Ⅴ
僕は彼女を連れて祖母の家に戻った。
ゆきちゃんは泣き顔を見られたのが恥ずかしいのか、僕の部屋に入るまでずっと顔を隠していた。
僕はゆきちゃんを座らせて部屋を出た。
勢いで部屋に連れて来てしまったが、僕のゆきちゃんへの気持ちはなくなってはいない。
むしろ、会えなかった分胸の内にあったものは益々汚れていた。
そんな中で同じ部屋に居れるわけがなかった。
ぐるぐると考えながら僕はココアを持って部屋に戻った。
疲れていたのだろう、ゆきちゃんは僕のベッドに凭れながら眠っていた。
僕は手に持っていたココアを置いて近づいた。
手を伸ばせば届く距離まで近づいたが起きる気配はない。
よっぽど疲れていたのだろうか、いつもはここまで近づくとすぐに目を覚ましていた。
起こさないように気を付けながら、彼女の頬を触れた。
ちゃんと温かい。
緊張で冷たくなっていた僕の手に、彼女の体温が伝わってくる。
ほっと一息をついたことで、それまで気が付かなかったことにも気が付いた。
隈ができている。
それに、顔色も少し悪いし、肌も荒れている。
最後に会ったときより、見るからに弱っていた。
僕のせいだ。
僕がゆきちゃんと一緒にいればこんな変化にはすぐに気が付いていただろう。
あの日の僕の選択は間違っていた。
自分が苦しかろうとも、ゆきちゃんの傍を離れてはいけなかったのだ。
でも、僕と離れただけでゆきちゃんがこんなに弱るとは思えない。
他にも理由があるのだろうか。