閑話休題の三
ドゴォッ!
「コンクリートを砕くとか、洒落にならないって!」
咄嗟の判断に身を任せ横に回避する。
その爆音が耳に直撃する。
―せんぱぁい・・・お、と、な、し、く、食べられてくれませんかぁ?―
狂気に満ちた顔が目の前に出てくる。
こんな顔だったっけ。
「・・・お前って・・・そんな顔だったのか・・・?」
これが・・・
コレが?
これがゆう君?
―正真正銘、武田ゆうですよぉ?見間違えてるんですかぁ?―
「ハハ・・・馬鹿みたいだな俺・・・」
―・・・?―
「こんな人形に惑わされてたのか!」
―人・・・ギョウ・・・?―
「あぁ、そうだよ!ゆう君がそんな顔をするキャラクターな訳ないじゃないか!!」
―人形・・・にんぎょう・・・ニンギョウ・・・ニン・・・ぎょウ・・・?―
「何かがおかしい、そう思ってたんだ!いっそのことこれすらも夢であって欲しいがね!」
最初から、気づいていたんだ。
けれど、本当かどうかもわからない。
もし本当なら。
―・・・ニン・・・―
崩れ落ちる人形
俺は追撃ちをかけた。
「その馬鹿力にも納得だ!」
―・・・じゃ・・・―
「・・・ん?」
待てよ・・・
仮に人形だとして、本物は一体
―人形じゃないぃぃいいイイい!!!私は!ワタしはぁぁぁ!!―
ドゴン!バゴォッ!
「くっ、くぅっ!?」
―そうやって人形扱いしてェ!いつもそうだ!!!―
「こいつ・・・!?」
―ワタシは人間何かの道具にはナラナイ!!何時だって使役する側だ!!!―
「そうか!そいつは「殺戮兵器」の集合体だ!!細胞の一つ一つまで全てが殺戮兵器の変異体だ!」
―正解♪じゃあこの体はどうやって手に入れたでしょう?―
「てめぇ・・・まさか喰いやがったなァッ!」
拳を握る。力が入らない。
それでも俺は殴らなきゃダメな気がする。
ヒュン
―下等生物を喰った所で生命が伸びるのですか?既に無限の命を持っているのに??―
「なりすまし・・・?」
―そうですねぇ・・・それで正解にしてあげましょう!―
「正解じゃっ・・・ねぇ・・・よっ!!!」
ブゥン!
ヒュン!
「クソッガァッ!」
―貴方のその攻撃、見え見えなんですよ。だ、か、ら。全然怖くないんですぅ♪―
「ハハ・・・ハハハ!」
―なぁにトチ狂ってるんですかぁ?―
「あんた、なんで俺を喰おうとしたんだ?」
―決まってるじゃないですかぁ。その抗体を取り込むことで本当の無限の命が手に入るんですよ?―
「だろうなぁ。”まだ”無限の命を手に入れた訳、じゃないんだよなぁ!」
―一体、何を言っているん・・・―
グシャッ
―・・・エ?―
「ほらよ、お前の大好きな、抗体だ。ちょっときついかもしれないがな?」
―ア・・・アアアアアアアアアアアアアア!!!いた、いたいいいいいいい!―
「取り込み方次第だと思ったが、正解かな・・・?」
「クソガキィ、よく気づいたじゃねぇか。」
「それは・・・アレです、勘って奴です。」
「ハン・・・そうかい。」
殺戮兵器からは焦げ臭い匂いがする。
溶けているのだろう。
「本当に強力なんですね・・・」
「まぁ、いいだろ。さて、これからの事を考えよう。」
―せ、ん・・ぱぃ・・・―
「・・・あんたは・・・俺の後輩じゃ、ないだろ・・・」
―それでも・・・コピーしたものはソレと同じですから・・・―
「・・・そう。」
―・・・本物は・・・完全に感染しています・・・―
「・・・」
―貴方を・・・殺しに掛かるかもしれない。それでも、いいんですか・・・?―
「俺は、俺の信じた道を行く。」
―そう・・・―
―彼女はここから数十キロ先の山奥にいます―
「・・・」
―・・・楽しかったですよ。先輩。―
「こっちは大変だったけどな。」
―フフッ・・・さようなら。―
「後味も良くないな・・・でも、人形らしい最後じゃなくて良かっただろ?クローン君。」
人形・・・か。
他に同じようなのがいたら同じ事を考えているのかな。