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台本風シリーズ

忘れられない、あの人(台本風変更版)

作者: 尚文産商堂

注意…実際は、状況を目で確認するため、文章は入れていないが、本作品するに当たり、その文章を[]で挿入してある。


凡例/

ナレーション…ナ/

人名…登場時以外最初の一文字|(但し、兄弟姉妹がいる場合は姓名各一文字)

(もし括弧がある場合は、その中を略して表示)/性別/


ナ/仮想暦1994年。二人の少女がいた。園側舞(えんがわまい)天木蒼子(あまきあおこ)。二人は、無二の親友であった。そう、この町にあの戦争が来るまでは…

[閑散とする住宅街。一戸建てがずっと道の両方にある。二人の少女が手をつないで歩いている]

園/でね?あのアニメ、とってもおもしろかったんだ〜。

天/へえ〜。そういえば、ここ最近、テレビとかでは、あの戦争の事しかやっていないからね。どこの放送局?

園/えっとね、北国中央放送。

天/それって、国営じゃない。そんなところでしているんだ。私も見よっと。

[少し歩くと、人がいた。小学生の集団登校らしい。彼女達は、そこに入った]

園/おはよー。汀君。

汀宇和(なぎさうわ)/男/ああ。おはよう。今日もいい天気だね。

天/そうだね。

汀/じゃあ、みんな集まったし、そろそろ行こうか。

[学校の通学路を歩いて行く。ガードレールによって歩道と隔たった対面通行の道を歩いて行く。道では、戦車や軍の車が走っていく]

汀/本当に戦争、始めちゃったんだね。止めて欲しかったのに…

天/しょうがないよ。先生も言っていたでしょ?この戦争に勝たないと、私達は必ず、野蛮な南側の人たちに殺されるって。それを防ぐための戦争だよ。

[道の所には軍が出しているポスターが張られている]

園/来たれ!勇敢なるわが国の兵士たちよ!昔は、こんなポスターなかったのにね。

汀/しょうがないよ。政府が考えている事なんて、自分たちには到底理解できないんだから。

[学校の校門が見えてくる。陣城小学校と書かれている。彼らは、校門をくぐり教室にたどり着く]


[教室には、黒板と机と椅子しかなかった。先生が入ってくる。みんなそれぞれの席に座る。ところどころ空席がある]

岸丸千倶(きしまるちぐ)/男/はい。ではー。みなさん、おはようございます。

一同/おはようございます。

岸/えー。皆さんは、南側の国と戦争が始まったのは知っているよね。今日は、この10分間の時間を利用して、ちょっとその事を話そうと思う。

[みんな、座りなおす。先生はそれを見て話しだす]

岸/まず、何でこんな戦争が起こった、そもそもの原因だけど、もともと、この国には、資源がない。そして、南側には資源がある。だが、その資源のほとんどは、未だに見つかっていないと言われている。1980年。君達が生まれる2年前だね。この年、南北経済協定と言われるものができた。北国の方は、とても経済力が強く、技術もあった。それを南側の資源開発のために使おうと言う事だった。しかし、南側はそれを軍事産業にも振り分けていた。そして、1982年、この協定は破棄された。一方的に南側が。北国の方は、資源が手に入らない事を悟り、南国は技術力を手に入れた。その後は、1985年、南側の不可侵条約締結。1987年、北国が開発した、人類最凶の兵器、原子爆弾の製造成功。1990年、南側の国9カ国が連合を形成し、南国連合と改称。同年、北側の国16カ国が、南国連合に敵対するため北国共和国条約発効。それからは、みんなの知っての通り、1993年、南北対話決裂。戦争開始。そして、今年だよ。緩やかな合従共和国として成立しているこの北国とは違って、南国連合は完全にひとつの国として成り立っている。いま、戦争は総力戦の感じがしている。今までなかったような事だ。全ての人が、ひとつになる必要がある。

[後ろから人が入ってきた。軍服を来ている。陸軍の人らしい]

長谷川由一(はせがわゆいち)/男/勉強熱心ですな。

岸/長谷川さん…どうしてここに?

長/少し通りががったからね。昔と全く変わってない。

岸/帰ってください。さもないと、警察を呼びますよ。

長/それは怖いな。では、退散するとするか。でも、これだけは憶えとけよ。私は必ずここに再び戻ってくる。

[教室の扉を閉めて出て行く。先生は胸をなでおろす]

岸/じゃあ、もう時間だから、授業始めるぞー。

一同/はーい。


[放課後。園・天・汀は、集まって帰ろうとしている。先生が近づく]

岸/お前たち、何やってるんだ?もうみんな帰ったぞ。

園/ああ、ごめんなさい。私たち、もう帰るんで…

[3人はそのまま学校から出て行く]


[学校の帰り。道端に落ちている銃弾の空薬莢(からやっきょう)を見つける]

園/あれ?これ何?

汀/ああ、これは、薬莢だな。

天/薬莢?なにそれ?

汀/薬莢と言うのは、銃に入れて使う火薬の容器の事。これは、陸軍のだね。この近くに、演習場があったはずだけど…

園/あ、あそこにもある。

[宝物を見つけたかのように、走る。さらに2発落ちていた。汀はそれを見つめてから言う]

汀/なあ、これ、俺達の宝物にしないか?

