36話 戦慄の黒い眼帯と、勘違いが招く惨劇!
【アクアラグーン西・訓練場】
※王暦1082年5月5日。
ジュード騎士団長補佐が、合宿へ合流した。
ジュード騎士団長補佐は、悪魔族。
小柄で黒いウェーブがかった長い髪を一つにまとめ、傷だらけの顔に黒い眼帯が特徴だ。悪魔族最強と噂されている。そのジュード団長補佐の魔力は、威圧的で重く鋭い感じがした。
アーサー騎士団長補佐は、ジュード騎士団長補佐を、「小柄で、接近戦で攻めてくるタイプだから勉強になると思うよ」と仰っていた。
この人が接近戦で攻めてくるの!?
もう、吐きそう。
戦う前からこれじゃあ、もう負けてると同じじゃない……
「ほら!そこ! もっと腰を落とせ」
ブラッド隊長が、アイザックに激を飛ばす。
あれからアイザックとは目も合わせていないし、挨拶もしていないし、口もきいていない。
お互い様だから仕方ないか、と私は割り切っているが……それから、日に日にアイザックはやつれ、元気が無くなっているように見えた。見習たちの中でも孤立し、同族の友人もアイザックを避けている感じがする。
なんだか、気持ち悪い。
”私もイヤです”
言ってしまった言葉は、戻ってこない。
でも、私がいまここでアイザックに、なんて声を掛ければいいのかもわからない。
拒絶されることは目に見えているし、アイザックだってそれを望んでなんかいないはず。
ふらつきながらも真剣に訓練に取り組むアイザックを見つめた。
ブラッド隊長も、気を使って私とアイザックを接触させないよう配慮してくれている。
でも本当に、このままでいいのだろうか?
「ルーシー、前へ来なさい」
「はい」
ブラッド隊長に呼ばれ、ジュード騎士団長補佐の前へ立った。
そうだった。ジュード団長補佐とこれから手合わせをするんだった。
深呼吸をし、気を引き締めた。
「勇者ルーシー、アーサーから聞いている、遠慮なくいくぞ」
「はい、よろしくお願いします!」
「魔力抜きで、武人として戦おう」
ニヤリ、と口だけが笑った。
ゾク……背筋に悪寒が走る。
タッ……
一気に間合いを詰めようと、体勢を低めに飛び出すと、
ザッ!
ジュード騎士団長補佐が足を踏み出した。土埃が上がり、ブンっと真横に斬りつけてきた。
ガンっ!!!
両手で木刀を受け止め抑えるも、力が強すぎて抑えきれず吹っ飛ばされる。
ザザザアッ、ドンっ
尻もちをついたがピョンと立ち上がり、反撃しようと木刀を構えると、すぐさま足元を狙った鋭い斬撃が飛んでくるのが見えた。それを飛び上がりよけようとすると、木刀は軌道をかえ、凄い速さで足をはたいた。
ベシッ!
地面に叩きつけられた。
「痛っーー」
痛いし速いし怖い……
「立て!」
ドスの効いた声が響く。
「はい!」
痛い!
打った肘がビリビリする。顎もぶつけた。脇腹も痛い。口に砂が入ってジャリジャリする!
「もっと集中しろ!」
怖い……泣きたい。
それに、なんでこんなに強いの?
「はい、お願いします!」
今度も同じように、打ち返しながら間合いを詰め、そこから激しい打ち合いになった。
カンカンカンカンカンカン!
っつ!
一打一打の打撃の重さに耐え兼ね、木刀が手から落ちた。
カラン
剣を避けながら木刀を取ろうと、ヘッドスライディングすると。
「あまい!」
振り降ろされた木刀をかわせず、左肩に痛みが走った。
「くっ!」
痛いし! 容赦ない。
「さっさと立て!」
「ルー!……」「レイ、我慢しろ」「でも……ルー」
心配そうなレイ兄さんの声が聞こえたが、ブラッド隊長に制止させられている。
気が付くと周囲は静寂に包まれ、この場にいる騎士見習全員が私たちの手合わせを固唾を飲んで見守っていた。
木刀を拾い、ゆっくりと立ち上がり構えた。
悔しい。
ザッ!
