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第14話 追憶⑤ 芦屋道満

 

 死闘の末、俺の前には悪鬼化した八神不知火(やがみのしらぬい)が、瀕死の状態で仰向けに倒れている。

 奴は俺を睥睨し、


『おのれ! おのれ! おのれぇ、芦屋道満!!』


 怨嗟の声を上げる。


『だが、おそい! もう手遅れだぁっ! 既に絶望王様の最高位の眷属がこの地に――』


 鬱陶しく捲し立ている奴の脳天に俺は、霊力を乗せた霊刀を突き刺した。奴は踏み潰された蛙のごとき呻き声を上げて痙攣していたが、ボロボロの砂となって風化してしまう。


「一々、お前に指摘されんでもわかっているんだよ」


 眼前にいる珍妙な恰好をした怪物から今も湧き出る濃密で凶悪な妖気を一目見ればそんなことは一目瞭然だ。


「人の身で中々やるのであーる!」


 怪物は、両拳を腰に当てて威風堂々佇みながらも、感嘆の声を上げる。

 こいつがどんな悪鬼なのかはわからない。ただ一つ言えることは、こいつ相手にはどう足掻こうと勝機など一切、存在しないということ。

 

「心配いらぬのであーる。このゲートの解放率では、吾輩らの本来の力の万分の一も発揮することはできぬのであーる! よって、これは戦争となりえるのであーる」


 パチンと巨躯の男が指を鳴らすと、数体の悪鬼が姿を見せる。どれも俺達と同格の強さ。


(出鱈目すぎんだろ)


 奴の言葉が本当ならば、今の奴らの力はゴミムシ程度。なのに互角。馬鹿馬鹿しいほどの戦力差。まさに悪神の軍というやつか。

 もしかしたら、俺達だけならどうにか逃げ出すことができるのかもしれない。だが、そうなればこの都は火の海となる。そして、その先にあるのは――。

 ならば、考えるまでもないな。


「蹂躙するのであーーーーるッ!」

 

 奴の号令が飛び、俺達は激突した。



 完膚なきまでに負けた。オロチも、酒呑も失ったようだ。もう戦いは成立していない。

 だが、まだ道満にはやることがある。それは咲夜との約束。


「さあーて、お立合い、この芦屋道満(あしやどうまん)、人生最後の大秘術、どうぞじっくりとご覧あれ」


 優雅に一礼し印を結んでいく。この術は俺の魂に刻む最高位階の結界術。もちろんこの術は結界術の天才安部咲夜が作った法術であり、本来術師に大した反動はない。

 だが、誓ってもいい。これだけでは一度開いた門は閉じることはできない。ここで、術の本質とは等価交換。その等価となるものが大きいほど、より大きな贄が必要となるのだ。そしてその贄に相応しいものを俺は知っている。それは――俺の命。

 俺から濁流の様に溢れる紅の霊力。それらが夜空を絶え間なく覆っていく。

 そして――。


「咲夜、お前の仇打とうと気張ったんだが、どうやら俺では力不足のようだ。だから、せめてお前との約束は守るぜ」


 紅の霊力は無数の円となり、寄り集まり、そして一つの巨大な円となり、都上空に存在する門の上を回転していく。奴らも力を封じられた状態で閉じ込められるのは御免だろうし、奴らの世界に逃げ帰るだろうさ。


「悪鬼の親玉よぉ。あいつの命を奪って作ったそのありがたーい門の効力、奪わせてもらったぜ。だが、そう残念がるなよ。いつかその門が開き、お前らが駆逐される時が必ずくる」


既に指先は砂となり、それらは急速に広がっている。だが、俺達の愛する娘を守れたせいだろうか。驚くほど悔いはなかった。


「清明、璃夜(りよ)を頼むぞ」


 そうだな。最後に残った家族に、別れの挨拶をすべきだろう。


「小虎、最後まで俺の我儘、付き合ってくれてありがとよ」


 俺は今も涙で顔をぐしゃぐしゃに歪めている小虎に心の底からの感謝の言葉を述べたのだった。



             

お読みいただきありがとうございます。

短すぎるので、本日中にもう一話行きます。


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社畜ですが、種族進化して最強へと至りますの表紙
・ダッシュエックス文庫様から11月25日に発売予定。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[気になる点] いつも楽しく拝読させていただいています。 そのなか、これでは、せっかくの物語が締まらないので報告させていただきます。 「咲夜、お前の仇打とうと気張ったんだが、どうやら俺では役不足のよう…
[一言] 役不足でも役者不足でもない 力不足な 役不足 役割が簡単すぎる 役者不足 造語であり、用途としてはあっているが正しくはない
[気になる点] 役者不足では。
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