戦乙女の安息地
題材が題材なので運営さんに怒られたら削除するかもしれません……
ああ……、美味い酒だ。
こんな美味い酒を飲んじまうと、つい余計なことまで喋っちまいそうだよ。
しっかし、こんなもんを俺に持ってくるなんてどういう企みだい?
いや、疑ったり怪しんだりするわけじゃないんだが、見返りもなくそんなことをするやつなんて普通いないだろ?
だからさ。
なるほど?
なんで俺がこの店を始めたのかを聞きたいと。
そうだな、この店は冒険者たちの第二の人生を円滑にするために冒険者ギルドの協力の下……。
やめようか。あんただってそんな話を聞きに来たわけじゃないだろうしな。
だが、俺の話なんてあんたの役に立つとは思えないんだが。
あんたの服や立ち振舞から察するに冒険者ってわけじゃないだろ?
どっちかといえば商人に見えるんだが。
まぁ、あんたの正体なんて俺にはどうでもいい話だよな。
……なぜ俺がこの店を作ろうと思ったか。
そいつは一人の女が切っ掛けさ。
冒険者ってやつは命と体を賭けて金を稼ぐ職業だ。
必要最大限の準備と必要最低限の運の持ってるやつが生き残って帰ってくる。
だから生きて帰ってきたやつは金の使いみちは大体決まってる。
一つは道具や武器の整備・補填。
俺の知ってる範囲でだが武器や道具の手入れや扱いがろくでもない冒険者は長生きしないな。
あいつらは声は出せないが俺達の命を預ける相棒だからな。
次は、仲間との宴だな。
自分や仲間が生きて帰ってきたことを、仲間に。神様に。感謝するのさ。
で、この宴ってのは感謝だけじゃない。
次の冒険で最悪の結果になったときに後悔しないように。
いや、その最悪の結果がほぼ確実なものとしても、必ず生きて帰る目標にするためにやるのさ。
生きて帰れればあの楽しい場所が待っているってな。
最後に、前のとかぶるところもあるが自分の目標に使う。
欲しいものとかそんなのだな。
まぁ、結局は目標を持ってるやつほど土壇場で死なないもんってことさ。
俺の場合は、美味い飯、美味い酒、そしていい女だった。
ある時俺のいたパーティーは幸運にも大金を稼いで街に戻ってきた。
金は山分けして、一人に入った金額はまぁ遊ばずにいれば一生生きていけるぐらいの金さ。
もちろん俺はそれで冒険者をやめる気なんてなかったから、武器なんかを整備に出してみんなで酒盛りして美味い飯と酒をたらふく楽しんだ。
で、残った金で女を抱こうと娼館を巡ったんだが、その日はお気に入りの子に先客がいたりして結局誰も抱かなかった。
気がつけば娼婦街の外れまで来てた。
当時のこの街の娼婦街は貧民街と繋がっててな。その貧民街との境界線辺りには娼館に入れなかったり、もしくは追い出されたりした女たちが一夜いくらって形で花を売ってるのさ。
組織管理されてる娼館に比べれば、そこで売ってる女たちは安いから金のない男はそこで買うやつもいる。
とは言え娼館の女に比べればやはり質が劣ることのほうが多いし、一言で言えば危ない女のほうが多い。
それでも買っちまうのだから男ってのは全く情けない生き物だとは思うけれどな。
まぁ、俺もせっかくここまで来たのだからって感じでそこら辺をうろつき始めた。
やっぱり、自分の心に来る女はいなかった。
戻ってもう一度娼館をめぐるかなと思ってた矢先に一人の女が目に入った。
髪は茶色で首ぐらいの長さだったな。くすんだ色に見えたからあまり手入れはされてないように見えた。
だが、顔は良かった。全体的に鋭い獣を思わせるような顔立ちは好みが分かれるだろうが、傷もなく、ちゃんと化粧なんかで見繕えば十分娼館で働けるような雰囲気を持っていた。
とは言えもし俺が普通の娼館の主でその女を雇い入れるかと言われれば入れなかっただろうな。
何故かって?
