また、いつか
好きな人たちと、好きな場所で、好きな話をしているときって楽しいよなぁ…そんなことを思いながら書きました。
彼らは追い詰められていた。
警官に包囲され、目当ての金も金庫にはなかった。
4人は上京した学校で知り合った。
当初、互いを認識することもない間柄だった。
あるキッカケで意気投合し、それからはなんでも話し合った。
自分の生い立ち、好きなこと、嫌いなもの、将来の夢。
彼らは彼らを変える必要があった。
社会も、誰も、
彼らを認めてくれなかったし、必要としていなかった。
そんな中、彼らは彼らだけが全てだった。
彼らこそが、自らの全てだった。
自分たちの居場所が欲しかった。
しかし、この国では満足に得ることはできないと考えた。
だから、外の国に居場所を求めた。
自分たちだけの、楽園を。
そのためには多くの金が必要だった。
だから彼らは働いた。
必要とされない場所で、求められずとも働いた。
しかし現実は厳しかった。
思うように稼ぐことはできずに、フラストレーションばかりが溜まっていった。
ついに、彼らは限界に達した。
我々の怒りを、
「世に知らしめなければならない!
そして目的を達成するのだ!」と
決死の覚悟で事に当たった。
目論見は成功し、彼らを知らないものはこの世にいなかった。
だが、残念なことに仲間の1人が捕まった。
4人の中で一番純粋な彼は、しばらく黙秘を守った後、ぽつりと呟いた。
追い詰められた1人が「ええい、ままよ!」と意気込み、他の2人を率いて屋上へと駆け込んだ。
それがマズかった。
どこにも逃げ場がない3人は、ついに仲違いを始めた。
「俺の所為なのか!?」
「私が悪いって言うの!?あんたも何か言ったらどうなのよ!?」
「ちょっと待って、みんな落ち着こうよ!」
しかし、警官の突入によって、それも終わりを告げる。
彼らはそれぞれ、抵抗し、泣き崩れ、受け入れた。
パトカーで移送される直前、現場指揮官が彼らにこう言った。
「伝言だ。
“あの金を使ったら、俺たちはもう2度と陽の光を浴びることはできないだろう。そう思ったら、あの金を遺すことはできなかった。こんなことをして申し訳ない。どうか許してほしい。またいつか、みんなで呑もう”
以上だ。」
その日、日本列島を襲った台風16号は、ちょうど北海道を抜けていった。
台風一過の夕焼け空は、ひどく、ひどく美しかった。