第10話 最終層でのレベル上げ
今、無限廻廊、最終層へ来ている。
最終層は真っ黒な石の階段が空中に縦横無尽に張り巡らされて下へ続いている構造だ。
そしてその階段の途中には、ところどころに円盤が設置されており、そこには平均ステータスSの凶悪な生物が待ち構えている。
もっとも、そんなもの今の俺にとってどうってことはない。なにせ、【万物破壊】で全身を覆っておけば、近づくだけで勝手に相手が自滅してくれるし。
ちなみに、絶望王の事件後、暇つぶしに無限廻廊に挑んだわけだが、以前と異なり手応えなど皆無。あっさり最下層のラスボスを倒してクリアしてしまったわけだ。
『ぎひひひひっ!!』
【剖検好きの理科ちゃん人形】とかいう白衣を着た黒髪の巨大人形が、気色悪い奇声をあげつつ両手に持つメスを俺に振り下ろしてくる。
奴目掛けて右正拳を振りぬくと、ボシュンと風船が破裂するような音とともに、巨大人形は粉々に粉砕する。
《剖検好きの理科ちゃん人形を倒しました。経験値とSPを獲得します》
《LvUP! 藤村秋人の平社員のレベルが10になりました》
ほう。【事務処理効率向上】のスキルと【平社員の理】の称号を獲得している。
【事務処理効率向上】は、『事務処理能力が著しく向上する』という、そのまんまのスキルだった。
対して【平社員の理】は、『労働の際の疲労が、通常の10分の一となる』というパッとしない効果。
さらに、ランクアップだな。
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★ランクアップ特典!!
【万物の系統樹】により【平社員】のレベルが10となり、ランクアップの条件を満たしました。以下から、ランクアップする種族を選択してください。
・しゃっちょさん(ランクF――人間種)
・迷宮入りマン(ランクF――人間種))
・ロリコンキラー(ランクF――人間種)
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極めて不愉快なのが最後にある。【しゃっちょさん】と【迷宮入りマン】は意味不明だ。
あくまで推測だが【しゃっちょさん】は多分、社長さんの意味だろうがきっと傍迷惑な付録的な効果がついてくるだろうよ。
【迷宮入りマン】は、文字通り迷宮に入る職業という意味と、迷宮入り事件にする意味の二つがある。この悪質なゲームシステムからすれば、後者も考えなければならないわけだが……。
いいさ。あまりにひどかったらまた戻ればいい。ダンジョンに関係する種族を選ぶとしよう。
仮にも種族進化だ。部屋でゆっくり進化するのが最善だろうさ。
自室に戻り、ベッドの上で【迷宮入りマン】をタップする。
「何も起きねぇな。ん? なんだれこれ?」
右隅にある矢印をタップすると――。
《LvUP! 藤村秋人の【迷宮入りマン】のレベルが20になりました》
はあ? まだ戦ってすらいねぇんだが? 【迷宮マン】の称号と【迷宮入り】というスキルを獲得していた。
そして――。
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★ランクアップ特典!!
【万物の系統樹】により【迷宮入りマン】のレベルが20となり、ランクアップの条件を満たしました。以下から、ランクアップする種族を選択してください。
・迷宮開発者(ランクE――人間種)
・GTA(ランクE――人間種))
・青少年育成条例を破るもの(ランクE――人間種)
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はは……ランクアップしてらぁ。そしてここで一つ判明したことがある。
それは、レベルが上昇するのに必要な経験値は、その種族のランクによってある程度その幅が決まっている事。例えば、Fランクの種族ならFの、Eランクの種族ならEの必要経験値のように。もちろん、全く同じではないだろうが、必要経験値が加算方式なら一匹倒しただけで20も一気にレベルが上昇しやしないだろう。
これって、某有名ロープレにもあったな。ダー〇の神殿で転職して、レベル1になったあと、仲間を連れて最終ダンジョン前の雑魚敵を倒すと、レベルが一気に20くらい上がるやつ。
【剖検好きの理科ちゃん人形】もきっと、本来なら滅茶苦茶討伐には苦労するんだろうし、獲得経験値は莫大であるのは容易に想定できる。
ともあれ、これなら極めて容易に最終ランクに上昇させることができる。なにせ、最終層の雑魚敵の平均ステータスは、S-からS+。まさに強者のスーパーインフレ状態だ。それはレベルも上がるか。
「利用できるかもな」
これを利用して色々試行錯誤してみるか。種族を最大まで上げたら、また【進化の系統樹】により戻ればいいしな。
それに、都合よく選択肢に迷宮開発系の種族がある。今回の俺の目的はアイツらの修行場の作成だし、この系統を限界まで極めるのが吉だろうさ。
うんうん。面白くなってきたぞ。この手の成長系レベル上げは、俺の琴線を殊の外刺激する。
俺はこの際限のないレベル上げに没頭していった。
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