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閑話休題の二

―――『感染体』とは


人工的に作られた細菌・・・総称して『人間殺戮ヒューマンジェノサイド』と呼ばれている。


その人間殺戮の兵器が人間の体内で繁殖、それが脳にまで達したときにその人間の主導権を奪われる。

つまり人間として死ぬ、ということだ。


ただ、唯一救われる点があるとすれば、この細菌は細胞の表面などに着床し、繁殖を開始するが、細胞を変異させる事は極めて少ないという点である。


つまり、この細菌はどちらかと言えば寄生菌といった方が正しいのかもしれない。


抗体さえ出来てしまえばその細菌で変化した細胞を除き、その細菌を全て死滅させる事ができるのだ。




「えーっと、つまりは・・・」


「あぁ、わかってるなら話が速い。」


それだけ言うと何も答えず、逃走速度を上げるセイギのミカタ。

仮称するなら「セイギ」だろうか。


「えーっと、セイギのミカタさん・・・あぁ、長ったらしい。


セイギさん。俺の血を寄越せって事ですね。」


「わざわざ言う必要もなかったな。ま、そういうことだ。


奴の事は俺に任せろ。お前は血を提供すればいいんだ。」


「それでこの状況が終わるなら・・・」


しかし、そうは言っても簡単に状況を飲み込んだ訳ではない。


何故俺の血がワクチンになるんだ?

何故アレは俺を狙ったんだ?

何故この人は俺を殺さないんだ?


血程度ならその場で殺して、集めればいい。

凝固した血から作られるのだ。わざわざ抜き取る必要なんてない。


それに、俺に既に抗体が出来ているとすれば、一度それにかかった、という結果にしかならない。


IF...


もしかしたら俺はこの事件(と言うには規模が大きすぎるが)に何らかの形で元々関係していたのではないか・・・?


いや、流石にそれは考え過ぎだろう。


とはいえ、可能性は捨てきれない。

「ワクチンに死んでもらっては困る」

そう逃げ始めた当初に言われたのを思い出す。


もしかして、これは今逃げているセイギさんも何らかの形で関係していた・・・?


「・・・そろそろだ。後もう少しで着く。俺はここで奴の時間稼ぎをする。だからお前はとっとと中に入れ。」


「セイギさん?ちょっと何言ってるか・・・」


「・・・もう遅いんだよ。


何もかも、遅すぎた。対処の方法なんてなかったんだ。実験台と称して連れてこられる人間に可哀想なんていう同情を向けたって救われる訳じゃない。」


「・・・ま、待ってくれ・・・」


「だから、俺はあんたがさらわれて運ばれた時、何時でもこの腐りきった実験テストを終わらせられるように極限まで弱らせた人間殺戮を投与した。


結果は大成功。あんたはその細菌を自らが作った抗体で破壊した。その抗体は日に日に投与されていた菌を全て破壊しうる存在へと進化を遂げていったんだ。」


「嘘・・・だろ・・・俺、そんな記憶ないんだぞ・・・?」


「そんな記憶が残っていれば日常生活に支障がでる。まさかお前はいきなり顔の変形して、まるで本物の化物のように”見える”友人を殺したくはないだろう?


抗体ってのは強すぎると毒なんだ。

敵味方の視認が容易になった。


とはいえ、それには気がついていないだろう?

そうならないように暗示を掛けたんだ。」


「そ・・・んな・・・」


「正直、あのトチ狂った実験をやめさせるには犠牲が必要だったんだ・・・

善も悪も犠牲は付き物だって、本当に思い知らされた瞬間だったよ。」


効果の強い抗体が逆に自身の身体を壊す。

そう告げられた。


なんだってんだよ・・・


「ふざけんなよ!なんで俺なんだ!とは言わない、でもな!


何であんたは全て諦めてんだ!


正義の味方なんだろ!?それでいいのか!?自分が犠牲になって解放されたいから今そんなことを言ってるんだろ!?」


思いの丈をぶちまけた。

後悔は一切ない。

むしろ清々しい。


しかし。


ガッ!

「・・・ッ!?」


気づけば空が視界いっぱいに広がっていた。


殴られたらしい。


「諦めんな?開放されたいから?


知ったようなぁ・・・口を聞くんじゃねぇッ!!


俺だって諦めたくねぇ!死んでも死にきれねぇ思いは大量にある!


だけどなぁ・・・俺が今ここでなすべき事を成さねば、それ以降が死んじまうんだ・・・!


俺のやることに無駄はない!あるわけ・・・ねぇんだ!」


「だけど、今のあんたは死にたがってるんだ・・・


そんなあんたが俺を助けるなんて到底無理だね!絶対とは言わねぇ。でも、今のあんたなら俺みたいな貧弱な体つきでも殺す自信はある!


あんたは・・・俺に可能性を込めたあんたはその程度の人間だったのか!?


俺はあんたが人を救いたいからそう操作されたんじゃないのか!?」


今この位置がバレてしまっても関係ない、そう思えた。


「・・・」


「あんたは馬鹿野郎だ!


残される俺の事も考えないでそうやって押し付けて逃げる!


責任の転嫁だ!俺だけが悪いなんて事にされるかもしれない!


でも、でもさ・・・俺はあんたの苦労や哀しみを知った。それに俺は応えるべきなんだと思うんだ。」


「応える・・・だと・・・?」


「俺はあんたみたいに戦闘に自信はない。勿論知識で勝るとも思わない。


でも、根性としぶとさは一人前だ。後味悪い死合は俺が許さねぇんだ!


曲がりなりにも友人となれた人間を、生物をみすみす殺すわけには行かないんだ・・・!」


たったそれだけの叫び。

しかし、セイギの心を突き動かすモノはあったらしい。


「・・・そう・・・か・・・


俺を活かして苦しめるなんて、ド外道もいいところじゃねーか。


わーった。てめぇにこの命をあずける。だから簡単にのたれ死ぬんじゃねぇぞ!!!」



「応!」


二人の心が繋がりあったとき・・・


―やーっと・・・やぁっとぉ・・・みぃつけまぁぁぁしたぁぁぁぁぁ!!!―




声が響いた

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