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38話 ジュード団長補佐の事で頭がいっぱい!

【北の神殿・ルーシー視点】

 ※王暦1082年5月5日。


 夕食後。

 マルクス副隊長とレイ兄さんに護衛されながら、私たちは北の神殿へ向かっていた。

 私は勇者の剣(シャルル)の修行。ロナは、巫女見習実習。ホムラとスカーレット先輩は、神殿裏の森で魔獣討伐。


 私はロナに、ジュード団長補佐の話をした。


「……だからいまジュード団長補佐のことで頭がいっぱいなんだ」


「ええっ! 今度はジュード団長補佐!? あの黒い眼帯の……怖そうな人よね」


「うん」


「ルーって、年上好きよね」


「好きかどうかじゃなく……どうすれば勝てるのか。考えてるの」


「手合わせの事!?」


「そう、怖いし、強いし、速いし、容赦ない!」


「大丈夫なの?」


「悔しい! 悔しくて悔しくて何回も、団長補佐との手合わせの立ち回りを頭の中で考えてるけど、勝てない!」


 私の前を歩いているマルクス副隊長が、こちらを振り向きフッと笑った。


「あの人強すぎて、今まで手合わせした人、何人か半殺しにされたらしいよ」


「 え?」


 半殺しって!? そんな物騒な!?


「大丈夫、サミュエルさんがいるから大怪我する前に絶対止めるだろうし。あの人の”癒しの光”は特別だからね」(マルクス)


「そこじゃなくて、そんなに誰にでも容赦無いんですか?」


 青ざめる私に追い討ちをかけるように、マルクス副隊長はニッコリしながらこう続けた。


「そうだね。中途半端な気持ちで挑む相手ではないと思うよ」


 

 木刀を構え立ちはだかるジュード団長補佐を想像しただけで、夕食はそんなに食べてないのに胃がもたれそうになった。


「明日、気が重い」


「ルー、頑張って」


 ロナが私の背を叩いた。


「うん」


 +

 +

 +


 今夜も、私は、勇者の剣(シャルル)で防御壁を築く訓練をする。

 前回、勇者の剣(シャルル)に、壁に色を付けると分かりやすいよと言われてやってみたところ、これがなかなか面白い!


 通常の強度の壁を緑。光の壁を青。好みで赤やピンク色にしたらどうなるのか、いまからワクワクしている。単なる平面の防御壁ではなく、城や塔、城壁のシルエットにしたり、立体にも挑戦したい。



 私の後ろを歩くホムラとスカーレット先輩は、宿から借りてきたリヤカーを一緒に引きながらレイ兄さんから、今夜の討伐対象魔獣について説明を受けている。

 どうやら今夜は、キラーホーンディアという鹿を狩る予定らしい。特徴や急所、攻撃行動などレイ兄さんが説明するのを、二人は喧嘩することなく真剣に聞いていた。


 この討伐訓練が始まってから、スカーレット先輩は私に挨拶を返してくれるようになった。

 睨まれることもなく逆に、何か言いたそうに見つめてくる。なのに、声をかけるとハッした顔をして「なんでもないわ」と逃げられる。


 なんだろう、無視されるもイヤだけどこれはこれで気になる。



 +++++

 翌日

【アクアラグーン訓練場・ルーシー視点】

 ※王暦1082年5月6日。


 憂鬱な気持ちで訓練場へ行くと。

 朝礼で、なんと”ジュード団長補佐は二日酔いで休む”ということをブラッド隊長から伝えられた。

 どうやら昨晩、アスモデウス殿下と飲み過ぎたらしい。


 ブラッド隊長も付き合わされたのだろうか、目が充血していて顔色が悪くすれ違った際にお酒の匂いがした。


 やったーーー!


