メモリー7
「私お酒苦手なんです」
お酒の代わりにウーロン茶を注文した奈美、
今夜は酔うわけにはいかない。
昨夜とは訳が違った。
目の前の信也を警戒し、睨みつけた。
「少しぐらいなら大丈夫だろ?」
それでもしつこく言い寄ってくる信也は、諦めの悪い人みたい・・・
溜息が自然に漏れていた。
「可愛げのない奴」
ボソッと聞こえた声に思わず心の中で舌を出した。
この調子でさっさとこの場から逃げ出す予定だった。
「これから裕子と会う約束があるんだけど、
そんな調子ならシカトしても構わないんだよな?」
イライラした冷たい声、
信也の突然の告白に奈美は言い返す言葉が見つからなかった。
私の知ったことじゃないって怒鳴りたいけど、
心の中が複雑に交差した。
(いったいどうしたらいいの?)
「奈美は友達思いだもんな?」
心を見透かすような言葉に奈美は戸惑った。
バーテンが信也の注文した水割りを運んできた。
その途端信也は奈美の目の前に水割りをおもむろに置いた。
これって・・・?嫌な予感が胸を過ぎる
目の前に置かれた水割りに奈美はそっと手を伸ばした。
これを飲んだら帰るんだから奈美はグラスを口に運ぶ。
苦味が口の中に広がり不味い・・・
でもこれを飲んだら帰れる。
その思いだけで必死に飲み干した。
グラスをテーブルに戻した瞬間、目の前の空間が歪んで見えた。
信也の顔も歪んでいる。
その瞬間奈美は椅子の上に倒れこんだ。