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合う縁
「あ…りがとう…ございます…」
落ちてきた、ように見えた塊は森の木の間を駈けてきたおおきな山猫だった。彼は残念そうな顔で自らの手と転がった塊を交互に目を向け、汚れていない方の手で頭を掻きながら小さく、あーぁ、と呟く。余程物足りなさそうに見える。声を掛けて良いものかとも考えずに。普通ならば怯えたり声を掛けていい雰囲気とか考えるものだろうが狐は全く気にしない。豪胆などではなく単に人の心を考えないのである。
逆に山猫は気付いた。傍に薄汚れた狐が落ちていることに。
「いやいや、お前は気にすんなよ?正直こんな事態…」
ぶつぶつと言い訳をしている山猫をじっと見上げ、狐は顔を輝かせて残った力で人の形に変化した。
「まぁ、助かってよか…」
振り返る山猫のその顔は少し引きつっていた、ように思われる。
「…った、ですねぇ」
狐はその表情に益々嬉しそうにニヤつく顔を抑えながら脱力し抜けたのかと思えるほど落ちた肩に指先だけ触れた。
「あの…大丈夫ですか?」
この先をどうするか、繋がりかけた縁を指に絡ませながら山猫を見上げた。




