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社畜ですが、種族進化して最強へと至ります  作者: 力水
第1章 狐面のヒーロー編
30/202

第14話 クエストクリアの警察署での事情



千葉県白洲市――ファンタジァランド前白洲警察署内テレビ前


 恰幅のよいゾンビの化物が倒された直後、狐仮面の姿も煙のように消失してしまう。

 誰も一言も口にしない。ただ、耳が痛いくらいの静寂が訪れていた。


「ホッピーの勝利だいっ!!」


 黒髪の少年が右腕を振り上げて勝利宣言をした途端、ようやく時間は動き出し、耳を(ろう)するような大歓声が波のように建物の外へと広がって行く。

 誰もが人類の勝利に酔いしれている中、


「誰ですかっ! あれはっ!?」


 特殊部隊の隊長の髭面の男が、血相を変えて袴姿の男に詰め寄る。


「くふっ、それは私の方が知りたい事なんですがねぇ? 答えていただけますかぁ?」


 袴の男は右手に持つ扇子の先を白洲警察署の署長及び警察官たちに向けると有無を言わさぬ口調で尋ねた。


「ホッピーですよ」


 署長が仏頂面で返答する。


「ふざけないでいただきたいっ! 我々が聞いているのはそんな空想上のキャラクターではなく、あの仮面の人物についてですっ!!」


 特殊部隊の隊長の剣幕に署長は眉をピクリと動かすが、


「彼はホッピー。我らはそれ以上知らない」


 署長は意味ありげな視線を部下の刑事たちに向ける。

 

「俺も同じです」

「俺もだ」


 刑事たちの到底あり得ない返答に、特殊部隊の隊長が口を開こうとするが、袴の男の右手により制される。


「くふふっ、彼は銃を所持していましたねぇ。明確な銃刀法違反ですし、君たちのやっていることは、立派な警察官職務規定違反及び犯人隠匿罪に該当しますけど、そこのところはどうなんですぅ?」


 袴の男の問いかけに署長は口端を上げると眉の辺りに決意の色を浮かべつつも、


「見くびらないでいただきたい。私達は警察官です。私達が知らないと言ったのは、近隣のテーマパークに化物が出現するという緊急事態故に今は理路整然とした信頼性ある発言ができないと考えたから。私の警察官として誇りにかけて、本事件についてしっかり調査することはお約束いたします」


 強い口調で言い放つ。

 袴の男は警察署一階内をグルリと一望し、避難したゲストたちから向けられる強烈な批難の視線に深いため息を吐く。


「どうやら我らはお呼びでないようだ。いいでしょう。どの道、この場の監視カメラの記録を調べればすぐにわかることですしねぇ。それで、構いませんね。署長?」

「ええ、どうぞお好きなだけ」


 袴の男は鋭く細い目で今もその戦いぶりを放送しているテレビの映像に顔を向けると、


「世界は英雄(ヒーロー)を欲している……ですか」


 そう呟き、暫し瞼を閉じて笑いをこらえていたが扇子をパチンと閉じると、


「撤収しますよ!」


 そう指示を出し、警察署から出ていく。


「あれで良かったですか? 署長?」


 刑事の一人の気遣うような疑問の言葉に、


「仕方ないさ。ここでのあの一幕を忘れる。それが警察官として我らが恩人たる彼にできる精一杯の譲歩だ」


 署長は軽く頷く。


「立場上、流石に銃刀法違反を見逃すわけにはいきませんしねぇ。まあ、あれを果たして銃と呼んでいいものならばですが」

「ああ、おそらく、あの銃はこの世界の変質と同じ理にあるんだろう。それでもルールはルール。この件が落ち着いたら、きっちり調査はするさ。ただ、今はそんなことより我らにはやることがある!」

「ええ、わかってますよ!」


 いつのまにか集まっていた捜査官や警察官たちが署長の前で隊列を組む。


「ファンタジァランド内で逃げ遅れた者の捜索と保護、避難した客たちの対応が最優先。手の空いたものから、避難民を保護し、ガイシャを瓦礫の中から救い出す! 我らは警察官だ。市民の希望だ! その意地を見せろ!!」

「「「「「はっ!!」」」」」


 一斉に敬礼して走り出していく警察署の職員たちの後ろ姿を眺めながら、


「この狂った世界が生んだ英雄。まさにその歴史的な瞬間を目にしたのかもな……」


 署長はそう独り言ちたのだった。




お読みいただきありがとうございます。


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社畜ですが、種族進化して最強へと至りますの表紙
・ダッシュエックス文庫様から11月25日に発売予定。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[気になる点] 倒した敵の魔石はどうなってるの?
[一言] 「犯人蔵匿罪に該当」 →「犯人隠匿罪に該当」
[気になる点] 面白く読めているだけに、ピーポイント、及びでない、等の誤字が気になってしまいます。
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