”のよう。広大な王宮の中庭には、南国特有の樹木や美しい花が咲き乱れ、そこかしこにある海の生物を模った噴水からは水が飛び出し小さな虹を作っていた。


 ”謁見の間”は、白を基調とした天上が高く、縦に長ーい部屋で、中央に金色の縁取りをした赤い絨毯が敷かれていた。アレクサンドル大王が待つ、20m程先まで敷かれた絨毯の両サイドには、白の隊服に長い銀色の三又の槍を持った”ノール帝国騎士団”がずらりと並び私達を出迎えてくれた。騎士たちは皆大柄で、アレクセイ王子のようなブルーの髪色の人魚族のような種族も居れば、また違う緑や黄色の肌をした種族、私と同じ赤い髪色の騎士もいて、色鮮やかな色彩あふれる騎士たちの姿に目を奪われた。


 長い白髪に白い髭、金色の瞳。水色の大柄な体に、深紅の生地に金色の糸の刺繍を施した豪華なマントを羽織ったノール帝国アレクサンドル・ノール大王が、黄金で出来た杖を片手に私達を一瞥し柔らかく微笑んだ。

 

 +++


 軍事協定調印式は滞りなく終了した。


 私達は出発まで”謁見の間”の隣の”控の間”へ通された。


 ノール帝国滞在時間、約2時間。

 ノール帝国で行った場所が、”王宮中庭”と”謁見の間””控の間”だけって寂し過ぎない!?


 乾杯の祝杯は、私だけマンゴージュースだったし(美味しかったけど)。あまりガッツくなって兄に注意されていたから、軽食だって生ハムが乗ったフルーツ1個だけで我慢して……ノールの名産品とか、美味しいコーヒーとか、デザートとか楽しみだったのに。



 他国を訪問するのにやたら身軽だったのが気にはなっていたけど、こういう事だったとは……。



 帰り際、中庭に面した控の間で、アレクサンドル大王と陛下がなにやら二人で会話を交わしている間、私は中庭の綺麗な花で溢れる風景を目に焼き付けながら、ボヤいてしまった。


「滞在、短っ……」


 それが聞こえてしまっていたのか、スチュワート様が申し訳なさそうな表情で小さく頭を下げた。


「大変、申し訳ございません。お母上様の祖国をもっとご覧になりたいお気持ちは重々承知の上でしたが、……すぐに戻り、軍事協定の旨を南の海の防衛にあたっているイーサン騎士団長に報告し、ノール帝国海洋騎士団との連携協議を実施し、軍にかかる予算の配分など検討しないと……ですので、どうか」

 

「そんなつもりは……スチュワート様、お気になさらないで下さい!」


 コーヒーとか、名産品とか考えていただけなのに、”母の祖国”を楽しみにしているとまで考えていてくださっていたなんて、なんて出来た宰相兼執事なのかと、逆に私の方が申し訳なさでいっぱいになった。



「ルーシー、お前の母はノール出身なのか?」


 アレクセイ王子が話しかけてきた。


「はい、そうみたいです」


「人魚族なのか?」


「はい」


「やっぱりそうか! そうじゃないかと思ったんだ!」


 アレクセイ王子が嬉しそうに叫んだ。


「なんで?」


「赤い髪に深い青い瞳。東のドファン領の人魚族の女の子そのままだから」


「ドファン領?」


「うん、この前の戦争でだいぶ人魚族の女の子は減ったけど、美しい子が多いって有名なんだ」


「……でも、アレクセイ王子のような、足に鱗とかヒレとか出来た事がなくって。母が”人魚族”だっていう実感が湧かないというか。……私、お父さん似なのかな」


 それを聞いたアレクセイ王子が一瞬目を大きく見開いた。


「え!? ……フッ、ハハハっ! 大丈夫だ。もう少し大人になったらできるはずだ」


 輝くような笑顔で言った。


「大人に?」


「人魚族はみなそうだ。だから心配するな」


「?」


「そうか、ルーシーは人魚族なのか……」



 アレクセイ王子が嬉しそうにそう呟きながら私の手を取り跪き、手の甲にキスをし、金色の瞳で私を見上げた。息を飲むほどに美しく輝く金色の瞳に見つめられ、顔が熱くなるのを感じた。


 

「あれからずっと考えていたんだ。君が妖精王の王子との婚約を解消し…………私の妻になってもらえたらと……」


「え!?」


 あまりにも急な告白に、驚き手を引っ込めると。アレクセイ王子は慌てて立ち上がり、兄さんの方を向いた。



「そ……そうなれば、オスカーが私の兄となるからな!」



 アレクセイ王子が、白い歯を見せ、ハハハハハ! と笑った。

 兄さん狙い!?


