表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜ですが、種族進化して最強へと至ります  作者: 力水
番外編 第一章 新たな面倒ごと
201/202

第18話 助かったよ


 自衛隊の封鎖現場への不法侵入していた三人の一人である金髪マッチョの尋問、調教を終えて、生徒たちによるクエストクリアを確認した後、警察に三人を引き渡す。

どうやら、あの三人、女を脅迫して金品を巻き上げたり、卑猥な画像をネットに上げて金を稼いでいたらしいからな。精々、臭い飯を食ってもらうとしよう。

クエストクリアには冒険者機構による認証が必要となる。最近働き過ぎてる感がある。これじゃあ、社畜時代と大差ないしな。あとは関西支部の連中に任せて俺は帰路につくとしよう。

冒険者機構関西支部に連絡を入れて、俺は東京の自宅へ帰還。そして、この数週間ご無沙汰だったゲームに勤しんでいると、我が家まで来た警察に連行されてしまう。しかも、この地域の管轄のはずの堺蔵警察署ではなく、都心である西東京市似高(にだか)警察署内。どう考えてもやましい事ありまくりだろう。


「では、貴方は小測(こそく)議員の息子さんから、職務放棄を指摘されたのに腹を立てて暴力を振るったのですね?」


 スーツ姿のサラリーマンのような外見の警視にさっきから奴らの都合のよい調書を取られている。また、このパターンか。どうやら俺はとことんまで警察の尋問室に縁があるらしい。


「俺がどう答えようと、そこに書く内容は変わらねぇんだろ。なら、答えるだけ無駄だな」

「はい。認めると」


 カタカタとノートパソコンに打ち込んでいく。

 あの三人組、こうやって今の今まで己の罪科を他者に押しつけてきたってわけか。

 もちろん、実際の罪の責任はあの三人組にある。だが、一番救いようがないのは、本来その罪を諫めるべき大人たちが、餓鬼どもの罪をなかったことにしてきたってことだ。

 

「一つ聞いていいか?」

「なんです?」


 鼻歌混じりの眼前の警視に、


「お前、普段からこんなことしてるのか?」


 一目瞭然なことを尋ねた。


「意味不明ですねぇ」


やはりそうか。初めてならもう少し真面目にやるだろうし、多少なりとも罪の意識は覚えるはずだ。だが、こいつからそう言ったマイナスの感情は一切読み取れなかった。

もうこんな茶番に付き合う必要はない。


「最後に電話したいんだが、かまわねぇか?」

「弁護士さんに電話ですかぁ。構いませんよぉ。ここからならねぇ」


 この余裕、ここの警察署の幹部どもも既に篭絡済みなのかもな。

 警察ぐるみで餓鬼どもの罪を揉み消すか。マジで救いようがねぇな。

 一応任意同行だから、スマホは没収されていない。スマホで登録済の番号をプッシュする。


『これは藤村君から電話とは珍しいですねぇ。ご無沙汰しております』


 穏やかな初老の男の声が鼓膜を震わせる。あまり、この手の妖怪系の奴に借りを作りたくはないんだが、ここで職を失うわけにもいかんしな。


「ああ、今、面倒ごとだ。説明するのも面倒だ。似高(にだか)警察署にいるから手が空いたら来てくれ」


 電話越しに息を飲む声が聞こえる。


『わかりました。外ならぬ藤村君の頼みだ。直ちに』


 電話がプツンと切れる。あの男ならあとはここで待つだけで適切にこの茶番を終わらせてくれることだろう。


「弁護士さんですかねぇ。でもぉ、会えるのは貴方から全ての調書を取った後だ」

「そうかよ」


 それは俺が望むところだな。あの有能極まりない警察官なら、俺が調べた内容くらい直ぐに辿り着く。どの道、こいつらが行っていることは、穴があり過ぎるしな。



 約四時間後、取り調べ室の扉が開かれる。


「今、容疑者の取り調べ中です! 関係者以外立ち入り禁止ですよ!」


 不快そうに怒鳴りつけるサラリーマン警視の声をよそに、ぞろぞろと背広を着たイカツイ男たちが部屋に入ってくる。


「遅くなりました。調査に少々、手間取りまして」


 背広を着た恰幅の良い優しそうな初老の男が、帽子を取って挨拶をしてくる。


「悪いな。助かるよ」

「何だ、ここは関係者以外立ち入り禁止といったはずだぞっ! おい、早くつまみ出せ!」


 部屋の傍の刑事風の男に指示を出すがそれには答えず、俯いて震えるのみ。


「それでは頼みます」

「ハッ!」


 イカツイ坊主頭の背広の男は敬礼すると、一枚の紙をサラリーマン警視に示し、


「廣井警視、君には小測(こそく)議員から金品を受けとり、事件をでっちあげ、隠蔽した容疑がかかっている」


 被疑事実を告げる。


「隠蔽!?」

「そうだ。本件だけではない。別件も8件ほど似たような事件があがっている」

「な、な、何の証拠があって?」


 サラリーマン警視は、壮絶にドモリながらも尋ねる。


「証拠?」


 坊主頭の男は鼻で笑うと、鞄から分厚い茶封筒を出すとテーブルに乱暴に投げ出す。


「いいか、我らは人事一課のものだ。身内の不祥事件に証拠もなしに、乗り込む。そう貴様は本気で思っているのかぁ?」

 

 弾かれたように茶封筒の中身を取り出し読み始める。忽ち資料を持つ両手が震え、全身から血の気が引いていく。


「なーに、時間はたっぷりある。ここまで俺達警察の顔に泥を塗ってくれたんだ。しっかり、たっぷり、ゲロしてもらうぞ!」


 サラリーマン警視は、もはや、抵抗する気力もないのか、項垂れて肩を落とし、イカツイ男たちに囲まれて連れて行かれてしまった。


「助かったよ」

「いーえ、こちらこそあの手の蛆虫の摘発を手伝ってもらって感謝しますよ。何せ君はこの手の事件に直ぐに巻き込まれますからねぇ」


 かつて堺蔵警察署署長であり、現在、警察庁でノンキャリとは思えぬ出世を遂げている男はそう子供のように無邪気に笑ったのだった。



有能な警察署長の再登場でした。以後も本編の登場人物が出てきますのでご期待ください。


遂に明日11月25日に、この『社畜ですが、種族進化して最強へと至ります』が発売となります。コミカライズの予定ありで、書き下ろしも結構なボリュウームでありますし、内容も個人的にはよく書けたと思っています! イラストもとても魅力的です。是非、ご検討いただければ嬉しいです! 


【読者様へのお願い】

 面白いと感じましたら、ブックマークや評価をしていただけると、メッチャありがたいです。(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜ですが、種族進化して最強へと至りますの表紙
・ダッシュエックス文庫様から11月25日に発売予定。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] 書籍買いました。番外編のあの発言はそう言うこと立ったんですね。 久しぶりのトランクスマンで笑いそうになりました。 (バス内で)
[一言] 更新お疲れ様です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