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障壁魔法師の受難  作者: シロナガスクジラ
2/11

1.異世界転移とお約束

しばらくは一日一話ペースで投稿したいと思います。



それは何の変哲もない日の出来事だった。

俺はいつも通りに教室の扉を開けて、中へ入る。


ーーガラララッ


扉の開く音と共に、一斉にクラスメイト達は俺の方へ顔を向ける。

先ほどまであれほど騒がしかった教室が一瞬で静まり返る。

……いつものことだ。

俺は溜息を吐きながらも窓側の一番後ろの席に着く。

先日席替えをして手に入れたこの席は、俺としては結構ベストなポジションであると思っている。

ここなら授業中寝ててもほとんどばれないし(ばれても教師はビビって俺に注意なんかしないが……)何よりほとんど人と接しなくていいというのが大きい。

前回の席はちょうど教室の真ん中あたりであったため、相当辛かった。

中心に陣取っているため、クラスメイトの皆は俺を警戒して廊下で話すようにしていた。

……酷い有様だった。

俺が教室に一人ポツンと取り残され、後の皆は全員廊下で楽しくおしゃべりをしているのだから……。

疎外感が半端なものではなかった。

だが、今回は教室の端っこということもあり、クラスメイト達も教室では話すようになっている。

まぁ、気が弱いやつはやはり廊下で……というか他クラスで話すのだが……。

さて、鬱になる話は置いておいて、とりあえず日課である新刊のラノベの読破でもしようかな、と思いリュックのチャックに手を伸ばしたところで、校内のチャイムが鳴り響いた。

クラスメイト達は一斉に席に着き、先生が教卓に着くのを待った。

そしてーーー


「「「……は?」」」


次の瞬間には俺たちは教室ではなく、高級そうな神殿の一室に転移していた。





クラスメイト達が騒ぎ始める。

中にはラノベでこういう展開をよく知っているのか、落ち着き払っている者もいるが、大抵の人は状況の変化についていけてないようだ。


ーーパン、パンッ


そんな中、クラスメイト達の混乱が大きくなるよりも早く、二回の拍手で混乱を沈めた者がいた。

クラスの中心的人物である、比島ひじま賢治けんじである。


「皆、落ち着いて!むやみに騒ぎ立てても意味がない!とりあえず、皆で協力してここを脱出することを前提に、辺りを調べてみよう!……東條くんもそれでいいかな?」


少し、控えめな感じに協力してほしい、と比島から頼まれる。

別に俺は特にしたいことがあるわけではないので、気にしなくていいのだが……。

とりあえず、肯定の意を込めて首を縦に振る。

俺の気持ちが通じたのか、比島は少しホッとした顔を浮かべる。


「それじゃあーーー」


比島が指示を出そうとしたところで、この部屋の扉が不意に開かれる。

扉の向こうには西洋風の甲冑を身につけている者が多く存在しており、その甲冑軍団とは様相が違う者が四人、立っていた。

二人はローブ姿の前時代的ないかにも魔法使いみたいな格好の者と、残り二人は質素ながらも綺麗な装飾に身を包んだいかにもお偉いさんであることがわかる初老の男と、物語のお姫様のような姿をした少女が立っていた。


「ようこそおいでくださいました、異界の勇者様方」


……どうやら、おきまりのパターンのようだ。


「ーーーーーという理由が……。申し訳ありません。本来なら異界の地である勇者様方には関係のない話でございます。ですが、どうか私達人間国の希望になっていただけませんか?」


内容はまあ、ありきたりな魔族と人間との戦争の話。

最初は騒がしかったクラスメイト達も、話を聞くうちにどんどん姫様(実際にこの国のお姫様だったらしい)に同情していき、今では完全にこの国を助ける方向性に話が進んでいる。

そんなクラスメイト達の様子に、後ろで控えていた初老の男(宰相だと自ら名乗っていた)が笑みを浮かべているのを俺は確かに見た。

どうやらこの国は勇者を使って何か良からぬことを考えているようだが……。

まぁ、そこらへんはクラスメイト達に任せるとしよう。

最悪、クラスメイト達が死んでも俺に害がなければそれで問題ない。

なんとかしてこの国から抜け出すことを考えるべきだろう。

そうこうしているうちに、話は勇者の性能を調べることに移ったようだ。


「この水晶は、その人の魔法と魔法形態を調べてくれるものです。あ、魔法とはーーー」


相変わらず後ろで付き従っているローブたちと宰相、甲冑軍団の方々は一言も話すことをしない。

接客は全てお姫様に一任しているのだろうか?

いや、そうなんだろう。

実際、初老のおっさんとかローブ姿の怪しい出で立ちの者に話しかけられるよりも、お姫様のような可愛い女の子話しかけられた方が、クラスメイトたちも気が乗るというものだ。

妙な気遣いに感心しながらも、次々と水晶玉に手を乗せ一喜一憂している中、比島の番になると、どよめきが起こった。


「おお!」「これは……!」「ゆ、勇者……!」


どうやら比島が勇者だったようだ。

俺も勇者の魔法というのがどんなものかを知りたかったので、クラスメイトたちの人混みをかき分けて(正確には皆がどいてくれた)水晶玉を見た。



ーーーーーー


名前 ケンジ・ヒジマ


魔法 光魔法


魔法形態 万能型


魔力量 300/300


熟練度 G


ーーーーーー



どうやら光魔法を持つ者が例年の勇者らしく、光魔法だった比島が勇者だと判断されたようだ。

……なるほど。

話をほとんど聞いていなかったが、光魔法というのはとてもレアなものであるのだろう。

それにしても人気者の比島が勇者だなんてありきたりすぎるだろう。

そう思っていると、姫様が俺に話しかけてきた。


「次は、マモル様の番です。御手を拝借させていただきます」

「……」


お姫様はほっそりとした白い手で俺の右手を掴み、水晶玉に当てる。

その時ににっこりと相手に微笑みかけるのを忘れない。

先ほどクラスの男子たちが魔法を調べる度に色めき立っていた理由がなんとなくわかった。

だが、生憎と俺は人の愛想笑いには見慣れているので、特に何も感じることはない。

あくまで事務的にその水晶玉に手を乗せる。

お姫様は今までとは違う態度に少し驚きをあらわにするが、それよりもさらに鑑定結果に驚いたようだ。



ーーーーーー


名前 マモル・トウジョウ


魔法 障壁魔法


魔法形態 防御型


魔力量 150/150


熟練度 G


ーーーーーー


できれば普通の魔法が良いな、なんて思った俺だが……。

お姫様と後ろでたむろしている宰相たちの反応を見て確信する。


「申し訳ありません……。おそらく、マモル様の魔法はほとんど使い物にならない、ゴミ魔法でございます……」

「……はぁ」


……それもそうだ。

ここまでテンプレだったのだ。

俺みたいなクラスの爪弾き者がクラスの落ちこぼれになることもお約束テンプレと言えるだろう。

これから来るだろう、いじめの日々を想像して俺は憂鬱を感じざるを得ないのであった。




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