園/どういうこと?

汀/おれ達が、いま、ここで生きている記念品だ。名前、書いておこう。

[それぞれ一発の薬莢に3人の名前を書き込んだ]

天/私たちの、友情の印だね。

園/なくさないように、首からぶら下げておこうよ。

汀/お、それいいねえ。たしか…かばんの中に紐があったはずなんだが…

[かばんを下に置き、中身を探す]

汀/お、あった。あった。

[長い白い紐をかばんから出す]

汀/ちょっと、ごめんねっと。

[まず園の首に紐をかける]

汀/このぐらいでいいよね。

[はさみで紐を切り、その先に薬莢を絶対外れないように結び付ける]

汀/次は、天木の番だ。

[園にやったのと同じように切る]

汀/残りの紐は、うん。ちょうどいい長さだ。

[最後に自分の分を結びつける]

天/私たち、いつまでも友達でいようね。

園・汀/うん!


[翌日、学校にて]

樺西作井(かばにしさくい)/女/ひっく…、ひっく…

園/どうしたの?樺西さん。泣いて。

樺/私のお父さんが、戦死したって…昨日手紙が来たの。骨と一緒に。

[樺、泣き崩れる。そのとき、先生が入ってくる]

岸/実は、皆さんに言う事があります。

[みんな、目を合わして聞く]

岸/実は、私に、召集令状が届きました。明日、戦地に向けて旅立ちます。そこで今日は、皆さんとお別れをしたいと思います。皆さん、どうもこれまでありがとうございました。

[先生、みんなに一礼をする。誰かが、拍手をする。みんなも合わせて拍手をする。先生、目に涙をためて]

岸/ありがとう…

[一言言う。そして、普段どおりの授業をする]


[放課後、帰宅途中の3人組]

天/先生、とうとう行っちゃうんだね。

園/結構危ないね。私たちだって、いつ来るかどうか…

汀/いや、まだ大丈夫だと思う。自分達は、まだ12歳だぞ。

園/そうだね。

[園は上を見る]

園/あ、飛行機…

汀/これから、戦場に向かうんだね。

天/私たち、どうにかならないのかな…

[班の待ち合わせの場所に着く]

汀/じゃあ、また明日。

園/うん。

天/じゃあね。

ナ/これから起こる事を、まだ、彼女達は知らなかった。いや、予想は出来ただろうが、それを拒んでいたのだった。

[ナレーション中、ゆっくりと遠ざかっていく人影]


[翌日、学校にて。教室、新しい先生が入ってきた]

弓野千佳(ゆみのちか)/女/新しく転任した、弓野千佳と言います。前の先生とは、仲良しでした。みなさん、よろしくお願いします。

ナ/授業は、あまり変わらないテンポだった。

[放課後、帰宅途中にて]

園/まだ…みんなには話していないけど…

汀/どうした?舞。

天/何かあるんなら、今話してよ。

園/実は、私、疎開する事になったの。

汀/疎開、か。まだ、ここは大丈夫って言っていたけど、それでもするのか?

天/舞ちゃん、ね、まだ大丈夫だよ。だから、もうちょっと、ね。

[園は上を見る]

園/もう、決まっちゃった事なの。私一人では、どうにもならない…

[園、二人を見る]

園/だからね、私のこと、ずっと忘れないでね。私達が、もう会えないとなっても、私のこと、ずっと憶えといてね。

[汀は園を抱きしめる]

汀/誰が、忘れるものか。おれたちには、これがあるだろう?

[汀、放してから、首の紐を手繰り寄せる]

汀/これがある限り、おれ達は、どんなに距離が離れていたとしても、どんなに他の人が言っても、ずっと、ずっと、友達だからな。

[二人も、首から外す]

天/そうだよ。これがある限り、私達は、ずっと、友達でいられるもの。

園/汀君…蒼ちゃん…ありがとう。

[園、泣きそうになる。汀、ハンカチを出す]

汀/拭けよ、これで。泣いてるお前ほど、見たくないものはない。

天/ねえ、ひとつ。最後にひとつだけ、私たちだけの秘密を作ろう。

園/何?

天/私たち、次会うときは、戦争が終わってから、最初に会うときには、いつもの、登校班の待ち合わせ場所で、いつものように会う事にしよう。

汀/いいね。それ。そうしよう。

園/分かった。いつもの班の待ち合わせ場所だね。

[3人、歩き始める。待ち合わせ場所に着く]

汀/これから、ここのことを、"約束の場所"と言う事にしよう。

天/約束の場所…

汀/そう。それに、どんなに時間がかかったって、どんなに人が変わったって、おれたちには、これがある。

[汀、手のひらに、あの薬莢を取り出す。他の二人、同じようにする]

汀/おれ達は、これがある限り、ずっと、友情は続いていくんだ。たとえ、誰かが分からなくなっても、どんなに時間が過ぎようともな。

園/うん!

天/そうだね。

[3人、ゆびきりをする]

園・汀・天/ゆびきった!

