第4話 ランクアップ
12月26日(土曜日)午前11――湊区
タイムリミットまで、2日と8時間。
湊区は他の区以上の地獄だった。
ドラゴンにより、焼き尽くされ更地化した駅前。
人を張りつけにして射的の的にして遊んでいる黒装束。おまけに、人間を解体してその肉を取引しているクズ野郎もいた。まったく、どこまでも殺すことに罪悪感というのを薄れさせてくれる奴らだ。
ともあれ、この地区は7000もの兵隊がいる。それは事実だった。ただし、存在する竜の数は軽く三倍はいたから、予想以上に相当な時間と手間がかかってしまう。
当初は、今まで通り、俺が無力化し、十朱、銀二、雪乃にとどめを刺させていたが、あまりにも数が多くて時間がかかり過ぎる。加えて、十朱、銀二、雪乃は相当程度強くなったこともあり、十朱は原則単独行動、銀二と雪乃にチームを組ませて行動させている。
こうして、約半数を制圧したところで俺の種族がランクアップしたので、一度休憩をとるべく集まることにしたのだ。
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〇名前:藤村秋人
〇レベル(カタストロフィバンパイア):80
〇ステータス
・HP 400000
・MP 500000
・筋力 190004
・耐久力 105465
・俊敏性 100222
・魔力 180765
・耐魔力 179844
・運 12060
・成長率 ΛΠΨ
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目がちかちかする。数値が極端に上昇するようになってしまってから実感がわかないので、もう参考程度にしか扱っていない。
数値に変わる、もっとわかりやすい基準ってないもんかね。
そういや、解析系のアビリティもいくつか獲得していた。能力は千里眼よりショボイから、使用はしていなかったわけだが。
共に解析の能力を有する融合では解析の機能は残る。機能の劣化もまず考えられない。これはこのアビリティとスキル融合の本質のようなものだ。バアルとの戦闘も控えてるし、自己強化は可能な限りしておきたい。融合するとしよう。
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・神眼【Lv1/7】:広範囲にわたり、多くのものを多方面から解析、分析し得る神の眼。
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ほへー、千里眼君の後継者は、非常に優等生ですな。こんな全うなスキル、久々かもな。ほらさ、他は全ていかれてたしよ。
ステータスを開くが数字には変化がない。ただその脇に『文字表記』のテロップがある。押してみると――。
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〇名前:藤村秋人
〇レベル(カタストロフィバンパイア):80
〇ステータス
・HP:B ・MP:B+ ・筋力:B+
・耐久力:B- ・俊敏性:B- ・魔力:B+
・耐魔力:B+ ・運:F ・成長率:SSS
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いいんじゃないか。少なくともさっきの数字の羅列よりか幾分わかりやすい。今後はこれで表記するとしよう。
もっとも、俺達レベルの戦闘は基本、種族特性とスキルにより決定する。だから、ステータスがいくら高かろうが敗北の可能性は常に存在する。わかりやすくなったといって過信しすぎるのは危険だろう。参考程度にすべきだろうな。
次にスキル。レベル80となり、【大惨事】というスキルを得た。今までと違い名前だけはまともだったのだが、これは天変地異を引き起こすスキルだった。試験的にも使えるわけないよな。今の俺の状態で使用して隕石でも墜落したら、地球消滅しそうだし。ほら、俺の種族特性って攻撃って認識されたら発動しちまうからさ。
こんな物騒極まりないスキルは消費するに限る。隠遁系と融合できるようなので融合してみた。
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・大変身【Lv1/7】:最長で1時間、存在自体を自在に変化させることができる。ただし、人型の者に限り、平均ステータスが発動者の50分の1以上の者に変わることはできない。
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なんでも、人型ならば俺の意思一つで自在に変わることができるらしい。
当初、一ノ瀬の大怪盗のような能力だと思っていたわけだが、実際に試してみたらそんな甘いものでは断じてなかった。
気配や姿はもちろん、骨格、内臓、種族特性、ステータスのようなものまで模写した存在そのものに変えてしまう怪物スキル。制限時間があるのが唯一の救いか。こんなのもはや隠遁系じゃないと思うんだが……
とりあえず、これで残されたスキル化されていないアビリティは、防御系のみ。はやく獲得したいものである。
次が称号だ。新スキルと旧スキルである【殺戮真祖】が統合進化し、【終末の導き手】の称号へと変わる。
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称号――終末の導き手:終末をもたらす始祖の吸血鬼に贈られる称号。
攻撃威力と効果範囲が極地となり、称号ホルダーの敵意を込めた攻撃による負傷は、いかなる能力、術でも修復されることはない。ただし、修復不能の機能は称号ホルダーの意思で停止させることもできる。
・【食と才を極めし吸血王】の全特性を維持する。
・【殺戮真祖】の全特性を維持する。
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あーあ、嫌な予感は的中したな。遂に攻撃に修復無効の追加効果が付いた。
相変わらず、極端に攻撃特化した称号だが、修復機能についてコントロールが効くようになった。これは非常に大きい前進だ。軽く殴ったら即死亡なんて、マジで洒落にもならんレベルだしな。
捜査一課の捜査官であり、グロイものに耐性がある十朱と違い、雪乃と銀二はまだ若く純粋だ。ここの区域の惨状は俺でも反吐が出そうになるくらいなんだ。これ以上ダラダラ戦闘を続けるのは、雪乃や銀二にとって悪影響を及ぼしかねん。
悠長なことは言ってないで、とっとと、雨宮を無事保護して一気に終わらせるべきだな。
最後のランクアップだ。
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・ラストバンパイア(ランクS――不死種)
・始祖の吸血鬼(ランクS――不死種)
・悪魔を刈るもの(ランクS――不死種)
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おそらくこれが最後の進化。系統樹の頂点なんだと思う。現状では悪魔を刈るものを選択すべきなんだろうが、最後までバンパイアで占めるのも一興かもしれん。さてどうしようか。
俺は基本優柔不断だ。考えていても埒があかない。だったら、コイントスでもして決めることにしよう。
表が出たら、ラストバンパイア。裏が出たら、悪魔を刈るものだ。
ポケットの財布から百円玉を取り出し、指ではじく――。
近くのビルで食事をとった後、早速種族進化をすることにした。
「俺は今から種族進化だ。2~3時間、保護を頼む」
それだけ言うと仮眠室へ行きベッドに仰向けになると、決めた種族を念じる。直ぐに俺の意識は消失していく。
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