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32話 訓練開始!ルーシーVSアイザック再び

【アクアラグーン訓練場グラウンド・ルーシー視点】

 ※王暦1082年5月3日。


 合宿二日目。

 新人騎士見習強化合宿が始まった。


 訓練場は、アクアラグーン南西に位置した広大なエリアで、北に温泉の泉、東西南を森で囲まれている。北の泉の近くには、古いゴシック様式の教会をリノベーションした訓練棟があり。エレガントな列柱や、内陣(祭壇などがある場所)を取り囲む豪華なステンドグラスをそのまま残した講義室に度肝を抜かれた。


 訓練は、朝9時から17時まで。

 希望者は19時か22時まで訓練場で自主トレも可能。


 騎士見習達は、基礎訓練、各技能訓練、近接・遠距離攻撃の際の立ち回り、5人編成で行われる 陣取り合戦など、担当騎士による様々な訓練が行われる。合宿後半になると、2日間の野外訓練や行軍訓練、小隊訓練等、予定されている。中でも注目したいのは、”移動用魔法陣特訓”という訓練。あの移動用魔方陣が訓練すれば使えるようになるんだと、はじめて知った。早く使ってみたい!



 午前中の基礎訓練の後、各個人の実力を確認するため、ブラッド隊長、サミュエル副隊長、レイ副隊長監督の元、各実技のトーナメント戦が行われた。

 新人騎士見習試験を思い出す。



+++++

 ここで人物紹介


  第1部隊ブラッド・レリエル隊長は、金色の瞳にガッチリとした筋肉質。身長190cmぐらい。天使族では珍しい黒髪のトランクスヘアに、年齢は30代くらいかな。ウリエルという四大天使の末裔一族として有名だと、ロナが教えてくれた。


 第4部隊サミュエル・ヒューゴ副隊長は天使族。身長約180cm。青い目で、長い金髪を頭の高い位置で結んでいて、一重の釣り目。いつも眉間に皺が寄っている。3番目の兄ウィリアムの上官で、「28歳男盛りだ」と自己紹介していた。意味が良く分らない。挨拶を終えクルリと背を向けると、片方の翼が半分無い。 


 その翼に見覚えがあった。

 私とホムラは、何かの間違いであってほしいと願ったが、王国騎士団専用宿泊所で会った、牛乳腰タオルのお兄さんだった。



+++++



 話は戻って、各実技のトーナメント戦。


 体術は風紀上、女子と男子で分けられ、女子3人で勝ち抜き戦が行われた。

 

 1回戦の”ホムラ VS スカーレット戦”は、終始激しい口喧嘩で始まり二人とも頬にグーパンチし合い、反則負け。不戦勝で私が優勝。

 

 弓でも、二人の争いは過熱の一途をたどった。

 昨年と今年のトーナメント戦での優勝者同士、一歩も譲らず。レイ兄さんが二人を諭すように止めるまで、口喧嘩しながらの戦いは続いた。



 「実力は分かったから、もうやめようね。二人とも、可愛い顔が台無しだよ」

 

 レイ兄さんに言われ、悔しそうに口をつぐんだスカーレット先輩とホムラ。私から見たらすごく似た者同士のように思えた。


 スカーレット先輩はもしかして、すごく不器用で、人見知りで、強がりで……出会った頃のホムラのよで。でも、歩み寄ろうにも、なぜか私のことを避けるし、挨拶をしても無視される。これは、へこむ~。

 


 剣術。

 見習試験で戦った事のある妖精族のリンデや、ソン、スカーレット先輩と勝ち抜き、決勝は、やっぱり、天使族のアイザックだった。


「君とまたこうしてやり合えるなんて、よろしくアイザック」


「気安く俺の名を呼ぶな。下賤な……勇者め。今度こそ決着付けてやる!」


 アイザックは嫌そうに顔を歪め私を見下すように睨みつけ、木刀の剣先をこちらに突き付けた。


 容姿端麗、文武両刀、天使族のエリート一族!(と自称している)

 プライドが高く、いまだに天使族以外の同期とまともに話をしているところを見たことがない。

 ”()()()勇者” ……か、私だって一生懸命生きてるんだ! 