答えは単純さ。
その女には脚がなかった。
右脚の膝から下がなかったのさ。
どんなに顔がいい女だとしても、傷物は売れないからな。
だがそれでも俺には彼女が気になった。
彼女は片足で壁にもたれるように立っていた。近づいてくる俺に気がついたようで彼女は俺の方を怪訝な顔で見つめた。
「こんな傷物に何か用かい?」
その言葉を聞いて俺の心がざわつき出した。できるだけその感情を出さないようにしながら「いくらだ?」と尋ねた。
彼女は苦笑しながら「あんた変わり者だね」と言いながら指で値を示した。
その額は他の女たちが示していた額より更に安い値段だったよ。
俺は了承し、彼女の家へと向かった。
片足を失っていたとは言え彼女の動きはなかなかに見事だったよ。杖を支えにガタガタの道を何事もないように進んでいくんだからな。
そして彼女の部屋に入った。
そこはちょっとましなベッドがある以外はボロボロの家具が申し訳程度にあるだけの部屋だった。
ベッドにだけ少し力を入れていたのは体を売っているからだろうな。
やってる最中にベッドが壊れちまったら笑い話もならない。
で、あともう一つ気になるもんがあったな。
そいつはボロボロの布に覆いかぶされてて中身が最初は何かはわからなかったが、形でなんとなく予想がついた。
そして俺の読みが当たっているのかもしれないと思い始めた。
布で隠されていたもの。それは弓だった。まぁ中身を見たわけじゃなかったからそのときは確定ではなかったんだが、そのへんは冒険者だったからかもしれないな。
無論娼婦になんぞ不要のもんだが、逆にそいつのお陰で彼女の正体に確信を持てるようになったのさ。
彼女もその布を俺が気にしてるのに気づいたんだろうな。
「そいつは私の宝物さ、そんなどうでもいいもんよりこっちのほうがいいだろ?」
彼女の声に気がついてそっちの方に顔を向けたら、すでに彼女は服を脱いでその素敵な体を俺の前で晒していたよ。
――『青眼のセリア』って知ってるかい?
ああ、お前さんの年齢じゃ知らなくても無理はないさ。
お前さんの知ってるやつなら『双剣姫アスナ』や『夜叉のグレイス』ぐらいになるかね。
まぁ当時の俺らの世代なら知らないやつがいないぐらいに有名な女弓使いだったのさ。
向こうは俺の顔なんて知らなかったんだろうな。俺もそれなりには有名な冒険者の一人には入っていたとは言え、彼女は別格さ。
国から金の勲章をもらうほどのやつで雲の上の人ってやつだ。
俺が駆け出しでゴブリン一匹になんとか倒したとか言って安酒で喜んでる頃に、すでに彼女はワイバーンを落としていた。
それぐらい差があった。
俺にとって彼女は憧れであり、目標であった。
最近は噂をきかなくなっていたし、姿も見なくなった。きっとよその街で活躍してるか、もしくは死んだか。
そんなふうに思っていた人物が、俺の前で安い娼婦として裸体をさらけ出している。
信じられるかい?