ナ/そして、翌日、園側舞は、別の土地に行きました。しかし、彼女は悲しくありませんでした。なぜなら、約束の場所で、必ず会えると信じていたからです。


[1ヶ月後、汀の家]

天/ねえ、知ってる?もうすぐ、この辺りも戦線になるんだって。

汀/いや、それは知らなかったな。

汀美子(なぎさみこ)/女/あら、蒼子ちゃん。いらっしゃい。

天/おじゃましています。

汀/お母さん。ジュースってどこ?冷蔵庫の中見たけどなかったんだけど。

汀母/ああ、それならね、配給制になったの。

汀/配給制。本当に?

汀母/そうよ。それよりも、テレビ、つけてよ。

汀/分かった。

[立ち上がり、テレビをつける。通常ニュースはしていなかった]

神貝杯矛(しんかいはいほこ)/臨時ニュースをお伝えします。本日、南国連合は、本戦争始まって以来最初に国境を侵し始めました。本共和国元首は、南国連合側国境線より、50km以内の全ての住民に対し、避難命令を布告しました。同時に全国に対し、戒厳令を敷き、第1種戦時体制である事を布告しました。これは、どこで戦闘が起こってもおかしくない事を意味します。国民の皆さんは……。

[音声が途切れる。外から、飛行機の音と、空襲警報の音が聞こえる]

汀/あれは…軍用機だ!避難場所は?

汀母/いや、もう間に合わない。早く、必要なものだけ持って、地下室に…!

天/何を持って行けば?いや、それよりも、家に戻らないと。

[汀は天の手をつかみ]

汀/いや、今出て行ったら、飛行機に襲われる。それに、先生も言っていただろう?空襲警報が鳴ったら、その場所から動かない。それよりも、今は、地下に潜るべきだろう。

[天、少し考え、無言でうなずく。汀、一瞬で身の回りの物を片付け、地下室に入る]

ナ/こうして、平和だった村が、ひとつ、またひとつと、南国連合の支配下に入りました。


[同時刻、園]

園/ねえ、お父さん。

園側清司(えんがわせいじ)/どしたんだ?舞。

園/これでよかったの?私たち……

園父/他に出来るか?

[ラジオを付ける。さっきの放送をしていた。それを聞いて、周りから人が集まってくる]

園父/本当か…とうとう、戒厳令が布告された。

園/お父さん、戒厳令って、何?

園父/戒厳令と言うのは、全ての権限を軍が持つ事にしたと言う事なんだ。

園/だからどうしたの?

園父/だから、もう、この国に安全な場所はどこにもないと言う事なんだ。さらに、第1種戦時体制も布告されたらしい。

園/それはどういう事なの?

園父/この国の場合の第1種戦時体制と言うのは、全ての18歳以上の男性又は、意欲がある女性が、召集され、戦地に送られる事が有り得るという事なんだ。

長/その通り。

園/あれ?長谷川さん。どうしてこんなところに?

園父/長谷川さん?

[みんな立ち止まる。園父は肩の徽章(きしょう)を見る]

園父/長谷川…長谷川由一陸軍中将殿か!

園/あれ?お父さん、知り合い?

園父/知らないのか?長谷川由一陸軍中将、昔、この北国内で起こった内乱を、たった一人で鎮圧した伝説の人…

園/じゃあ、どうしてそんな人がここにいるの?

長/それはね、私は、元々、南側の人だったからだよ。

[周りの人はそれを聞いて、取り囲んだ]

長/おやおや、それだけで、こんな事になるのかい?

[ため息をつく]

長/まったく、この国は変わってしまった…私が、南側から逃げてきた時、北の人達はとてもやさしく接してくれた。しかし、今は、戦争が始まり、その事を言うと、こんな事になる。

園/長谷川さん…

長/そういえば、こんな話知っていますか?

園父/どんな話ですか?

長/昔の話ですが、ある川に、一匹だけ色が違う蛙がいたそうです。

[園父は反論しようとする]

長/ああ、何も話さないで下さい。それで、その蛙は、自分の事が分かっているのでしょうか。ただ、一匹だけ、色が違うと言う事を。私は、そんな蛙なんですよ。ただ、一匹だけ、毛色が違う。ただ、その蛙と違うのは、私は、自分で違うというのが分かっている。しかし、私は、向こう側の国からこちらに逃げてきた。ただ、それだけの事ですよ。そして、この国でのし上がってきた。しかし、この戦争は、私の理想ではなかった。だから、私はここでこうして、あなた達と逃げているのです。

園父/そうだったのですか、いや、とんだ失礼を…

長/いや、お気になさらずに、もう、なれた事なので…

[ゆっくりと歩き始める。空を見上げる]

長/私の友達もこの戦争で何人も星になっていきました。この戦争は、どちらの政府も大義があると明言しています。

[下を向く。ただ、前に歩いて行く。みんなはそれについていく]

長/そう、私もいずれ、彼らの所に行くでしょう。しかし、それにはまだ早い。まだやり残した事があるのです。

園/それって何?

長/まだ話せない。いまは、まだ…


[地下室に隠れた、汀達。敵はまだ見つけていないらしい。地下室に座りこむ]

天/ここから、どうやって出て行くの?