 緊張が一気にほぐれ、その日の午前中の訓練はハント副隊長の基礎訓練と、陣取り合戦。個人技特訓として、久しぶりにレイ兄さんと剣で手合わせをした。


 本当は、小柄で接近戦で攻めてきそうなハント副隊長と手合わせをしてみたかったが、体術の指導に行ってしまい。ブラッド隊長は、酔いがまだ抜けないのか、具合悪そうに木陰で横になっている。じゃあ、サミュエル副隊長! と見ると、ものすごく嫌そうな顔をされ断られた。


 結局、残ったレイ兄さんと向かい合った。

 兄妹対決と騒がれたが、レイ兄さんは向かっていく私を、ヒョイヒョイかわしなかなか打ってこない。


「ルーに怪我させたくないからね」


 涼しい顔で言った。

 こっちは真面目に打ち込んでるのに、木刀にすら一発も当たらない! どういう事!? 

 終いには木刀無しで、”木刀vs素手”でやろうと言われた。それに挑むも、ヒラヒラかわされた挙句、がっつり手首を掴まれ負けてしまった。


 悔しい。


 ジュード団長補佐とは全然戦い方が違うタイプだけど、これはこれで厄介。

 というか、この戦い方どこかで……


「ルー、見習になる()()()()強かったと思うけど。どうしてスタイルを変えたの?」


 レイ兄さんが不思議そうな顔で言った。


 騎士見習になる前は、死の恐怖が常にあった。

 力のない私は、相手の剣を受け流したりかわしながら戦っていた。むやみに距離を詰めると危険だという事も、力で押し込むような剣術じゃ、男の人には到底かなわないことも、分かっていたのに……


 騎士見習になってからは、以前より腕力も体力も自信も付いたし、死の危険もないのでとにかく思い切り戦ってた。素早く間合いを詰めて斬り込んだり、斬撃を跳ね返しながら一撃を加えたり、かっこいい派手な攻撃ばかりして……



「兄さん、もう一回。今度は兄さんがかかってきて、木刀で」


「何か分かった?」


「うん、なんとなく」


「じゃあ、いくよ」


 木刀を手にしたレイ兄さんが一気に間合いを詰め、私に斬りかかってきた。

 ヒュッ……さすが副隊長クラス。木刀が普通の金属の刃物のように見えた。


 それを右側へヒョイとかわし、体勢を低くし木刀を地面スレスレにレイ兄さんの脚を狙う。それをあっさりかわされ、打ち込まれる打撃を木刀で左へ受けながし、直後、真横からくる追撃を、バク転で回避。更にバク転をして距離を取り、レイ兄さんと向き合った。



「忘れてないみたいだね」


「ハァ…ハァ……うん、やっぱりレイ兄さんの剣は凄いや。キレッキレだから除けるのに神経使う」


「いいかいルー、まず自分の身を守るのが前程だ。能力も何も分らない相手に、ただ突っ込んでいくなんて言語道断。相手をちゃんと見極め、それから挑むんだ」


「はい、兄さん」


「ルー……」


 レイ兄さんは構えていた剣を下し、私に近づいてきた、ムニュムニュ? と思いとっさに距離を取ると、フフフっと微笑み静かな声で語りかけた。


「ルー、聞いて。戦場に行けば、敵は全員ルーを殺す気で来る。騎士になるのなら、身を守りながら戦う事をもっと学んでほしい。だから不本意ではあるけど、ジュード団長補佐のような女の子でも容赦しない相手との手合わせは、ルーにとっては貴重だと思う」


「うん」

「ルーが怪我をするのは許せないけど、でも近頃のルーの戦い方があまりにも危なかったから……」

「ごめんなさい」


 それからレイ兄さんと、剣を避けながら戦う訓練を何度か行い、忘れていた感覚を取り戻していった。なんだかジュード団長補佐に勝てそうな気がしてきた。


 今度こそジュード団長補佐から、絶対1本取ってやる!