俺にだって信じられなかったさ。
だから、俺は彼女のその姿を見て興奮してたんだろうな。彼女が次の言葉を発する前に口を塞ぎ、ベッドに倒れ込んでいた。
今までいろんな女を抱いてきたが、彼女は一言で言えば最高の女だった。
高い金を出して良い情婦を抱いたことだってある、エルフもあるし、ダークエルフもある。神に仕える女を抱いたこともあったな。
だが、それらはすぐに過去の夢に追いやられていった。
彼女の体は決して綺麗とは言い難いものだった。
脚がなかったもそうだが、腹には大きな傷の跡が横に入るようにあったし、胸の部分にも斜めに傷があった。
出会ったときは長い袖で見えなかったんだが、手にも細かい傷が見えた。
だが、そんなもんはどうでも良かった。
俺は、今まで理想と思って追いかけていた女を抱いている。そのことが俺を狂わせた。
憧れ、羨望、目標、いつかあいつみたいになりたいと思っていた。その対象が今は娼婦として俺を誘い、俺に跨り、喘ぎ声をだす。
何度も彼女を求めた。この時間がずっと続けとでも思うぐらいにな。
部屋の明かりが消えかすかに見える彼女の裸体と、互いの体が触れ続ける温もりだけを頼りに俺は彼女を貪り続けた。
気がつけば朝になっていたよ。
どれだけ果てたのかも思い出せないぐらいだった。もうこのまま死んでもいいって思えるぐらいだったよ。
僅かに体を動かすことも避けたかった。この余韻を、感触を忘れたくなかったのかもしれないな。いや、単純に疲れ果ててただけだったのかもしれない。
そんな俺を見てから彼女は起き上がった。
へとへとになった俺とは対照的にそんなことをしてたのかと思うぐらいに何事もないように起き上がると「体を洗ってくるよ」と言って彼女は家から出ていった。
案外夢かもしれないなんて思い始めてた。
そう、セリアって女を夢で抱いてただけなのかもなってさ。
けれど疲労した俺の体は紛れもない現実だと教えてくれてた。
俺は気がつけば寝転びながらあの布で覆われていたやつを見ていた。
そんな俺に戻ってきた彼女が「気になるのかい?」と尋ねてきた。
俺が頷くと彼女は慎重に布を剥ぎ取った。
いい弓だと思ったよ。
俺は弓は専門外だったが、いい武器ってやつぐらいはわかる。仮に捨て値で売ったとしてもこんな場所からさっさとおさらばして普通の生活ができるぐらいには値が張るものだと思えた。
そしてそいつは間違いなく俺の記憶の中で『青眼のセリア』が持っていたものだった。
「あんた『青眼のセリア』だろ?」
「冒険者ってのは気づいたんだけれどね、なんだあたしのことを知ってたのかい」
俺の質問に彼女は苦笑した。
「朝飯食べていくかい? 大したもんなんて作れないけどね」
と続ける彼女に俺は「ああ」と答えた。
安いのがすぐに分かるぐらいは固いパンと僅かな干し肉と木っ端の野菜が入ったスープを一緒に食べながら彼女は話してくれたよ。
エルダーグリフォンの襲来はあんたも知ってるだろ?
グリフォン数十匹と一緒にこの国を襲った災厄さ。
そうそう、騎士団が半壊しながらも倒したって話のあれさ。
俺はその時別の街にいたから知らなかったんだが、実は騎士団だけがあいつと戦ったわけじゃない、そこには冒険者も雇われて討伐戦に一緒に参加していた。
彼女もその冒険者側の一人だった。
作戦は騎士団側の連中が組んだらしいんだが、それがうまく行かなかったらしい。
グリフォンは大半を仕留めたらしいが、エルダーグリフォンは暴れ続けた。
上位種であるあいつの抵抗は凄まじかったらしくてな。このままでは全滅だってありえるって状態だったらしい。
そんな中で彼女の射った矢がやつの右眼を撃ち抜いた。
それが絶望的状況においての起死回生の一手だった。
その代償に彼女は右足を喰われた。
だが、そのおかげでついに均衡が崩れやつの最期は首を騎士団の一人がはねてって感じのだったらしい。
らしいってのは彼女もそれをみている余裕はなかったからだそうだ。足を喰われたって時点でまともじゃあいられないしな。
重傷だった彼女には回復魔法が行われたんだが、回復魔法ってやつは完全に喪失してしまった部位までは治せないからな。とりあえず彼女は血止めだけしてなんとか生きて街へ帰ってきた。
だが彼女に待っていたのは不幸な現実ってやつだった。