汀/それは、この上の人たちが、早くどこかに行かないと出れないよ。個々の部屋には十分な水と食料がある。しようと思えば、新しく開発された核兵器にも耐えられるように設計されている。大丈夫だよ。最低半年は暮らせる造りになっているからね。

汀母/それよりも、あの人が…

汀/お父さんの事?あの人なら、どうにかすると思うよ。何度死んでもそのたびに生き返ってきそうな人だからね。

天/私も、お父さんよりお母さんが心配…

汀母/そういえば、蒼ちゃんの家ってちょうど横だったわね。だったら、これが使えるかもしれない。

[トランシーバーとドリルを取り出す。トランシーバーで、周波数を合わせる]

汀母/蒼ちゃんところの周波数って、何?

天/えっと…たしか、333.333Hz。

汀/お母さん、どうしたの?

汀母/ちょうどとなりだから、もしかしたら、届くかもしれないと思って。それに、これって、どんなものも通すって言う事だったし。

[隣と交信する事が出来た]

汀母/あ、すいません。天木さんですか?

天木和子(あまきかずこ)/女/はい、そうですけど?あ、もしかして、汀君のお母さんですか?

汀母/そうです。汀の母です。いま、そちらの娘さんと一緒にいるんですけど、そちらに行ってもいいでしょうか?それと、この位置さえ教えてもらえるとうれしいんですが…

天母/いいですよ。そちらから見て、下方位003、家の方向は分かりますよね。

汀母/ありがとうございました。

[トランシーバーを片付け、ドリルを持つ。無論、消音モデルである]

汀母/ちょっとどいといてよ〜。

[すぐに壁に穴が開いた。そして、どんどん掘り進んでいった]


ナ/数分後、穴は貫通した。

汀母/どうもこんにちは。

天母/あら、どうも。こんな形で失礼。

天/お母さん。ただいま。

天母/お帰り。

[天母は、天を強く抱きしめる。その間に、汀は家の物資を運んできた。こちらの地下室の方が、5倍以上広かった]

汀/広いね。これ、何階建て?

天/この地下室は、3階建てになっていて、3階部分には、この周りの集会場も兼ねているの。だから、私のお母さんは、この村の村長もしているからね。汀/いや、それにしても広いね。とりあえず、物資は、運んできたから。まあ、その必要もなかったみたいだけど。

[母同士は、開いた穴の閉じ方の相談をしている。二人の方によってきた]

汀母/そういえば、向こうに、鉛板があったわね。それを持ってきてくれないかしら、ああ、二人でね。わたしたちは、その間、こちらの受け入れ準備をしておくから。3階に人が集まってくるはずだからね。

[子供達は、無言で、運んでいった]

天/ねえ、汀君。

汀/なんだ?天木、急にさ。

天/舞ちゃんが行ってから、もう一ヶ月たつね。

汀/そうだな。

[二人で、重い鉛板を持ち上げ運び出す]

天/あの、約束、憶えているよね。

汀/当たり前だろ?なにせ、おれ達は友達だからな。

天/舞ちゃんも憶えているかな…

汀/何当然の事聞いているんだ?あいつも忘れるわけないだろう?

天/そうだよね。ちゃんと、あの約束の場所で会うことを約束したもんね。

[鉛板を運び入れる]

天母/ああ、ありがとう二人とも。あとは、若い母親たちでしておくわ。あなた達は、2階の部屋にでも行っておきなさい。必要な時は、部屋まで行って、呼ぶから。

天・汀/はーい。


[地下2階の天の部屋に汀は居候させてもらうことにした]

汀/すごいな。いつもこんな部屋なんか使っているみたいだな。

天/私、この部屋に、男の子入れたの初めて。

汀/へえー。じゃあ、自分が最初の男子って言う事か。それを一応名誉な事だと受け取っておくよ。

天/そうしておいて。

[部屋には、必要な物が一通り揃っているようだった]

汀/いいな。こんな部屋もらえて。俺んちを見ただろう。あんな殺風景な部屋ひとつだけだよ。まあ、いいけどな。こんな時だ。何も贅沢を言ってはいけないんだろうけどね。

[天は部屋の天井を見つめながら、つぶやく]

天/ねえ、汀君。とても、暇だね。

汀/ああ、そうだな。

[天、汀を見て言う]

天/…ねえ、汀君。勉強、分かる?

汀/まあ、とりあえずはな。一通りは教えれるが?

天/良かった。実はね、私、何にも分からないの。学校の勉強が。

汀/で?

[目を輝かしている]

汀/もしかして、おれに教えて欲しいと?そういうことだな。

天/うん。そういう事なの。他の子に聞くのは、なんか、気が引けちゃって…

汀/しょうがないな。ほら、教科書貸してみ。どこが分からないの?

天/全部。

汀/はぁ?全部?それはないだろう。

天/だって、私、勉強できないもん。この前のテストだって、学年で下から10番以内に入っていたし…

[天、涙目になる]

汀/しょうがないなあ。じゃあ、最初から説明するから、よく聞いてな。

天/うん!

[机の横に椅子を持ってきて、汀と天は勉強会を開いた]


ナ/それから、1時間弱がたった。

天母/蒼子〜、宇和君〜。ちょっと、来てくれる〜?

天/あ、はーい。今行きまーす。

[首筋に、あの、薬莢の紐が見えた。汀は立ち上がり、天と一緒に行った。その道で]

汀/なあ、おまえ。本当にまだ付けていたんだな。

天/え?なんのこと?

汀/あの薬莢だよ。ほら、園と俺とお前で作ったやつ。

天/当たり前でしょう?

