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怪奇奇譚.com 2

作者: 揚げ茄子

どうも揚げ茄子です。

前作から読んでもらっても、今作から読んでもらっても、大して問題は無いので、心ゆくままにお楽しみください。

怪奇奇譚.com 2


2の奇譚~箸見る目玉~


[よーこそ。またお会いしましたね。

本日は、知らない人が一番幸せな話をしましょう。この世の中、全てを知るものが必ずしも幸せとは限らないものです。何事も程々、というものがこの世の中の均衡を保っています。

今回は、そんな保たれた均衡を崩してしまった、本来の人間にはない術を身につけてしまったあるひとりの男の話をしましょう。

さてはて、一体どんなに世界の一端が垣間見得るのでしょうか?]





…おいそこの君。そうそう、そこの酔って顔色の悪い君に話し掛けてるんだよ。1人かい?

さっきからつまんなそうな顔してたからな、少しオッサンの昔話に付き合ってくんねぇか?

…そんな如何にも嫌そうな顔すんなって…

まあそんな長ぇ話でもねぇから、聴いてけって。


そうだな、それは一体さてはて、いつからの事だったのだろう。

ひどく昔、そう。私が小学校低学年の時からの長い付き合いだ。


その日も、いつもどうり何の変哲もなく、幼き私は友人と一緒に砂場にホースから水を持ってきて、小さな川を流したり、山を作ったりしていた。さながら自分がまるで天地創造の神になったかのようにね。


私と一緒に山を作っていた友人…もう名前を思い出す事すら出来ないが、そのこの顔をふと見たんだ。特に、なにか理由がある訳でもなく、普通にそちらに目をやっただけだった。


私の目には、一生懸命に砂山を作る友人と共に、


なにか変な物が写った。


それは大きかった。見上げれば雲を突き抜けるほどの長さはあるであろう大きな大きな2本の棒であった。

私は直感でそれを

だと思った。

それはその友人の真上にピッタリと張り付いている。


「~ちゃん~ちゃん、でっかい箸やねん。」

と声をかけ、上を指さすが友人は上を見上げ、

「はぁ?何言っとんねん?」

と馬鹿にしたような声を上げる。

結局、その大きな箸は友人には見えていなかったのだ。

私は気味が悪くなり、お腹痛いからトイレと嘘をついてその場から離れた。

とりあえず近くのトイレに駆け込み、色々考えた。

あれがなんなのか、なぜ友人にあんなものが近づいているのか、なぜ友人に見えなくて私には見えるのか…


「キャーー、先生ー!」


女子の悲鳴じみた叫び声で我に帰った。

トイレから出ると、砂山の上に崩れるようにして倒れている友人の姿が見えた。


上空にはバタバタと暴れる半透明の友人を横から挟んだ例の箸が、空へ登って行くのが見えた。

一瞬友人と目が合った気がした。



次の日から教室の一番後ろの右から3番目…友人の机の上に花の入った花瓶が置かれた。


死因はまだ幼かったので聞かされていなかったのだが、少し前の同窓会で若くして心筋梗塞だったとのことだった。



そして、私はその日から外に出るのが怖くなった。

外を見れば、至る所に、例の箸が見えるのだ。


ある時はすれ違う人の上

ある時はお隣のおばさんの上に

またある時は好きだった女の子の家の上


そして家から20mほど離れた場所にある病院の上に何本も、まるで餌を求めて腐肉にまとわりつく意地汚い蛆虫のように、その箸は泣き叫び喚き散らし、苦悩の表情を浮かべる彼らを掴みあげて空へ連れ去るのだ。


私は年を取る事に何となくそれがこの世の摂理なのだと悟った。

誰しも死ぬ時は来るのだ。

それは運命であり、避けられぬ道なのだと。

抗う事なんて出来ない。

それが神の思し召しなのだと。


…ん?何でこんな話を電車でたまたま乗り合わせた見ず知らずの俺に話すんだって?


…あぁ、簡単な話さ。誰も信じなかった俺の話を最後の暇潰しにでも聞いてもらおうと思ってね。



…最後ってのはどういう意味かって?





…そりゃあな、そのままの意味だよ。


俺には今、この電車に乗ってる人間全員の上、もちろん自分の上もあんたの上にも、箸が見えるのさ。


..

.


『…臨時ニュースです。本日未明、〇〇線を走行中の列車が鉄橋の上で脱線事故を起こし、列車の乗客が全員死亡するという大きな自己が起こりました…』



[話し手の男性には覚悟がありました。自分の死を受け入れるという事はどれだけ大変なことか…

見えた彼だからこそのことかもしれませんが、それを聞いていた人にはどう映るのでしょう?

いきなり死ぬと言われてはいそうですかと言える人間はとても少ないと思われますよ?

特殊な力がうんぬんかんぬん、

私は凡人だからうんたらかんたら、

人によっては何も知らずに生まれ、育ち、老けて、死ぬ人程ある意味幸福な一生なのではないでしょうか?

よっぽど自分の運命を決められていると感じるよりは…ね。


今日はここまで。]

今回の話は、よくあるタイプの話ですね。

友達がしていた怖い話がこの見える人のタイプの話だったので、これがいい!と思い書いてみました。いかがだったでしょうか?

幽霊や妖怪だけが怖いのではなく、世の中の人の関与するべきでない不条理を書いていきたいと常日頃考察に励んでおります。

次の話は犬をテーマで書きたいと考えています。

ではまた。

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