「君には、手加減しないよ」


 アイザックに宣言し、私も剣先を向けた。


 

 お互い一礼し、木刀を構える。


「はじめ!」


 ブラッド隊長の掛け声で私は前へ一気に踏み込み、アイザックの木刀を避け胴体めがけて斬り込んだ。前回は、相手が打ち込んでくるのを待っていたが、私も騎士見習になって1カ月。訓練の成果を試したい。


 間合いに入り、急所に斬り込む!



 ダン! ……シュ! 



 アイザックの胴に木刀が当たり、

 カラン……と彼の手から木刀が落ち、そのまま腹部を抑え倒れ込んだ。 



「速かったな。勝者、ルーシー!」



 ブラッド隊長の声に歓声が挙がった。 

 そして私は、蹲るアイザックへ駆け寄り手を伸ばした。



「大丈夫?」


「触るな! あっちへ行け!」


 長い金髪を振り乱し怒鳴りつけ、ヨロヨロと立ち上がりながら憎しみの目で私を睨みつけた。



「アイザック、その態度は騎士として頂けない。びしっと立て! 一礼!」


 ブラッド隊長が声を上げた。


「ありがとうございました!」


 私の声だけ響いた。

 



 ドサッツ……


 アイザックが倒れた。


「アイザック!?」



 ああ、また。

 やってしまったのだろうか……


 今度は、建物じゃなく”天使族”しかもエリート(自称だけどね)。


 アイザックは気を失い、サミュエル副隊長の癒しの光で治療を受けながら担架で医務室に運ばれた。彼の長いまつ毛に、涙の粒が光っていた。



「大丈夫、そんなにヤワじゃない。君が気にすることではない。何かあったらそれは私の監督責任だ。心配するな」


 ブラッド隊長が言葉をかけてくれたが、心配で仕方ない。

 

 気絶するほどの痛み。

 まさか骨折とか!? 

 大事な血管とか切断して、内出血して、し、死んだりなんてしないよね。

 でも、手加減しないで斬ったから、もしかして最悪な場合……内臓破裂!?

 

 訓練棟全壊に神殿倒壊、そして同期殺害……



「あの、ブラッド隊長。私も医務室に行っても宜しいですか?」


「訓練終了後なら構わんが。……泣いて!!! どこか怪我をしたのか?」



 ブラッド隊長が慌てて私に聞き返した。

 私はただアイザックが大事になっていないか、死ぬほど痛がってないか、とにかく心配で気が気じゃない。


「アイザックに、怪我させて……心配で……グスッ……うっ……」


「……そうだな、じゃあ今から私と行こう。皆、私が戻るまでしばらく自習だ。レイ副隊長、よろしく頼む」


 + + +


 医務室に着くとアイザックは、サミュエル副隊長に付き添われベッドで起き上がっていた。痛がっている様子もなく顔色もいい。



「言っただろう。大丈夫だって」


 ブラッド隊長が笑った。


「……よかった」


 心底ホッとして、涙がこぼれた。


 言っておくが、これはアイザックに何かあって、天使族のエリート一族から賠償請求される心配がなくなり、ほっと安堵した涙である。


 心配して損した! 

 さ、戻ろう!



「クッ……何しに来た」


 憎々し気にアイザックが、私を睨みつけた。

 こいつは本当に、私の事が嫌いなんだな。


 無理もないか……「気安く俺の名を呼ぶな。下賤な勇者め。今度こそ決着付けてやる!」とか言った手前、開始1秒も経たず敗北させられるなんて無様だよね。


 ああ別にもういいや、と早く戻ろうとすると、


「アイザック、ルーシーは()()()を心配してここへ来たんだ。謝るんだ!」


 ブラッド隊長がアイザックに、厳しめに注意した。


 ブラッド隊長、謝罪なんて求めてないです。私そんなに気にしてないし、そういう奴ってわかってるから。(ルーシー心の声)



「やだね!」


 アイザックが顔をしかめた。


「ええっ!」


 サミュエル副隊長が驚きの声を挙げた。

 ここでは上官の命令に歯向かう事は、()()禁止されている。



「謝れ! アイザック。でなければ今すぐ荷物をまとめ、家に帰「すいませんでした!」


 速っ! 