[天、歩きながら首の紐を手繰り寄せる。薬莢を手のひらで転がす]

天/だって、これがないと、私達、なんだか、友達でいられなくなっちゃうと思って…

汀/まあな、そういう気持ちも分かるけど、えでも、あの約束の場所は、いまも、ちゃんとあの場所にあるんだろうな。俺達の存在を忘れずに。

天/そうだとおもうよ。これからもずっと、この戦争が終わっても、私達がこの世界からいなくなっても、ずっと、ず〜っと。

[扉を開ける]

汀母/ああ、着いたのね。あのね、いま聞いた情報なんだけど。

天母/舞ちゃんの場所が分かったって。

天/本当!じゃあ、舞ちゃんはまだ生きてるんだね。

汀/で、どこにいるの?

天母/それが…この国の地理は勉強しているわよね。だったら分かると思うんだけど、完全に密着している南北国の国境から、ここはたったの35kmぐらいしか離れていないの。そして、回りは完全な海で、この大陸しかまだ確認されていない。で、彼女は、この村から、大体100km離れたところにある、北国共和国副首都のひとつ、ガンジデという名前の都市にいるの。

汀母/ただ、ひとつ問題があってね…

天/どんな?

天母/この避難室から出るためには、さらに下にある地下水脈に行く必要があるんだけど、その出口がどこかが分からないのよ。ただ、昔の言い伝えだと、この地下水脈は入り組んでいて、出口があちこちにあるって言われているの。で、相談なんだけど。

汀母/あなたたちだけで、その地下水脈を通って行くって言う事はできる?このままだと、南国の兵士にここが見つかる事は必定。だから、あなたたちだけでも逃げて欲しいの。

汀/じゃあ、お母さんは…

汀母/私達の心配はしなくてもいいの。それに、他の村民は既に出発しているの。さまざまな道を通る事によって、生存確率を出来るだけ高めようと思うの。無論、それまで、ここが持ちこたえるかどうか分からないけど…

天/分かった。私たち、やってみるよ。舞ちゃんの所に行けば、また3人で行動できるからね。

汀/そうだな。確かに蒼のいうとおりだ。おれもこいつと一緒に行きます。なんだか、一人じゃ頼りなさそうだから…

[そして、天の手をしっかりと握る。天は顔が赤くなる]

天/な、何握ってるのよ!

[慌てて振りほどく]

汀/ああ、ごめん…

天/もう…じゃあ、お母さん。準備、してくるね。

天母/ああ、10分以内に荷物をまとめてここに来なさいね。宇和君も。

汀/分かりました。

[9分後、荷物をまとめて3階に集まる]

汀・天/準備できました。

天母/よし、では、あの扉をくぐりなさい。そして、あなた達がこの道だと思う道を行きなさい。神のご加護がありますように…

汀母/最後に、宇和。

汀/何?母さん。

汀母/実は、これを渡してくれって、お父さんから頼まれているの。あなたが大事な人と出会い、そして、その人を守る時に、自分がどうしようもないと感じたら使いなさいって。使わないほうが、いいに決まってるけど…

[紙袋に入った物を受け取る。汀、リュックに入れ、それを背負う]

汀/分かった。ありがとうって伝えといて。じゃあ、行ってきます。

汀母/ちゃんと、帰ってくるのよ。

[暗い洞窟の中を二人は懐中電灯の明かりを頼りに歩いていく]


ナ/一方で、舞は…

園/ここが、この国の副首都なんだね。

園父/そうだよ。

長/この北国共和国は、それぞれ中では、大小合わせて11カ国ある。そのうちのひとつの首都にもなっているんだ。そして、この町もそう。人口、130万人。とても商業が盛んな町だよ。元々は…

ナ/これから、半時間、ずっとこの町について説明があった。しかし、退屈だろうから、省略させてもらいます。

園/人がいっぱいいる〜。

園父/南側から逃れた人がつく一番最初の都市にもなるからね。ここから、さらに北を目指す事になる。

園/蒼ちゃん達…生き延びているよね…

長/彼らが死ぬとは考えられないな。なにせ、君と約束したんだろう。前話してくれた。

園/そうだった。

[彼女は首から薬莢を取り出した]

園/この薬莢に託された夢と願い…もう、こんな世の中要らないよ。どうして、戦争なんか起こっちゃうの?

園父/それは、起こしたくて起こしたんじゃないんだ。起こってしまったものは、自分達下々の民は、受け入れるしかない。そんなもんなんだよ。

長/そして、それが嫌なら、自分がこの国の頂点の大統領になるしかない。そう言う事になってしまったんだよ。この国は。

園/……

[とぼとぼと歩いていた]


[二人、並んで地下水脈の端っこにある通路を歩いていた。]

汀/この地下水脈って、どこまで続いているんだ?

天/分からない。ただ、ずっと続いているみたいだけど…

汀/もう、何時間経った?

天/分からない…ただ分かっているのは、地下水脈っていうけど、水がほとんどないって言う事だね。小川と併走してずっと幅広い道が続いているし、もともと、ここは道じゃなかったのかな。昔の人が作った道を私達が歩いているの。きっと、この上は山なんだよ。

汀/まあ、そうかもしれないな。ただ、それよりも、一番いいのは、水の心配をしなくて済む事だね。

天/それだけでもすごく違うしね。それに、涼しいし。

[ふと、汀が立ち止まり、天の顔を見る]

汀/…そういえばさ、お前、好きな人とか…いるのか?

