第13話 不思議系少女との交換契約
バベル最上階、神域玉座での出来事から時は少し遡る。
帝都内の子供の救援を行っているとき、ファルファルと名乗る若い女が、俺にアクセスしてきたんだ。
「するてぇと、このすこぶる胸糞の悪い茶番は、全てリリスを人質に逃げるための絶望王の時間稼ぎってわけか?」
《そ、そうなんだぞ》
頭の中に響く女の声に、俺は大きくため息を吐く。
危なかったな。もし、奴に逃げられたら、非常に面倒なことになっていたところだった。
第一、このゲームは運営側の主催だし、24時間を過ぎれば俺の負け。そうなれば、どんなペナルティーを受けるかわからんかった。
「感謝する。ありがと」
《べ、べ、別に気にしなくていんだからね》
そこでなぜ、デレる? 声色からいって、雪乃や銀二と近い年齢だし、俺にはまさに彼方の女。わかるはずもないか。
「絶望王の現在の居場所、わかるか? もちろん、危険なら無理はしなくても結構だ」
突然無言になる女。
「おい?」
《ほ、報酬が欲しいんだぞ》
報酬か。まあ、餓鬼に無茶させるんだしな。
「俺にできることならなんでもしてやるよ」
《な、な、なんでもぉ!!?》
変なところでやけに食いつく奴だな。
「ああ、俺にできることならな」
一応念は押しておく。
《ブホッ! 何でも! 何でもぉぉ!!》
頭の中に反響する興奮染みた声。もしかして、こいつって、マジでヤバい奴なんじゃなかろうか。少し不安になってきたぞ。
「YESととって言いんだな?」
《最初に報酬を決めておきたいぞ?》
何で疑問形なんだよ。わけのわからん女だ。
「いいぜ、好きなだけいいな」
《デ、デ、デートして欲しい。あと、お台場で手を繋いで、それでそれで、最後はキス――》
「ちょ、ちょっと待てぇ! お前、何を言ってるッ!?」
《だ、だめ?》
「いや、ダメというより、俺はオッサンだぞ?」
《知ってる……ぞ?》
だからなんで疑問形なんだよ。
「お前若いだろ。そういうのは若い連中同士でやれよ。俺には少々荷が重い」
《ダメなら教えない》
以降ぷっつり交信が途絶えてしまう。まったく、餓鬼かよ! ってきっと餓鬼だったな。会ってから説き伏せればいいか。
「わかった。なんでもするって言ったしな。デートでもなんでもするよ」
《な、なんでもぉ!?》
「いや、そうい意味じゃ――もういいや、そうだなんでもだ。だからいい子だから、教えてくれ」
《うん》
途端に素直になったな。
そして眼前に出るテロップ。これを開けってことか。それにしても、ファルファルの種族特性ってマジですごいのな。
俺がテロップに触れると、バベルの内部の立体的な全容が表示される。すごいな。これなら最短ルートで向かうことができそうだ。
《あ、あいつらの監視網、ダ、ダミーとすり替えておく。こ、これなら敵との戦闘も避けられると……思うんだぞ》
「お、おう。頼む」
ほへー、こいつあり得んくらい有能だな。でも、声色から言ってかなり若そうだったが、まさか高校生とか言わねぇよな。俺は青少年保護育成条例でとっ捕まるのだけは御免だぜ。
《旦那、今少しいいですかい?》
早速バベルに向かおうとすると、ダミ声が脳内に響く。
「鬼沼か、どうした?」
《これからいう事をよく聞いてくだせぇ》
いつになく真剣な声に、俺は鬼沼の言葉に耳を傾けたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
【読者様へのお願い】
未評価の方で、もし少しでも面白いとお感じなられましたら広告下側にある【☆☆☆☆☆】を押していただけるとメッチャ嬉しいです。(^^)/




