表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/202

第20話 二者激突


12月25日(土曜日)午前7時――新塾駅前

タイムリミットまで、1日と11時間。

 


洗い立てのような太陽の光がアスファルトを照らし、そのスクランブル交差点の中心には、黒で統一されたアメリカンヒーロー姿の大男が泰然(たいぜん)と佇んでいた。


「またせたな」

「うむ、心待ちにしていたのである」


バアルが胸の前で自らの両拳を叩きつけるだけで、竜巻のような爆風が吹き荒れ、信号機やら歩道灯を吹き飛ばし、ショーウインドーのガラスが粉々に砕け散る。


「殺し合う前に一ついいか?」

「ふむ、聞くのである」

「俺が勝ったら、俺の子分になれ」


 俺の台詞に暫しの沈黙。気まずい静寂の後、背後の悪魔1500名達から雑然たる声が小波のように広がっていく。


「おまえなぁ」


 十朱が呆れた果てたように深いため息を吐き、銀二が右の掌で顔を覆って首を左右に振る。雪乃などもう付き合い切れないとでもいうように肩を竦めていた。

バアルも、当初呆気にとられた様な顔で、俺を眺めていたが――。


「バハハハハハハハハハッーーーー!!」


 腹を抱えて笑いだす。そしてバアルは顔を凶悪にゆがめ、


「勝者は全てを手に入れる。貴様が勝てば子分でもなんでもなってやるのである! 

しかし、小僧、吾輩はそんなに安くはないぞっ!!」


 重心を低くし、左腕を前に置き、右肘を引き絞り、奴は空手の正拳突きのような仕草をとる。

俺も両拳を堅く握り、蜘蛛のように地面に身体を張りつかせた。

紅と黒、俺達の魔力が混じり合い、パチパチと大気が破裂し、次の瞬間、俺達は激突した。



 衝突する拳。そのたびに、大地は大きく抉れ、空へと巻き上がる。

 両者の激突から生じた衝撃波が、同心円状に吹き荒れ、周囲のすべてを灰燼と化していく。


――熱い! 熱い! 熱いッ! どうしょうもないくらい熱すぎるッ!!


 身体の芯から湧き出る高揚感。そして、全身を駆け巡る心地よい痛み。それが俺に闘志という熱を生み、さらなる闘争に己を狩りたてていく。

 バアルの右拳が俺の左頬にヒットし、頬骨がミシリと軋み音を上げる。俺は同時に重心を左に回転させて、右拳を奴の顎に突き上げる。

 ゴシュッという右拳に生じる肉をたち、骨を叩き折る感触。刹那、頭部に悪寒を感じ、左腕を掲げるも、組んだ奴の両手が脳天めがけて振り下ろされる。鈍い音とともに、俺の左腕は明後日の方へ折れ曲がる。

その壊れた左腕で奴の丸太のような右腕を掴むと、身体を独楽のように回転させて、遠心力たっぷりの右回し蹴りを奴にブチかます。

 俺の右脛は見事に奴の右腕にクリーンヒットし、凄まじい速度で奴は背後のビルへと飛び込んでいき、大爆発を引き起こす。

 俺の折れた左腕は、俺の【ラストバンパイア】により、一瞬にして修復される。

【ラストバンパイア】の種族特性により、俺への通常の攻撃は無効化される。だから、奴の拳はまさに万能属性の攻撃なんだと思う。


「お前いいよ! 最高だ!!」


俺の口から漏れ出す歓喜の言葉。思い返してみれば、本気で殴りあったのは久しぶりだったかもしれない。

 いくら殴っても死なない相手とガチンコのドツキ合い。それがこれほど楽しいものだと今日初めて知った。

 少なくとも、藤村秋人にはこんなバトルジャンキー的素養などなかった。というかそんな奴らを軽蔑してさえもいた。もしかしたら、これはアキトの中の芦屋道満がそうさせているのかもしれない。


「フジムラ・アキトォォォ!!」


 血まみれになりながらもバアルは天へと咆哮し、


「バアーーール!!!」


 俺も喉が潰れんばかりの大声を上げて、地面を全力で蹴る。



お読みいただきありがとうございます。



【読者様へのお願い】

 未評価の方、もし少しでも面白いとお感じなられましたら広告下側にある【☆☆☆☆☆】を押していただけると嬉しいです。(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜ですが、種族進化して最強へと至りますの表紙
・ダッシュエックス文庫様から11月25日に発売予定。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] めちゃくちゃ面白い [気になる点] バアーールが最初バアルの鳴き声かと思って笑っちゃった ちょっとダサいw ◥(ฅº꒳ºฅ)◤バァる
[一言] バルジャンキー……酔っ払いか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