はじめてはお姉ちゃんと
アーイェの禁書目録化の半分が終わり、目覚めるまでの間。
俺はレイシアと両親にこれから学校をしばらく休むことを伝えた。
両親はせっかく俺の三属性混合が認められたのにすぐに魔法教会に反抗するようなことをするんじゃないと言ってきたが。
俺の知ったことではない。
学校なんてクラスメイトといちゃいちゃするためだけに行っていたようなものだ。
世界の風潮的に仕事がしにくいってのもあるけど。
今や俺も立派な称号持ちだしな。
あとは成果さえ出せばなんとでもなる。
ってか英雄たちに口利きしてもらえばたいていの話は通る気もするな。
「なるほどね。それでアーイェちゃんが」
今はレイシアの部屋で二人きりだ。
レイシアは悩ましげに唇に指を添えて目を伏す。
家事を始めてからというもの、レイシアは女らしくなってきた。
いや、もともとこれ以上にないくらい立派な女だったのだが。
なんというか、女としての性に磨きがかかってきている。
こういうのを熟れるというのだろうか。
「だから、俺はアーイェと二人で少しの間、家を出るよ」
俺は物が少なくなった部屋をちらと見ながら言葉を続ける。
レイシアは卒業後、上級魔法使い見習いとして仕事をする予定だった。
だが、英雄らきっての希望もあり、普通の人間には任せらないような任務を与えられる特殊上級魔法使いとしての道を歩むことになった。
そのため、レイシアはこれからは特定の拠点として自室を魔法教会に置き、世界を回ることになる。
「そっか。頑張ってね。応援してる」
レイシアは、きっと他の誰にも向けたことのないような笑みを俺に向けてそう言った。
今までだったら、俺のことを世話したいがあまりに駄々をこねていただろう。
だがそれも、今までの活動を通して、俺がそもそもこの世界の生き物として他とは違うことを肌で感じとることで変わったんだ。
みんなおとなになったんだな。
「でーも」
気付は、レイシアの見目麗しい白い肌が俺の目の前に。
「寂しいものは寂しいんだい!」
ガバッと猛烈な勢いで何かがぶつかった。
相当な衝撃にも関わらず、一切の痛みを感じなかったその答えは、きっとひとつしかなく。
「ちょっ、あの、なんか生っぽいんですけど!」
ぷはーっと息を吐いてから、押し倒された俺が叫ぶと、レイシアはまるで悪党のような三日月形の笑みを浮かべた。
「そりゃお風呂あがりですから」
レイシアは部屋着。
もっと言ってしまえばパジャマだ。
肌触りのいいボタンパジャマは、たしかにいつもの風呂あがりスタイル。
だが俺は知っている。
レイシアは寝ている時もブラをつけていることを。
つか小さいころからあんな体型をしていてブラジャーをせずにきちんと育つわけがない!
「ねえ、いい匂いする?」
レイシアは谷間を見せつけるようにして俺に顔を近づけてくる。
真面目な話をしてたんですけどレイシアさん。
いや、もう終わったけどね。
終わって、惰性で詳しい事情をレイシアだけには話そうと思ってここにきて、ついさっきそれも済んだんだけどね。
「ところでアデルさん」
俺の目を覗きながらレイシアが問いかける。
なんだその意味深な敬称は。
「しません?」
……ん?
「えっ」
首をかしげたままのレイシア。
押し倒されたまま硬直する俺。
ほ、ほあい。
「あの、姉弟ですけど」
「はい。そうですね」
うん、まあ。
変、ではない。
いや、変なのだが。
この世界では近親婚というものが禁止されていなくて。
ただ、魔法教会がそういうのはダメって言っていて。
基本的にはしてはならない風潮が世の中にはある。
だからレイシアもそれをずっと避けていたはずだ。
ただ、同時にきっと、そういうことをしたい願望もレイシアにはあるはずで。
だからこそ、幼い頃からのあの奇行があったわけで。
それが大人にもなってくると、当然、こうなる。
「ねえ」
「はい」
どうにもマジそうである。
ああこれは、いよいよ俺もオトナになる日がきたかーと。
思った。
「アデルはさ、普通の人にはできないことができるんだよね」
「はい」
いっそ全て話してしまってもいいだろうか。
感づかれていることはまず間違いないし。
「じゃあ……このまま、できるよね?」
きっと、レイシアもそういうつもりなんだろう。
今日が、最後だから。
「ねえさ……レイシア」
「はい。なんですか」
レイシアはにっこり微笑んだ。
「終わったらさ。話したいことがあるんだ」
「ふふっ。ずいぶん遅かったですね」
「いやまあ、複雑な事情があって」
「はいはい。何にしても、事の後ですよ」
レイシアはもうやる気満々である。
こうなったら俺も覚悟を決めようか。
男として。
「アデルも、もう準備できてるね」
身体は正直とはこのことか。
何の抵抗もなく脱がされていく下半身。
なんかいつもされてばかりだな。
どれ、俺の方からもたまには意思を示してみよう。
浮いていたレイシアの腰をグッとつかみ、自分の腰へと引き込む。
「ひやっ! そ、それはダメ……!」
なんともらしからぬ小さな悲鳴を上げるレイシア。
ダメな要素が何処に合ったのだろう。
と、考えていたのつかの間。
俺はその理由にすぐさま気がつくことになる。
冷たい。
いや、冷たくはない。
ただ、その湿り気がどうにも、俺の熱くなったものに触れたとき、冷たいと感じたようだ。
「いつからこうだったの?」
「うぅ……」
珍しく見るレイシアの恥ずかしげな表情。
紅潮した顔がまた色を増す。
「アデルが部屋に入ってきてから……」
おい。
話聞いてたのか。
最初からそのつもりだったか。
まあ、でなきゃこの速さはないか。
「えっと、初めてなんだよね?」
「そうだよ。まるっきり初めて」
「ってなると、かなり痛いと思うんだけど」
「うん。いいよ。痛くして欲しいの」
レイシアはうっとりした表情で身にまとっているものを脱ぎ捨てる。
そこには今までとはまるで違った、女としての艶やかな肢体があった。
「一生忘れられなくなるくらい。痛くして」
その言葉に、グッと俺の内側からこみ上げて来るものがある。
本気の想いというものは、全身を通して伝わってくるものだ。
ゆっくりと降ろされる腰。
直前で、止まる。
「あ、でも」
パッと明るくなるレイシアの表情。
楽しそうに瞳が踊っている。
「気持ちよくも、できるんだよね?」
もうすべてを見透かしたようなその言葉。
もちろん答えはイエスだ。
俺が与える刺激とレイシア性感とのつながりを強化すれば、処女だろうがなんだろうが快楽天国まで一直線である。
「いくらでも」
「じゃあ、それもして」
にこやかに俺の頬に手を滑らせる。
レイシアの側もすべて吹っ切れたようだ。
「頭がおかしくなるかもしれないけどいいの?」
「うん。文字通りめちゃくちゃにして。壊れてもいいから」
どこまでも本気で、どこまでも期待に溢れていて、どこまでも愛おしげで、ちょっぴり寂しそうな、そんなレイシアの難しい顔を見ているうちに、俺の方も、もう細かいことはどうでも良くなった。
「じゃあ、眠気とか疲労感とか。全部飛ばすから」
チートをフルに使用した、おそらく世の中にはないくらいの快楽を貪りあう。
その日の夜は、お互いの人生の中で一番長い夜になった。




