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夢見人の戯言

作者: 津島



「龍也」


その言葉は、誰にも届かず宙に浮かんでは消えた



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



月影が死んだ

急な事であった


私を庇い、自ら命を落としたと月影が守った部下が申し訳なさそうに項垂れ己に教えてくれた


思考回路が上手く働かなかった


その部下を責めることも、出来なかった


唯、「月影が死んだ」と云う報告だけは受け取った



____



本日、快晴なり。

月影に似合う綺麗な空模様だった


「紫雲さん、綺麗ですね」


隣で、声が聞こえた様な気がした


月影は、もう居ないというのに



____



本日、月影の葬式なり



沢山の人が来ていた


己も顔見知りな者


月影が個人的に仲良くしていた者


月影が助けた者




様々な人が居て、皆涙を流していた


己は、泣けなかった。


なんて、薄情なのだろう



____




月影が死んでから数日が経った



頭が追い付いてないのか、信じたくないのか、分からないが月影が死んだという実感は無かった


そのうち「紫雲さんっ!たーだいまー!」と壁からひょっこりと顔を覗かせる…そう思っていた。否、そう思いたかった



死んだ者は、2度と生き返らないというのに


それは、己が1番分かってるというのに


____



「月影」

ボソリと呟いた言葉

もう、届くはずは無い使い古された言葉

己は何度この名を呼んだだろう


月影が死んで丁度1ヶ月、漸く月影の死と向き合えた


ふと時々呼んでしまう、この言葉


誰にも届かず、ただ虚無を抜きていくだけ



己は、何か持っているのであろうか?



____



己は気付いた


己は何も持っていない事を


いつも支えられていた事


皆があるから己がある事




そして




月影が、己にとって唯一無二の存在だと言うこと



____


「龍也、龍也…ッ!」


大の大人が声を上げて泣くというのはみっともなく、またはしたない事なのだろう。

己に泣く資格はあるのか


恐らく無いだろう


だが、愛してくれる人が、愛する人が死んだ時ぐらい、己が全てに気付いた時ぐらいは声を出して泣いてもいいだろう。





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