また間合いを詰めると、今度は足元を真っ直ぐに狙ってきた。すかさずジャンプでかわそうとし、不意に思いついた。
”正面から斜め下方に入ってくる木刀をジャンプし足を乗せ押さえつけ、その隙に一本とる”
シュ!
正面斜め下方から入ってきた木刀をジャンプし、両足で捉えた(木刀の上に乗った)。
ズッ……やった!
木刀を押さえつけながら、瞬時に身体をひねり団長補佐に斬りかかった。
ジュード騎士団長補佐は、ギョッとした表情で私を睨みつけニヤリと笑い、身を逸らし回避。
え!?
両足で押さえつけていた、木刀を凄い力で横にブンっと振った。
ズテー――ン! ズザザザザザ……。
真横に吹っ飛ばされ、うつぶせに倒れ込み砂まみれになった。
くっーーー惜しい!!!!
「ハハハハハ、ようやく”本気”になってくれたようだな」
”本気”って、初めっから全力だよ!
起き上がる気力もなくうつぶせに倒れながら拳を握りしめ、砂まみれの状態で心の中で叫んだ。
ああーーー悔しい。
力じゃ敵わない、じゃあ……今度は……
「大丈夫か?」
起きない私を心配したサミュエル副隊長が駆け付け、声をかけてくれた。
ガバッと顔を上げ、「平気です!」と叫んだ。
絶対、1本取ってやる!
直ぐに立ち上がろうとすると、サミュエル副隊長がスっと肩に手を当てた。
「ダメ、鼻血出てる。手当しないと……」
優しく言ったあと、私の顔を覗きこみニッと微笑んだ。
”鼻血”
顔の下の地面を見ると、赤い血の跡がいくつかあり、更に私の鼻からポタポタと赤い雫が落ちた。
ティッシュとか持ってないのに。
「はい、これ使って」
サミュエル副隊長が、白いタオルを差し出した。
「でも、汚れてしまいますよ」
「いいから」
モフッ!
タオルを顔に押し付けた。
「ルーシーもういいぞ、医務室で手当してこい」
ジュード騎士団長補佐がニヤりと笑った。
「……はい、ありがとうございました!」
一礼して、その場を後にした。
結局、一本も取れなかった。
悔しい。悔しすぎる。
サミュエル副隊長と医務室……か、と心配していると、
「ルー!」
すぐにレイ兄さんが駆けつけた。
「レイ、傷が多いから医務室で手当てする。一緒に来る? というか来てほしい」
「もちろんです」
医務室で女の子と二人きりは風紀的にアウト! ってことは流石にサミュエル副隊長も分かっているみたいでホッとするも、身体が痛い。全身砂だらけでよく見えないが、擦りむいた感じもあるし、肘も顎も痛い。
+ + +
手当の流れは―――
砂埃を払って水で洗い、擦りむいた肘と顎と鼻の頭を自分で消毒。その後、天使族サミュエル副隊長の”癒しの光”で、完璧に傷がふさがるよう治癒してもらう。
サミュエル副隊長は、初対面は、目つきが悪くて怖そうな印象だったが。いざ訓練が始まると、明るく穏やかで、面倒見がよく、底抜けに優しくい副隊長だった。
サミュエル副隊長は、分け隔てなく騎士見習一人ひとりをよく見ていてくれて、体調は大丈夫か? と声をかけたり。陣取り合戦でなかなか勝てないときなど、対処法など解かりやすくアドバイスしてくれたり。小さな怪我も即座に治癒してくれる。
「ジュード団長補佐、怖かったろう」
サミュエル副隊長が怪我を見ながら、優しく言った。
「はい」
「あの人、ネズミ1匹でもあの調子で叩き斬るからな」
想像しただけで言葉を無くす私。
「そ、それじゃあ……いまから”癒しの光”で治癒する為に、あなたに触れてもよろしいですか?」
これは騎士団規定の、救助や手当する際に述べる定型文だ。
突然、真面目な顔で丁寧な言い回しをするサミュエル副隊長に、思わず吹き出しそうになった。
でも、この人は上官。笑ってはいけない。
「……はい」
「いまの、笑ってもいいからな」
サミュエル副隊長が優しくニッと笑うので、私も緊張がほぐれ、つい笑ってしまった。
「フフっ、はい」
「いくぞ」
サミュエル副隊長が両手を伸ばし私の頬に触れると、温かく柔かな光に包まれた。
ぽわっ
あ、なんか気持ちいい!