 速攻アイザックが謝った。

 でも、それでも悔しげに私を睨みつけた。

 謝っている態度ではない。

 

「お前なぁ」


 呆れた顔でブラッド隊長は頭を掻いた。


「そんなんじゃ、これから苦労するぞ。この国には天使族だけではなく、悪魔も妖精も人間もいる。仲良くしろ」


「……イヤだ」


 私を睨み続けるアイザックの目には、憎しみの涙が浮かんで見えた。

 泣くほどイヤなのはわかるけど、私も……

 


「私も()()です!」


「「え!?」」


 ブラッド隊長とサミュエル副隊長が信じられないという表情で私を見た。


「ですので、失礼いたします」


 唖然とする天使族3人に一礼し、医務室を出た。


 あいつ(アイザック)とは、話したところで仲良くなるなんて、絶対に無い。()()()()()


 ”イヤ”って言って、スッキリした~。


 さっさと戻ろうとする私を、ブラッド隊長が追いかけてきて呼び止めた。


「ルーシー済まない。私からも謝る。天使族がみんな、アイザックのようだと思わないでくれ」


 困ったような悲しそうな表情で、ブラッド隊長が私に頭を下げた。


「そんな! ブラッド隊長は悪くありません」


 そう、悪いのは、ぜーんぶ()()()です!


「ルーシー……」


「はい」


 何か言いたそうだったが、ブラッド隊長は悲しげな顔で深く頷き言った。


「もう。……戻っていいぞ」


「はい!」


 私はブラッド隊長に敬礼し、訓練場へ全速力で走った。


 ブラッド隊長は、なんであんなに悲しそうな顔をしていたのだろう?

 まさか、アイザックにとことん嫌われてる私を()()に思って!?


 まあ……どう思われようと構わない。言いたい事は言った! 

 言ってやった! 


 + + + 


【アクアラグーン訓練場北の温泉の泉・ルーシー視点】


 昼食後。元聖女エスタさんが担当する、魔力の強化訓練が行われた。

 訓練は、魔力量別に分けられ、それぞれの特性に合った使い方を習得していく。


 この魔力の強化訓練、


 "基本的に、温泉にリラックスして入る”だけだった。


 ちなみに”足湯”。


 昼食後の午後13時から約60分、”温泉で足湯"。

 最高に気持ちがいい。


 しかも、それが一番効率のいい魔力の上げ方で、入浴の後に木刀に魔力を込めると、あっという間に”勇者の剣(シャルル)”に変わった。


 あと、ずっと疑問に思っていた”木刀”はどこへ行くの? という不思議。

 ”勇者の剣(シャルル)”に聞いても『分からない』とのこと。


 騎士団の決まりでは、木刀を失くした場合は訓練後、備品紛失届を書かないといけないらしい。

 紛失理由は、”勇者の剣を召喚したため”でいいのだろうか? あとでレイ兄さんに聞こう。

 

 そしてここでも、ホムラとスカーレット先輩の魔力対決が行われていた。

 魔力でバシャバシャお湯を飛ばし合う二人。はたから見れば楽しそうにも見えるが、嫌悪の火花バチバチだ。


 ホムラの瞬発力のある黒い魔力と、スカーレット先輩の鋭く伸びのある銀色の魔力。

 「どちらも弓に向いている」と、レイ兄さんが絶賛していた。


 その後、救助訓練をし、今日の日程は終わった。


 結局アイザックは、午後の訓練には戻ってこなかった。

ご覧いただきありがとうございますm(__)m


※2021/8/9 誤字直しました。


ブクマや★を頂けると励みになりますので応援していただけると嬉しいです(^^♪


※2021/10/19 アクアラグーン訓練場の説明加えました。

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