「ルーシーも、オスカーも私の大事な騎士だ。渡さぬ!」


 アレクサンドル大王と、話をしていた筈のべリアスが顔をこちらに向けて叫んだ。

 それを見たアレクサンドル国王が嬉しそうに大きな声で笑った。


「ハッハッハッハッハッ! アレクセイ、照れとるんじゃない。戻って来るなり、勇者ルーシーちゃんの話ばかりしておったくせに……勇者ルーシー、妖精王の王子と上手くいかぬ時は、いつでもこの国に来るがよい。待っておるぞ!」


 アレクサンドル大王が目を細め”にっ”と笑った。


「いや、その、じいちゃん……」




 今朝、べリアス(陛下)からの”愛しているから愛されたい”告白が霞んでしまうほどの、アレクセイ王子からの熱烈なプロポーズに……これは”モテ期”では? という言葉がよぎったのもつかの間。アレクセイ王子は、兄に近づき部屋の隅に連れて行き、なにやらこそこそと話し出した。不意に驚いた顔で兄は私をチラっと見つめたが、また視線を戻した。そして、さらにアレクセイ王子は顔を必要以上に兄に近づけた。そして、困惑し目を逸らした兄を見つめ、瞳を輝かせ()()()と笑った。


 私は、自分の勘違いに気付いた。これは”モテ期”じゃない!

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 今の顔といい、バンディ城で兄を見つめていたあの表情、間違いない、アレクセイ王子は()()()だ!


 

「(小声)サミュエル副隊長、どう思います?」


 私のすぐ後ろに立っていたサミュエル副隊長に聞いてみた。


「え? さっきのプロポーズか?」


「(小声)違いますよ。兄と王子ですよ。なんかくっつき過ぎじゃ……」


「(小声)フッ、デキてるかもな」


 吹き出したサミュエル副隊長を睨みつけた。


「(小声)笑い事じゃないです! 兄さんを守らないと」


「(小声)フフフッ、なにから?」



 そうこうしているうちにアレクセイ王子と話終えた兄は、握りしめた左手の拳の指を口元に当て、何か考え事をしながら戻ってきた。


「どうした?」サミュエル副隊長が声を掛けると、兄は少し考え「……いや、何でもない」と答え私を見つめた。


 なんだろう。


 一体、アレクセイ王子に何を言われたのだろう。

 何かを訴えかけるように私を見つめる兄の瞳に、不安を覚えた。



+++++


【ノール帝国・アレクセイ視点】



「カール、どこがいけなかったんだ……」



 アレクサンドライト王国国王一行を見送った後、俺の首席補佐官カールにそれとなく尋ねてみた。


「”どこ”と申されますと……?」


 カールは目を光らせ険しい表情になった。


「さっきの、プロポーズだ!」


 フッ……とカールは吹き出し「少々、焦り過ぎましたな」と、俺の目を見つめ表情を緩めた。


「ああ、それは仕方がない。ルーシーが”人魚族”だと聞いて居ても立っても居られなかった。手にキスをした時の俺を見つめるあの表情、()()()()()と思ったんだが……なあカール。ルーシーは何故、手を引っ込めた?」


「ルーシー様と王子は、年齢も離れております。一昨日、会ったばかりの相手からの急な求婚に戸惑うのは当然と、私は判断いたしますが」


「でも、俺とルーシーはたいぶ打ち解けていたではないか」


「ですが、焦りは禁物です。まずは確固たる”信頼関係”を築き上げるのが、定石かと……」


「信頼関係?」


「はい。ルーシー様はまだ15歳。かなり歳の離れた王子を”恋愛対象”と考えていらっしゃらない可能性もございます」


「はぁ? なにそれ、傷つく……」


「それが現実でございます。まずは”信頼”され、”仲良くなる”ことを目標になさってみては如何かと」


()()って言われても、初見、怖い目で睨んじゃったし。ダメなところも、もう見られているし……ああっ……カール、なんで止めてくれなかったんだ!」


「止めるも何も、まさかそこで求婚なさるとは考えてもおりませんでしたから!」


 険しい表情で怒鳴られ、俺は自分の短絡的な行動を悔やんだ。


「ですが、勝機もございます。これから軍事協定により、アレクサンドライト王国へ王子が国王代理として赴く機会も多くなると思われます。焦らずとも、勇者ルーシー様にお会いする機会もこれから増え、共に戦う同盟国の王子として、信頼関係を築き上げるチャンスと思われます」


「共に戦う……そうだな! そこでルーシーと親しくなれば私の事を……」


「可能性は大かと」


「それにあの婚約は絶対嘘だ! オスカーの目がそう言っていた」


「それは、私も同感です。恐らく国王べリアスは、後ろ盾のない勇者ルーシー様を守るため、妖精王様のご子息との”形ばかり”の婚約を計略したのではないかと……」


 カールの解釈を聞き、やっと点と線が繋がった。


「あの王は、勇者にベタ惚れしているからな。相変わらず悪魔の王がすることは、分けが分らぬ!」


「さようでございます」


「よし! 早速、アレクサンドライト王国、南方の海の最前線へ向かう準備を」


「はッ!」



お付き合い頂きありがとうございますm(__)m


※2021/5/11 少し読みづらいところ直してみました。

※2021/11/2 訂正しました。

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