傀儡
会話はありません。
暗い表現ばかりなので、お読みになる際はご注意ください。
ハッピーエンドでは決してありません。
ああ。檻だ。
この空間は私を閉じ込め、苦しめる。
彼は『君の為』などと言っている。
何が私の為なのだろう。
言葉の暴力に、視線による殺人。
一体彼は私を何度殺せば気が済むのだろう。
こんな状況なら、誰しもが逃げることを選択するだろう。
こんな状況に居続けて意味があるのだろうか。
心が壊れ、体は傷だらけになり、生きた屍となる。
この檻は生きた屍を作り出し、逃げた者には檻の中に飾られる。逃げずにいたものは心を無くし、ただ救われることを望み彼の言うとおりにする。
一体そんな傀儡のような人生に意味はあるのだろうか。
檻から出ても首には鎖が繋がれたまま。
一度この檻に入れば二度と逃げられない。
飼い犬のように一生鎖に繋がれ、自由になどなることはない。
勇気と覚悟を持ってすれば逃げることは出来るだろう。
しかし、それは本当に逃げられたと言えるのだろうか。
彼の鎖を引きちぎろうとも、檻の中。
逃げ道はあるのだろうか。
檻の中にいる限り、鎖が身体に絡みつく。
どんなに足掻いても、どんなにもがいても鎖がキツくなるだけ。
さて、こんな檻の中にいる私は「囚人」のようではないか?
彼はさしずめ「看守」だ。
罪人である私「囚人」を痛めつける「看守」の彼。
さて、私は罪を犯しただろうか?
否。
なんの罪も犯してはいない。
さて、この檻に罪人はいるか?
否。
罪人はいない。ただ、看守が存在するためには囚人となる罪人が必要となる。
それが私だ。
これでは生贄ではないか。
私は罪人ではない。
犯したとすれば、この檻を選んだこと。
数多ある檻からこの檻を選んだこと。
それが私の犯した罪だろう。
だが、おかしなことがある。
私は檻の中にいる。
それは確かだ。
しかし、私はどうやら檻の中の檻にいるらしい。
とても狭い空間。
大きな檻の中で閉鎖された空間。
大きな檻の中で孤立した空間。
その空間に閉じ込められ、助けを呼んでも外には届かない。
時折、救いの手は差し伸べられる。
しかし、その手を彼は追い出し、遮断する。
檻の中の地獄で死ぬまで踊らせられ続ける。
檻の中の地獄で死ぬまで痛めつけられ続ける。
ああ。ここは檻の中。
逃れられない檻の中。
きっともう心の底から笑うことは出来ないだろう。
顔には作られた笑みが張り付き、心では血の涙が流れる。
ああ。ここは地獄。
傀儡となる場所。
心を壊された人形の生まれる場所。
さて、心を壊された傀儡はどうするのだろうか。
さて、心を壊した人形師はどうするのだろうか。
さて、心を壊された傀儡は人形師の思い通りに動くのだろうか?
人形師は糸が切れていることに気付いてはいない。
切れた糸の先に本当に傀儡はいるのだろうか?