目の前を見ると、ん? サミュエル副隊長の水色の目が、なぜか私を”キッ”と睨みつけていた。
皺が、半端ないくらい眉間に皺が寄っている!
こっ、怖い……私、何かした!?
この前、アイザックに、”イヤ”って言ったから? それとも ”副隊長の俺様が、こんなガキんちょの手当なんてめんどくさい”って感じの表情かな。
なんだか、目を逸らしたら負けと思い、私も負けじとサミュエル副隊長の目を睨み返した。
グっ……………(睨み合い)!
耐え切れなかったのか、サミュエル副隊長が焦った表情で、両手を離した。
「なに!? な、なんかイヤだった!?」
もしかして、睨んでいたわけじゃなかったの!?
でも……さすがに、睨んだように見えたので睨み返しただけです、とは言えず。
「いえ……治癒、ありがとうございます」
とりあえず一礼した。
「そ、そう、気を付けてね」
「あ、あとタオルは洗って後でお返しします」
血の付いたタオルを手に取ると、
「いいよそんな気つかわなくて、それ腰に巻いてたやつだから」
「え……」
固まる私の手から、タオルをサッと取りニッと引きつった笑みを見せた。
「こんなん、合宿所でまとめて洗濯すっから、な、レイ」
「……では、サミュエル副隊長失礼します」
ムッとした顔をして返事をしたレイ兄さんは、足早に医務室を出た。
私も一礼し、なんだか様子のおかしいレイ兄さんを追いかけた。
そういえばレイ兄さんは医務室では何も話さず、終始不機嫌な顔をしていた。
「レイ兄さん!」
廊下の先で立ち止まっていたレイ兄さんのシャツの背中を掴むと、兄さんはサッと振り返り、私の頬を両手でムニっと掴んだ。
しまった!
油断してた!
「ルー、嫌だったら、嫌って言っていいんだぞ!」
「え?」
「サミュエル副隊長だ……あいつ……ルーを……睨んで。脅しやがって」
グレーの瞳を金色に輝かせ、レイ兄さんは険しい表情で憤った。
「やっぱり……私を睨んだように見えたから、その、つい、睨み返しちゃったの、ごめんなさい。でも、もしかしてサミュエル副隊長、そんなつもりじゃないかもしれないし」
「いや、あいつはルーを睨んでいた。やっぱりルーは、騎士なんてならなくていい、今すぐ家に帰るんだ」
レイ兄さん……私が怪我したうえに、天使族から睨まれ脅されたと思ってるんだ。
「でも、兄さん!」
「ゔぁぁぁぁ!!! 帰る前にぶん殴ってくる」
目を金色に光らせ、叫び声を上げ医務室の方へ走り出した。
「ええっ!?」
レイ兄さんがドアを開けようとすると、内側から鍵が掛けられた。
ガチャ!
「開けろ! 卑怯だぞ!」
「話は聞いた。ゴメン。俺、こんな顔だからよく誤解を受ける。だから、話し合おう」
サミュエル副隊長の懇願する声が聞こえる。
「兄さん誤解だって、そういう顔なんだって! 許してあげて!」
ガチャガチャガチャ……ドアノブが壊れそう!
ガンガン、バキ!……
「信じられるかーーーー!」
バキバキバキバキ、ガコン!
