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イショクバンとやらを作ろうじゃないか

「え、ジュリアも、気づいたの?」

「え?」

「あ、いや、その…」

口ごもる親友に、重ねて問いかける。

「ジュリアも、って言ったよね。もしかしてユウリ、私がこの話の“ヒロイン”だってこと、気づいていたの?」

「……、私が、“悪役”だってこともね」

はあ、とため息をつきながら、ユウリは言った。

「ジュリアが転校してきた時だったかな。あ、私悪役ポジションなんだって気づいちゃったのね。で、どうしたものかなぁと思っていたのだけど」

「うん…」

だから、仲良くしてくれたのだろうか、とジュリアは内心悲しくなったが、ユウリの話が続きそうなので顔には出さずに相槌をうつ。

「ジュリアったらめちゃくちゃ面白い上に、自分で恋愛フラグ折りまくってるんだもの、正直、一緒にいて物凄く楽しかった」

「え」

「始めはね、そりゃあ下心もあったのよ?ジュリアはヒロインだろうから、仲良くしておけば悪役破滅エンドを回避できるんじゃないかって。でもね、それ関係なく、ジュリアと一緒にいるって最ッ高に楽しくて、ジュリア誰ともフラグも立ってないし、このままなにもなく卒業して二人でずっと笑っていられるんじゃないかなーって思ってたんだけど。…何にもしてないのにイベントって起こるものね」

彼女のいうイベント、はおそらくさっきの生徒会の暴走のことだと、ジュリアもすぐに理解する。

私たちの生きている世界がなにかしらの“物語”で、ジュリアが“ヒロイン”なのであれば、そりゃあ誰かとくっつかないと話が終わらないのである。なんとかしようとこの世界がしたのか、その結果があの意味のわからない断罪イベントだ。

「ねえ、ジュリア、貴方はどこまで思い出しているの?」

「え?思い出す?気づくだけじゃなくて?」

「ええと、あのね、ここって、私のもう一つの記憶によると、『乙女ゲーム』と呼ばれるゲームの世界なのよ」

ユウリが話してくれることをまとめると、まず、彼女の中には二つの記憶があるらしい。ひとつは今の彼女『ユウリ=アルティガスト』として生きてきた17年の記憶。もうひとつは、『松山ななみ』として『日本』という国で生まれ育った23年の記憶。このななみの記憶の中で、やっていたのが『魔法学院逆ハードリーム』という頭わるそうなタイトルのゲームらしい。そして、その頭わるそうなゲームの世界が、私たちが生きているこの世界と酷似しているということだ。

そのゲームの主人公のデフォルト名(なんでも、好きな名前に変えて遊べるゲームらしい)が『ジュリア=フォルムナート』。ジュリアの名前に相違ない。

到底信じられないような話だが、ジュリアはもう自分がヒロインであることを確信していたので、なるほどな、という感想しか持たなかった。

「私も少しずつ思い出していったから、もしかしたらジュリアももう一つの記憶が出てくるかも?」

「そっか。ねえユウ、その乙女ゲームっていうのは、貴方の話によると複数人恋人候補がいて、そのなかの一人とくっつくのよね。誰ともくっつかない最後ってないの?」

 ユウリは天井を見ながらえーと、と考える。

「多分なかったと思うよ。移植版とか出てたらわかんないけど」

「イショク?」

「公式が同じゲームを話数とか増やしてもう一回出す、みたいなシステムかな。全く同じじゃ売れないでしょ?だから、人気のあった脇役とくっつく話とかみんなハッピー大団円、みたいな話が増えることもあって」

「あ、じゃあ、そのイショクバンってのを作っちゃおうか!」

「は?!」

 ジュリアはいいこと思いついた!とパンと手を叩く。

「どういうこと?」

「だから、私が誰ともくっつかず、ユウと笑顔で卒業するストーリーを作ってしまえばいいんじゃないかなって。公式?でもそういうことが起きるわけでしょ?なら中にいるストーリーを知っている主人公たちが話書き換えてもいいと思うのよ」

「そんな無茶苦茶な」

 苦笑するユウリに、ジュリアはぷう、と頬を膨らませる。

「どっちにしろ、私はフラグ折りまくっているんでしょ?ならもともと私はそのゲーム作った人が想定しているヒロインじゃないのよ。この世界にゲーム知識を持って生まれてきた存在がいるってことについては、どういう力が働いているのかは謎だけど。少なくとも私達は生身だし、生きてる。好き勝手に生きてもいいじゃない」

「まあ、それもそうかな…?」

「でしょ?今日のあのイベントを鑑みるに多分これから先もああいう無茶振りがきそうだけど、ユウリは大体のストーリー覚えているのよね?」

「え?まあ、それなりにやり込んだから」

「なら、その記憶を頼りに、新しいエンディングを迎えてやろうじゃないの!ね!」

「…ぷっ、あはははっ。ジュリア格好いいー!!ゲームのジュリアはいわゆる守られ主人公だったのに」

「親友を守るのもヒロインの仕事よ仕事!…いや、仕事っていったら言い方が良くないな、私の意思というか、ええと」

 口籠るジュリアにユウリは笑う。

「大丈夫、伝わってるよ。ありがとう。そうね、一緒に親友エンディング、つくっちゃおう!」

「その意気その意気!がんばるぞ、おー!」

こうして、ジュリアとユウリは、2人が2人のまま幸せになるエンディングを目指して、同盟を組んだのだった。

読んでくださってありがとうございます!

まちまちな更新頻度ではありますが、のんびりお付き合いいただけると幸いです。

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