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ⅩⅠ
ゆきちゃんは昨日から祖母の家に来なくなった。
それに、ゆきちゃんの家からゆきちゃん以外の気配がするようになった。
今まで、ゆきちゃんはあの家に一人で住んでいたはずなのに。
あの男と一緒なのか?
一緒に住むほどの仲なのか?
やっぱり、あんな男がいるからゆきちゃん僕の元へ来なくなったのか?
違う、駄目だ。
こんな下らないことを考えるな。
分かっているだろう、僕が1番になることはないのだから。
早く、早く諦めないと。
ゆきちゃんを幸せにできるのは僕じゃなくて、あの男なのだから。
ゆきちゃんが幸せなら、僕はこの想いを一緒背負っていく。
でもさ、ゆきちゃん。
僕は信用するに値しないのかな。
友達だと、親友だと思っていたのは僕だけだったのかな。
君は僕には何も教えてはくれないね。
僕と会えなくなって寂しそうにしていたのは、
じゃれついて来た子どもが急にいなくなったから寂しかった、だけ?
君の傍に、君の事を守ってくれる大切な人がいるなら僕はもう要らないよね。
今度こそ、ちゃんとゆきちゃんから離れよう。
僕は次の日、東京へ戻った。