とうとうレイ兄さんがドアノブを扉ごと壊し中へ入ると。
そこには、まさかの土下座したサミュエル副隊長の姿があった。
バシッ
私は呆然とするレイ兄さんの頬を叩いた。
「兄さん、いい加減やめて!!!」
蝶番が外れ傾いたドアが、キィーキィー音を立てて揺れている。
「サミュエル副隊長もやめてください!」
私はなかなか頭を上げないサミュエル副隊長にも怒鳴った。
「ゴメン、本当に悪かった」
「だからなんで謝るんですか!?」
頭を上げたサミュエル副隊長は、普段は真っ白な肌を全身赤に近いピンク色にしながら言った。
「なんでって、さっき君が睨んだって言うけど、それは俺が、女性を落とすときに使う渾身の”キメ顔”だったんだ!」
「え……」
私とレイ兄さんが唖然とする中、サミュエル副隊長は話を続けた。
「君と、アイザックの件で、君が天使族を嫌いになってしまったかと思ってね。何とかしたくて、癒しの光が使える天使族のカッコよさが伝わればと思って……」
私とレイ兄さんは、頭を抱えた。
「私には、睨んでるようにしか……っていうか、それで落ちる女の人いるんですか!?」
サミュエル副隊長は、目を泳がせながら小さく言った。
「…………まだ、いないかな」
「原因、それじゃない? 普通にしていれば、すっごく優しくて素敵な副隊長なのに」
その途端、サミュエル副隊長の目がパァっと輝き、嬉しそうに私に聞き返した。
「え!……どんなところが? 具体的に言って!」
「え!? ……えっと、ギャップ萌えというか、怖い顔してるのに運動の苦手なジュリアンに優しく指導してたり、閃光弾の調合に手間取ってるリンデにこっそり教えてあげたり、天使族のロマノスのことも気にかけていて……」
「ルーよく見ているんだね」
「うん。意外だったから。なのに、なんか残念というか……」
「残念?」
サミュエル副隊長が首をかしげた。
「レイ兄さんもそうだから」
「どういうこと?」
レイ兄さんが首をかしげた。
「レイ兄さんは、騎士団で第3部隊の副隊長をしているときは、すっごくカッコイイんだけど、普段一緒の時はなんか天然で、少し残念な感じ。だから、サミュエル副隊長は、無理して”キメ顔”なんてしなくていいんです。そのままの優しい副隊長でいれば、女の人も振り向くと思いますよ。あ、でも腰タオルはアウトです」
二人は、ポカーンと私を見つめた。
「あ、え、偉そうなこと言って、すいません。じゃあ」
「あ、待て!」
サミュエル副隊長が、立ち去ろうとする私を引き留めた。
「こ、このことは誰にも言うなよ! 絶対だぞ!」
「はい、副隊長も言わないで下さいよ! 3人だけの秘密です」
「ドア、どうしよう」
レイ兄さんが申し訳なさそうに頭を掻いた。
忘れてた……
「俺が何とかするから、気にするな。行っていいぞ」
サミュエル副隊長って、優しいというか人がいいというか……。
「でも……やっぱり、僕が壊したので、ブラッド隊長には、僕が壊したと報告しておきます。修理の手配をお願いしていただければ……」
「わかったよ。やっとくから」
「サミュエル副隊長、優しすぎます」
私が褒めると、調子に乗るなよとニッと笑い手を振ってくれた。
どうなる事かと思ったが、いろんな誤解も解け私とレイ兄さんは訓練場へ戻った。
なんか……VSジュード騎士団長補佐より疲れた感じ。
「で、ルー、さっき言ってた僕の”残念な感じ”って、何?」
「ああ……」
まだまだ続きます。
【合宿所・医務室・サミュエル副隊長視点】
「あ~~~ヤバかった」
壊れたドアを、俺は呆然と眺めた。
勇者ルーシーの兄、第3部隊レイ副隊長20歳。
王国騎士団第3部隊の弓隊の精鋭として、異例の速さで彼が副隊長に任命されたのは昨年の事。その時レイは19歳だった。
剣術体術も優れているが、弓の技術はこの騎士団でもトップクラス。彼が考案した”獲物を追尾する魔力の矢”の威力は凄まじい。一度に何本もの矢が魔獣を追い詰め確実に仕留める様子に、僕は恐怖を感じた。容姿端麗、常に冷静で思慮深く穏やかな彼、だからこそ恐怖を感じた。
こいつに、一度でも狙われたら最後、命は無い!