天/え?なに?突然さ。まあ、いないけど…それが、どうかしたの?

[天は立ち止まる。汀を振り向く]

汀/こんなところですまないと思っている、でも、本心をいうと…実は…お前の事が好きだ。これから、戦争が終わっても、ずっと、一緒にいてくれるか?

[天は、きょとんとした顔をして、微笑んだ]

天/あなたと一緒にいて、分かった事があるの。

汀/なんだ?

天/私も、汀君のことが、好きだって言うこと。

[二人は手をつなぐ。そのまま地下水脈を歩き続ける]

天/ねえ、この道、どこまで続いているの?

汀/分からない。ずっと、昔の人しかね。

[向こう側からほのかな光が見える]

天/ねえ、光が見えるよ。

汀/ああ、もうすぐ出口なんだ。

[天が汀を引っ張って走っていく。光が強くなっていく。唐突に視界が開ける]

天/わぁ〜。とってもきれい〜。

[汀、携帯を取り出す]

汀/いま、ここは、村から大体10km離れたところらしい。これから、さらに北を目指そう。舞と合流するんだ。

[汀、携帯を片付ける]

天/うん!

[北の方を目指して歩いていく二人。一方で、残った二人のお母さんは…]

汀母/いっちゃったみたいだね。

天母/どうしたの?

[上から声が聞こえる]

汀母/もう、戦争は嫌だと思って…私の主人だって、もしかしたら…

天母/それはないと思うわね。なにせ、私の主人と同じ人種だから。

汀母/そうよね。主人が死ぬ事なんかないわよね。

[地下室の扉が発破される]

天母/さて、準備、出来てる?

汀母/投降する?

天母/恥を忍んで、今は生き延びる事を考えましょう。

[南連合の兵士が入ってくる。彼女達に銃を突きつける。彼女らは両手を挙げる]

汀母・天母/投降します。


ナ/そして、ここから遥かにはなれた、北国共和国首都の大統領府にて…

欧街千船(おうがいちふね)(北国共和国大統領)/もう、侵略され始めたか…

吉田家光(よしだいえみつ)(産業省)/もう、国土は荒廃されつつあります。いま決断を下さねば、あなたは、この国を救えなかった大統領として、長く国民の記憶に残るでしょう。

長谷川浩一郎(はせがわこういちろう)(陸軍省大臣)/もう、時間がありません。大統領。どうか、南国連合に対し、完全蜂起を促しましょう。既に、私は向こうの陸軍省大臣と通じております。私が一言声をかければ、すぐにでも武装解除をし、南側連合は壊滅するでしょう。

清瀬欄玖(きよせらんく)(海軍省大臣)/そうなれば、私達も同時に蜂起しましょう。そうすれば、南側連合は赤子の手をひねるのと同じ事。すぐさま敗北するでしょう。

欧/では、これより決を取る。これより、北国としての姿勢方針を決定する。このまま南国連合と講和政策を取る者は?

[誰も手を挙げない]

欧/では、これより南進し、南国連合を瓦解させる事に賛成の者は?

[全ての者が手を挙げた]

欧/決まりだな。非常事態法により、全て私の指揮下に入っているはずだな。

河瀬輩甲(かわせはいこう)(法務省大臣)/そうです。

河瀬似得(かわせえせ)(財務省大臣)/しかし大統領。戦費の方はどのように調達するのでしょうか。それを決めていただかないと…

欧/そうか、それがあったか。しかし、今はそれどころではあるまい。浩一郎、今すぐ、一斉蜂起を起こさせるか?

長浩/御意のままに。

[携帯で連絡を取る]

欧/戦費については、事後承諾でもつけといたらいいだろう。さて、それよりも、これから、国家安全保障会議にそのまま移行する。で、今回の議題は、戦後についてだ。総務省にはそのような政策を考える部署があったはずだが?

河瀬舞妓(かわせまいこ)(総務省大臣)/はいそうです。現在、「戦後補償を考える」部によって、製作されておりますが、いま現在を持っても、完成されておりません。しかしながら、そのうちのいくつかの点については、既に決定されておりますので、この場を借りて、御説明させてもらいたいと思います。

[長浩、携帯を切りしまう]

長浩/決定されました。翌日、午前0時。南国連合陸軍、海軍及び空軍全ての兵士が一斉蜂起をする事を決定しました。いま、全ての戦闘を、翌日午前0時において、停止する事を要求されました。

欧/その話は事実ならば、今すぐ全ての兵士に伝える必要があるな。では、伝令を伝えてくれ。第一種暗号文、北国共和国大統領より、「ホンジツ、ヒヅケヘンコウゴ|(ゴゼン0ジ)ヨリ、セントウヲテイシス。ダイホンエイヨリ」以上だ。すぐに全ての隊に連絡をしてくれ。

長浩/了解しました。

[長浩は外に出て行った]

欧/さて、続けてくれ。

河舞/はい。戦後補償と言う事については、戦死者、現在10万人に達しております。戦争難民、現在100万人弱になっています。さらに、戦争により田畑が多数放棄されております。そして、それらの補償もする必要があります。戦死者の遺族及び戦争難民の新たなる補償が必要になる事は必要でしょう。そのために必要な金額は、約100億はいるでしょう。

欧/100億か…財務省からは?

