プロローグ.東條真守のこれまでとこれから
クラス転移二つ目……。
ちょっともう一つの作品が手詰まりな状態になっているので、ちょっとした息抜きに書いてみました。
よろしければ休憩中にでも読んでいただけると幸いです。
最初はちょっと暗いですが、徐々に明るくするつもりです。
プロローグ.東條真守のこれまでとこれから
小学三年生の頃だったと思う。
俺は何の特撮にはまったのか、正義のヒーローごっこのようなものをし始めた。
その正義のヒーローごっこは、子供のようなお遊びのごっこではなく、実際に小学校でいじめをしていた連中へ直接攻撃していたような気がする。
なにが楽しかったのか、あの時の俺は確かにその行為に満足していた。
ただ、周囲からの反応は酷いものだった。
正義のヒーロー、と言っても、内容はいじめっ子を狙ったいじめと言った方が適切だったし、いじめっ子連中はもちろんのこと、普通のやつらでさえ俺のことをヤンキーでも見るかのように恐れていた。
そして、そんな周囲の反応に気付かず三年間正義のヒーローごっこをやり通した俺は、やっと満足したのか中学に入ると同時になりをひそめることになる。
中学時代は、最初の頃は恐れられていたが、次第にクラスなどの係活動を通して人と接していくうちに、俺がそんなに怖いやつではないとわかり、友達もそれなりに増えていった。
まぁ、と言っても一、二年までの話だけどな……。
三年生のある日、アーケード街の裏路地で不良達に絡まれている女子中学生を見かけた。
当時の俺は正義のヒーローごっこなんてものをする気は湧かなかったものも、それでも人一倍正義感は強かったように思う。
そのため、絡まれている女子中学生を見過ごすことができず、不良達に喧嘩を売るような形で助けに入ってしまった。
今思うと……いや、その時でさえ、あれは悪手だったと思う。
殴りかかった不良の中の一人に、どうやらヤ○ザと繋がっている家系のやつがいたらしく、上手い感じに裁判に持ってかれてしまった。
こちらは被害者の女子中学生がいるし、大丈夫かなと思ったのだが、どんな手品を使ったのか、結果は俺の敗訴で傷害罪という判決が出てしまった。
当時中学生だった俺は、年齢のおかげで牢屋行きということにはならずに済んだが、それでも人を傷つけたことには変わらないということで、俺はまあまあ高めの賠償金を払うことになった。
そんな裁判があった後から俺には乱暴者のレッテルが貼られ、周囲の人々にまた恐れられるようになる。
高校生になると、バイトでもして小遣いを稼ぎたかったがこんな俺を入れてくれるところなど存在するはずもなく、まだ中学に入ったばかりの妹共に親から小遣いを貰うことになっていた。
あの時ほど、俺が自身の情けなさを嘆いたことはないかもしれない。
妹は、器の小さい俺とは違い、小遣い少なくなっているのも気にせずお金が貰えたことを喜んでいた。
その頃の俺にとって、家族というものはかなりかけがえのない存在だった。
色んなやつらから恐れられ、避けられていても俺が不登校にならずに済んだのは、家族のおかげと言っても過言ではないだろう。
そんな人を避けては避けられる日々を過ごしていた中、ある一通の電話がさらに俺をどん底の地獄へと叩き落とした。
「東條家の長男、東條真守さんですね?落ち着いて聞いてください。……あなたのご家族は、先ほどの大規模なガソリンスタンドの爆発に巻き込まれ……」
「ーーー全員、お亡くなりになりました」
ーーツーツー、ツー
俺の世界が、受話器の音と共に崩れ落ちていくのを、俺は確かに感じとっていた。
◆
ーーー二年後
「マモル・トウジョウさん……。あなたを近衛騎士団団長、テトラ・バードを殺害した現行犯として、流刑に処します。……何か言い残したことはありますか?」
「……じゃあ、一つだけ。俺はどこに流されるんだ?」
「ーーー魔国です」
「そうか……」
魔国は人族が暮らすにはあまりにも魔素が濃く、人族が魔国で生きられるのは精々半日と言ったところだろう。
つまり……。
ーーー事実上の死刑宣告だった。