手柄はほぼ全て騎士団の連中が持っていった。
騎士団としても半壊どころじゃない被害を出していたせいもあっただろう、威厳を保つために冒険者たちの活躍は消された。
まぁ、彼女の弓で目を射抜いたのは切っ掛けにはなったかもしれんが、とどめを刺したのは騎士団の連中だったからな。こればっかりは仕方ないところもあったのさ。
彼女は討伐参戦料として僅かな金をもらっただけだった。
片脚を失った弓使い、いや冒険者なんて続けていくことが出来ないのは明らかだった。
だから彼女は引退した。
生命があっただけ幸運と言うかもしれないが、彼女にはそれ以上のものを掴むだけの力があったはずなのにな。
彼女には失った脚に対する治療費でほとんど金が残らなかった。
彼女は弓に稼いだ金の大半を注ぎ込んでいたらしい。だから彼女には貯蓄なんてものは殆どなかった。
結果的に彼女はこの娼婦街の端で体を売ることにした。
まぁ買ってくれる男なんてほとんどいなかったらしいけれどな。
弓を売ればこんな生活を止めることはできる。でもそれはできないって彼女は言葉を続けた。
この弓が自分が自分であったことを証明してくれる唯一のものだと。
だからどんなに苦しくてもこれを売ることなんて出来ないと。
「話を聞いてくれてありがとう」と晴れやかな顔をして彼女は言葉をしめた。
おれは、金の入った袋をテーブルの上においた。
「こんなにもらえないよ?」
と彼女は受け取りを拒否しようとした。
それはそうかもな、それは彼女が提示した金額の十倍以上だったからな。
「受け取ってくれ。朝飯代、そして『青眼のセリア』を抱けた代金として」
「――わかったよ。どうせこんな女を抱いてくれるやつなんてそうはいないからさ。ありがたく受け取っておくよ。その代わりじゃないが、また来てくれると嬉しいよ。代金はいらないさ。回数権ってやつさね」
それが彼女の答えだった。その時の彼女の笑顔は二度と忘れられないな。
俺の中で目標が出来ていた。それを叶える力があるかは俺にはわからなかったがすぐにでも始めないと思っていた。
俺は自分の宿に戻ってパーティーのリーダーにパーティーを抜けたいと伝えた。
リーダーは驚いてたな。辞めるにはいい頃合いだったかもしれないがそういうやつは前兆がある。
まぁ俺だって前日まではそんな気がさらさらなかったからな。
俺が抜けるとなったら色々問題が出てくるってことで、緊急の話し合いが行われた。
話し合いって言っても料理と酒が並んだ宴みたいな状態だったけれどな。
「なんで抜けるんだ」
「やりたいことが出来たからさ」
最初はそんな言葉からだった。まぁみんなは抜けることに好意的だったな。
いずれ続けていれば死ぬってことが明らかな職業だ。なら今辞めることは決して悪い選択肢じゃなかったしな。
「辞めて何するんだ? 村にでも住み着いて農民でもやるのか?」
別のメンバーが尋ねてきた。
「娼館をやるのさ」と答えた俺にみんながそれは良いって言ってくれたよ。
俺の女好きは皆が知ることだったしな。自分の好きなことをやるってのは良いもんってこともみんな知っていることさ。
「だが、おまえがそこまでしてやりたい娼館ってどんなのだ? エルフでも並べるのか? それともまだ子を宿せないような娘か?」
その質問に俺は少し沈黙した。うまく伝わるのか不安だったからさ。
「……怪我をして辞めた冒険者を集めた娼館さ」
俺の答えにみんなが沈黙した。そして一斉に笑い始めた。
「そんなの誰が買うんだ?」「傷物は流石にお断りだな」ってな。
俺はにやりとして「買うのはお前らだよ」って答えた。
『戦姫ルイズ』『幻想の魔女』『竜喰らいエメール』
俺は他にも数名の女冒険者の二つ名を並べた。
そいつらは俺らなら誰もが知ってる名前だ。
「俺達にとって憧れだったり、目標だったり、ライバルだったりする奴らだ。仮の話だ。想像したことはないか? もし彼女たちがお前たちの一夜の女として誘ってきたらってな」
メンバーの一人がゴクリとつばを飲んだ。
「良い女たちだよな。そいつらが股を開き、耳元で囁き、お前らを誘ってくる。娼婦としてお前たちを慰めてくれる。最高と思わないか?
憧れが自分のものにできるって。もし彼女たちが傷ついていたとしてもそれはお前らの彼女たちへの価値が抱けないってぐらいまで損ねるものか?
