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Ⅱ
ごみを捨てに行ったはずの僕が、女の人を抱えて戻ってきたことに祖母が驚いていた。
事情を説明しようにも、声を出すことができない。
一刻も早く、彼女を温めてやりたいのに。
ふと、気が付いた。
僕は見ず知らずの彼女を"助けたい"と思っている。
"この人の笑った顔が見たい"
"この人の名前を知りたい"
"僕の名前を呼んで欲しい"
そのとき胸に溢れたこの想いを認めていいものか分からなかった。
祖母はなにも言えなくなってしまった僕の腕の中の彼女が冷えきっていることに気が付き、風呂に入るよう言ってくれた。
辛そうに呼吸をする彼女を連れて、僕は風呂場に行った。
幸い、風呂は沸いていてすぐに入れるようだった。
彼女は、少し楽になったのか僕に下ろすように言った。
僕は風呂で温まるよう身ぶり手振りで伝えて、服などを取りに行った。
サイズ違いで買ってしまった大きめのスウェット上下を持って彼女の元へ戻った。
彼女が風呂から出てくるまで、僕は心配で廊下を行ったり来たりしていた。
しばらく経って彼女が風呂から出てきた。
頬がほんのり色づき、血色の良くなった彼女はとても美しかった。