河似/100億になると、金額の桁が違いますからね。いま、戦費の問題もあります。戦費として、現在300億既に使っています。さらに、100億も使うとすると、計400億、税をあげるとしても、国内総資産が20兆に過ぎない我が国は、400億もの戦費を調達するのは難しいと思います。

欧/そうか…400億となるか…

河似/そうです。400億もの予算、事前承認無しに使う事は出来ましたか?

河舞/いま、情報が来ました。第1種暗号文、大統領宛です。「リョウカイシタ。アスゴゼン0ジセントウテイシス。リクグンソウデンレイブタイタイチョウ」陸軍の方は全て伝わったようです。

清/海軍の方も、届きました。第1種暗号通信、大統領宛です。「スベテハ、シジドオリニイタシマス。ゴゼンレイジ、サクセンジッコウ。カイグンソウデンレイブタイタイチョウ」海軍側も大丈夫です。

欧/空軍は?

台鯨渇木(たいげいかつき)(空軍省大臣)/こちらもいま、伝令待ちです。

欧/そうか。では、戦後の南国連合についての話をしようか…


[そして、南国連合首脳部は]

紅巾毎認(こうきんまいにん)(南国連合内閣総理大臣兼陸軍省大臣兼空軍省大臣兼海軍省大臣)/どうなっているんだ?いま、軍の進行が全く進んでいないそうじゃないか。

内詰刻延(うちづめこくえん)(南国連合各軍参謀長官兼内務省大臣兼財務省大臣)/敵国の反撃が思ったよりも激しく、進行が食い止められているのです。

紅/では、明日、午前6時をもって、全兵力を前線に投入する。全軍に伝達しといてくれ。他の大臣達も了解したな。

全員/了解しました。


[内は外に出た。そして、補佐官を呼びつけた]

昴聡(すばるさとし)(内詰首席補佐官)/いかがしましたか?

内/あの作戦はどうなっている?

昴/万事抜かりありません。全て順調に行っています。

内/では、作戦どおりに、午前0時、この建物を占領する。

昴/御意のままに。


[午前零時、1分前]

欧/いよいよか。

河/はい。まもなく日が変わります。

河舞/すでに、停戦調停は済んでおります。あとは、日が変わると同時に、全てのラジオを午前6時まで使用不能とします。ただし、公共放送においては、戦闘終了の大統領宣言を発表し続けます。その宣言をもって、本戦争は休戦状態に入る事になっております。同時に南国連合内閣総理大臣を、革命により失脚させ、その後、完全に戦争終結の条約を公布します。

欧/あと30秒。この緊張が、嫌いなんだな。

河舞/すでに、全軍には、戦闘終了する旨を伝えております。あとは、時間がたつのを待つばかり…


[園達は]

園/ああ、もうすぐ、戦争が終わるんだね。

園父/そうだ。あと1分後で、戦争が終わる。

長/この戦争は長かった…相当なものだった…

園/長谷川さん。どうしたんですか?

長/いや…なんでもない…

園父/あと、30秒後だ。


[汀達は]

汀/携帯によると、あと1分後、この戦争が終わって、南国連合で革命が起こるらしい。

天/本当?じゃあ、またあの村に帰れるんだね?

汀/ああ。そうらしい。ただ、南国連合は瓦解し、そして、そのまま、南北を統合して、それで、おしまい。

天/じゃあ、これから、帰りましょうか

[二人で、手をつないで道を帰る]


[午前0時。それぞれの場所にて]

[南国連合内閣府]

[廊下から騒がしい声が聞こえる]

紅/どうした!何があったんだ!

[内が内閣室に入ってくる]

内/紅巾総理大臣。あなたを、罷免させていただきます。すでに、議会は承認されております。

[紅、驚く]

紅/なっ。どういう事だ!私はこの国の、全権を持っているんだぞ!

内/既に軍は反乱を起こし、あなたの首を狙っています。そして、あなたは、本戦争の張本人として、訴追される事になっております。

紅/おいっ!衛兵!この狼藉者(ろうぜきもの)を追い出せ!そして、晒し首にしろ!おい、聞いているのか!

[周りにいる4人の衛兵はただ顔を見合わせるだけだった]

内/無駄ですよ。結局の所、あなたは、既に訴追され、全ての権限は剥奪されております。すでに、私が現在の内閣総理大臣となっておるのです。おい。衛兵。こいつを閉じ込めておけ。自殺出来ないようにしてからな。

昴/御意。

[紅の両脇を抱え、外に引きずり出す。内、内閣執務室を見回し言う]

内/さて、これから、自分はどうしようかな?