俺はそうは思わない。むしろ価値を高める場合だってあると思う。彼女たちの強さ、魅力、存在を身近で感じる俺達冒険者だからこそその価値は金を払ってまででも抱きたいと思うんだが」
俺は自分のやりたい事、そして思いをメンバーたちに話し続けた。
気がつけばみんなが俺を見つめて聞き続けていたし、俺の言葉を笑うやつなんて一人もいなくなっていた。
「少し待っててくれ」
話が終わったところでリーダーが奥へと消えていって、少しして戻ってきた。でかい布袋を持ってな。
「使ってくれ」
と言ってテーブルの上においた袋はずっしりとしてて、開けてみろって言われて中を見て驚いたよ。ぎっしりと金が詰まってたのさ。
「これは?」
「娼館やるってんなら金がいるだろ。俺が持ってても使う先なんてない金だしな。おまえの夢のために使ってくれ」
たしかに俺の手持ちだけじゃ厳しいと思ってた中で彼のこの行動は嬉しかった。
「ありがとう」
「代わりといっちゃ何だが、もし『ルイズ』がおまえの店で働くようになったらまっさきに俺を紹介してくれ」
って答えるリーダーに俺は笑いながら「ああ」って返したよ。
残りのメンバーも金を持ってきてまだ始まってもない店での自分たちが抱きたい理想の女の予約をし始めたのはもう笑うしかなかったけれどな。
――これが切っ掛けさ。
辞めた冒険者の未来のためとかそんなのは嘘っぱちだ。
良い女を抱きたい。この欲求こそが始まりだ。男なんてそんなもんさ。
だが、いい女ってのは顔や体だけじゃないってことを俺たちはよく知っている。魅入られるのはそこもあるかもしれないが、もっと他のところだとな。
俺たちは同業者だからこそ冒険者ってのを知っている。そいつらがどんだけ魅力的か、官能的か、欲情をもたらす存在かを知っている。
そしてそれは俺や仲間だけではなかったってことだった。
それが、ここ娼館『戦乙女の安息地』がうまく行った理由なんだろうな。
戦乙女ってのは武神である神様の一人に仕えて神と一緒にもしくは神の代わりに戦場で戦う天使たちの名を示す。
その姿は凛々しくも魅惑的でともに戦うものたちを鼓舞するとされているな。
女冒険者たちはまさに俺達にとって戦乙女と言えるだろうな。
だが、彼女たちだって無敵の存在じゃない。傷つき、倒れ、力尽きることだってある。
そんな傷ついた彼女たちが休む場所として安息所って名前にした。
まぁ、休めてないって言われちゃあそのとおりだと思うがな。
でも今じゃあうちも100を超える娘達が、男を……いや女もだが、楽しませている場所になっている。
冒険者として生きることができなくなった結果、その体にさえ僅かな価値もないとして捨てられてきた子たちがさ。
俺がやったことが立派だなんていうつもりはないが、俺はここを作ってよかったと思っているよ。
どうだい? 大した話じゃなかっただろうが、あんたの役にたてたかい?
そうか。そいつは良かったよ。
それじゃあ、そろそろ仕事に戻らないと奥さんに怒られちまうからさ。これで失礼させてもらうよ。
ん? ああ、俺はたしかにここの主人ではあるんだが、どっちかというと経営の方をやっててな。
女の子たちの面接や教育とか管理は彼女がやってるのさ。
男を喜ばせるツボを知ってるのはやっぱり女だからな。
まぁ男だからわかる喜ばせるツボってのもあるからこの辺は二人でうまくやらせてもらってるよ。
あいつからも話を聞きたい?
あー、あいつ結構忙しいからなぁ。店見るだけじゃなくて子供の世話までしてるし。ほんと頭が上がらないよ。
まぁ、聞きたいって言うなら店が終わってからにしてもらえるかい?
それまでに話は通しておくよ。
ついでにうちで楽しんでいったらどうだい? 代金はいらないさ。
この酒で十分お釣りが来るぐらいだ。
ああ、そうそう忘れるところだった。あいつの姿なんだが。
右脚のない少し腹の大きくなった女だよ。他にそんな姿の女はいないから見ればすぐわかると思うよ。
全く俺にはもったいない最高の女房さ。