彼の狂気を垣間見たのは、今年の騎士見習試験トーナメント戦だった。
少年 (ルーシー)が魔法陣へ吸い込まれるや否や取り乱し、その対戦相手アイザックを迷わず射抜こうとした。第3部隊長や弟のウィリアムら数人がかりでやっと止めたが、妹の無事が確認されるまで拘束されていたらしい。
+ + +
ついさっき廊下で話す、レイと妹ルーシーの会話をドア越しに聞き俺は青ざめた。
”ルーを脅しやがって”
”睨んだように見えたから、睨み返した”
”ゔぁぁぁぁ!!! 帰る前にぶん殴ってくる”
渾身の”キメ顔”を”睨んだ”と思われたのもショックだったが、それよりも、いま身に迫る恐怖を感じ即行鍵を掛けた。
俺が副隊長になれたのは、”癒しの光”と面倒見の良さが秀でていただけで、同じ副隊長だからって、優秀で化け物クラスの強さの奴なんかに、俺が敵うわけがない!
しかも、レイだけじゃねぇ、第2部隊副隊長のオスカーもいる! ウィリアムも!
ヤバすぎるだろ!
土下座するしかなかった。
はじめに仕掛けたのは俺だったし、腰タオルの件も笑って貰えると思っていたが、完全に引いていた。
自ら引き起こしてしまった惨状に、恥ずかしさで顔があげられなかった。
正直に釈明する俺に、二人は呆れている様子だった。
15歳のルーシーは、歳の割りに大人びた物腰で、意外にも俺の事をちゃんと見ていてくれていた。そして、俺の事を「優しい素敵な副隊長」と言ってくれた。
「そのままの優しい副隊長でいれば、女の人も振り向くと思いますよ」(by.ルーシー)
―――――俺は救われた。
+ + +
赤い長い髪に深い青い瞳。
小さいときに絵本で見た、伝説の人魚のような容姿の勇者ルーシー。
宿泊所で初めて会った時は、俺の裸を見てもキャーとも何も反応しない肝の座った娘だと感じた。でも、怪我をさせたアイザックを心配し、医務室へ涙を浮かべて現れたルーシーの、あまりの可愛らしさに俺は、こんな女の子が王国の未来を背負う勇者だなんて信じられなかった。
アイザックの態度も気に入らなかったが、思春期の男なんてみんなあんなもんだ。大口叩いた後に女の子にコテンパンにされたら誰だってああなる。あんな可愛い子に負けたうえに、心配されて泣かせるなんて、男としてあわせる顔も何もなかったんだろうな……若いなぁ。
ブラッド隊長は、天使族の為に”勇者を籠絡せよ”と上から命を受けているらしい。ルーシーがアイザックと親密になってほしいと考えているようだったが、思惑が外れ、酷く思い悩んでいるように見えた。
天使族の覇権争いらしいが、まだ若いアイザックを巻き込むのはどうかと思う。あいつはあいつで真面目でいい奴なのに。
ブラッド隊長は警戒しているんだろう。
ルーシーと同じ宿に、天使族の名門、神殿騎士マルクス・キング副隊長がエスタ様付きの護衛で滞在している事を。眉目秀麗な容姿だけでなく、聖なる光をつかさどる一族と言われている彼は、弟と共に優秀で非の打ちどころのない、天使族が憧れるロイヤルクラスの”天使”! キング家が勇者を取り込んだとなれば、また天使界の力の均衡が崩れ、天使同士の争いが勃発しかねない。
キング家だけには勇者を渡したくないのだろう。
だけど、少しの間だが、あの勇者と会話して分かった。
勇者を”籠絡”?
笑ってしまう。
知らぬ間に”籠絡”されているのは俺達の方なのに!
このオッサン何言ってんだと思うかもしれないが、国王陛下にアスモデウス殿下、あの妖精王でさえ一瞬にして虜にした勇者だ。俺に抗えるわけが無いだろう。もしかしたら、ブラッド隊長も既に心を奪われているに違いない。
あの子は……
ルーシーは、関わる者を魅了してやまない”聖なる光に選ばれし勇者”。
去り際に、俺に向って笑顔で手を振る姿に、
「ヤバい……」
とんでもなく胸が高鳴った。
サミュエル副隊長、ルーシー争奪戦こっそり参戦!(^^)!ガンバレ
お付き合いいただきありがとうございます。
ブクマ登録ありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。
※章管理で”章”作ってみました。
少し見やすくなるといいかなと思いまして。
※ブクマ★いただけましたら励みになります!応援よろしくお願いします♪
※2021/10/12 誤字脱字訂正しました。
※2022/7/11 誤字脱字訂正しました。
2023/1/19 気になる箇所訂正しております。