[北国共和国大統領府にて]

欧/声明を発表する事になっていたな。

河舞/既に発表されています。国営ラジオ放送を聞けば、あなたが前に録音していた勝利宣言が発表されているはずです。午前6時を持って、全国の戒厳令を解除し、第1種戦時体制も同時に解除します。さらに、時間をかけて、南北両国を合併し、統一政府を築きます。今の所、そこまで決まっています。

欧/では、そのための宣言を製作する事にしよう。これをもって、本戦争臨時内閣を解散し、通常内閣に組閣しなおす事とする。ただし、全員そのまま据え置きとする。以上だ。解散しておいてくれ。

[欧、奥の部屋にこもる]


[園達にて]

園/午前零時。戦争が終わったね。

園父/ラジオで発表しているぞ。

ラジオ音声|(欧の勝利宣言)/本日、午前0時をもち、本南北戦争を終結する。以後、一切の戦闘行為を停止し、違反者については、厳重なる処罰をするものとする。ただし、午前6時まで戒厳令を継続とし、第1種戦時体制も同様とする。繰り返す、本日、午前0時をもち、本南北戦争を…

[ラジオを切る。前を向く]

園父/さてと、村に帰るとするか。あの村とは1ヶ月近く見てないからな。

園/うん。


[汀達にて]

ラジオ/本日、午前0時をもち……

汀/終わったのか…何もかも…

天/そうだね。村に帰ろうよ。

汀/そうだな。まずは、いまここは、えっと…

[携帯を取り出す]

汀/村から30km離れているみたいだ。ここから、少し西に向かうと道があるはずだ。その道を通って行けば、早くつける。

天/じゃあ、行こうよ。舞ちゃんも待っているかもしれないし。

汀/そうだな。


[1ヶ月後]

欧/さてと、今日はいい気持ちだな。

河舞/そうでしょうとも。2年ぶりに両国首脳が会談するのですから。

欧/もうすぐつくと聞いていたのだが。

河舞/あと、3分で着陸するそうです。それまでのご辛抱です。

欧/あの戦争から1ヶ月か。国境から50km以内の地域も、全て安全が確認されたらしいな。

河舞/そうです。本日より、学校が始まるそうです。

欧/今日からか。思えば、この戦乱の季節を生きてきた者達には、とてつもない事をしてきたんだな。

河舞/そうとは言っても、いまのあなたがいるのは、先の戦争で生き勝ったおかげ。そして、この南北対話において、両国合併の話が出て来るでしょう。

欧/そうだな。お、来たみたいだ。

[飛行機に向かって歩いて行く欧]

河舞/あの人、こんなに大きい背中だったかしら。

欧/ん?なんか言ったか?

河舞/いいえ、何も言っておりません。空耳でしょう。

欧/そうか。

[飛行機からは、次々と南側の新閣僚達が降り立っていた]


[汀達]

園/今日から久しぶりの学校だね。

天/そうそう。私達が久し振りに出会った時の事、憶えてる?

園/もちろんよ。忘れるわけないでしょう?なにせ、1ヵ月半ぶりだったからね。汀君も、蒼ちゃんも、約束の場所で待っていてくれていたもんね。

[首の所から、薬莢を取り出す]

園/きっと、この薬莢があったから、ここまで来れたんだと思う。生きていく必要があったからこそ、私達はここまで生きて来れたんだと思う。

天/そうだね。南国連合が崩壊して、お母さん達が解放されたのと同じ時に、私達、出会えたものね。

[いつもの場所で、汀が彼女らを見つける]

汀/遅いぞ。

天/ごめん、ごめん。

園/じゃあ、行こうか。

ナ/戦争も終わり、彼女達は、また、新しい明日へ。友情を育んでいくでしょう。


(以下全てナレーション)製作は新正美高等学校1年1組でした。


[自分の名前が出る時に、舞台の袖から出てくる]

キャスト。

園側舞…井上加奈子。

天木蒼子…弧川利恵子。

汀宇和…手谷一郎。

岸丸千倶…金田今籐。

長谷川由一…成和也好。

樺西作井…媛洲歓喜。

欧街千船…焼森乾。

長谷川浩一郎…宮野瑛久郎。

清瀬欄玖…野志捌甘苦楼。

河瀬輩甲…靄野野原。

河瀬似得…万年忍。

河瀬舞妓…岡島衿子。

紅巾毎認…勤背加子。

内詰刻延…夏目科涙。

昴実聡…西紀子助。

ナレーション及びラジオ音声…騎虎諒太郎。

南国連合衛兵1…蘭近先達。

衛兵2…小埜陽子。

衛兵3…麻井正平。

衛兵4…蛍池香子。

北国共和国海軍総伝令隊長…守宮美弥子。

同国陸軍総伝令隊長…館沢花音。

同国空軍総伝令隊長…宇川章吉。

南国連合新海軍省大臣…伊口康平。

同国新空軍省大臣…江西沢東。

同国新陸軍省大臣…竿灯佐和子。

同国新各軍参謀長官…菊川憲太。

同国新内務省大臣…九対九太郎。

同国新財務省大臣…兼好国重。

音楽制作…興国空/沢口早苗/師走正之助/諏訪来瑛。

効果音制作…年台俊三/東南有子/智呂恭介/草成奈留子。

雑用・事務一般…イフニ・スタディン/エア・アダム/口貝幸之助。

総制作指揮・監督…嘉永徳鋭/嘉永清水。

原作…尚文産商堂「忘れられない、あの人」。

制作・著作…清正美高等学校第300回生1年1組。


これで、1年1組、自主作成映画、「忘れられない、あの人」を終わります。みなさん、見ていただいてありがとうございました。

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