 兄妹対決は、お互い避けに避けまくり結局、時間になり、微笑むレイ兄さんに木刀を素手で奪われあっさり終わった。

 レイ兄さんに軽くあしらわれているようじゃ、私がジュード団長補佐に勝つなんて絶対ムリなんじゃないかと軽く絶望した。


 +++++


 昼食後、アクアラグーンの訓練場の足湯へ集合すると、ブラッド隊長の姿は無くサミュエル副隊長がニコニコしながら連絡文を読み上げた。


「ブラッド隊長より連絡だ。午後の訓練は、エスタ様の魔力強化訓練で終了し解散。明日あさっては()()とする。屋外や町へ出る場合は、それぞれ、王国の未来の騎士としてふさわしい振る舞いをするよう心掛ける事。以上だ!」


「よっしゃー!」

「やったー!」


 歓声が挙がった。


「お前ら浮かれてんじゃねぇ。少しでも何かやらかしたら、()()()()強制送還だ!」


 ハント副隊長が(言ってる内容とは真逆の)”無邪気な子供のような顔”で、楽しそうに笑った。


「ハント拷問はダメだ。お前たちも慣れない訓練で大変だったろう、ゆっくり休め。俺からは以上だ」


 その後、サミュエル副隊長は、ホムラにアスモデウス殿下からの伝言を伝えていた。

 訓練後。ホムラはアスモデウス殿下と一緒に、バンディ城へ戻るらしい。



 足湯に浸かりながら、ホムラに”実家がお城”ってどんな感じか聞いてみたら、「広くて落ち着かない」と笑っていた。

 そういえばいつもクローゼットの中でホムラは眠っている。実家でもそうなのだろうか?


「ルーとゆっくり話がしたかったのに……」

「私も、いろいろホムラに相談したいこともあったから残念」


「え……!?」


 ホムラの隣で話を聞いていたスカーレット先輩が小さく声を上げた。


「あ、そのっ……何でもないわ」


 スカーレット先輩は顔を赤くして横を向き、”やっぱり……でも、……”なにかブツブツ言っている。


 私、何かしたのかな?


 そのスカーレット先輩の事も相談したかったのに、ホムラが実家に行ってしまうなんて!

 ああ、サミュエル副隊長の事も話たいし……

 あの二人(スカーレット先輩やサミュエル副隊長)のいるところでする話題じゃないし、とにかく当たり障りのない話題を考えた。


「バンディ城って何部屋くらいあるの?」


 ホムラは、私の質問に目を丸くした。


「分からない……でも、地下牢の数は30部屋」


「地下牢数えてるの?」


「うん、遊び場だったから。囚人ごっこや、鍵の早解除()けのゲームしたり、長い廊下で弓の的当てとか」


「すごいね。家は二部屋で、台所とトイレとお風呂が外っていう、毎日キャンプしてるような家だから、ホムラが羨ましいよ」


「キャンプ!? だからあの兄さんたちも、ルーも、あんなに逞しいんだ」


「うん……」



 ホムラの肩越しに、『ん? ……マジで!?』という表情をしたスカーレット先輩と目が合った。だが、すぐに気まずそうに目を逸らした。不憫がられているに違いない。


 だろうね……ここでの生活を考えたら、山暮らしなんてとんでもなくハード。

 川の近くに住んでいたから大雨で家が何度か流されたし、水道も電気もないから夜は真っ暗で、屋根が無いときは、家族みんなで星空を見上げた。きれいだったな。


「帰ってきたら色々教えて!」


「うん、お菓子も持ってくるから」


「どんなお菓子?」


「フワフワして、中にクリームが入ってるの」


「シュークリーム?」


「……なんだろう、よくアスモが買ってきてくれるから」


「”アスモ”って、いいな~ホムラ。殿下優しいもんね。ジュード団長補佐とはえらい違い」


「うん、でもルーにはいるじゃん優しい兄さん達が」


「そうだね~。ちょっと厳しいときもあるけどね」


 ホムラとの足湯タイムはあっという間に終わり訓練場へ戻ると、アスモデウス殿下とバンディ城の騎士たちがホムラを待っていた。


 アスモデウス殿下が訓練場に巨大な魔法陣を展開し、ホムラは北の城『バンディ城』へ帰って行った。


お付き合いいただきありがとうございます!

ブクマ★いただけましたら励みになります! 応援よろしくお願いしますm(__)m



※2021/10/19 誤字脱字訂正しました。

 2023/1/20 気になる箇所訂正しました。

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