メモリー５
なんどかけてもつながらない携帯を苛立ちをぶつけるように壁に投げつけた。
凹んだ壁・・・割れた液晶の画面・・・
俺はいったい何のためにあの裕子という女と散々付きあったと思っているんだ。
溜息が零れた。
これじゃ約束が違うんじゃないか・・・
壊れた携帯を拾い上げると急いで電源を確認した。
液晶は割れてしまったが、他は大丈夫で安心し、又奈美にしつこく電話を掛ける。
暗い部屋の中、彼女のことをもっともっとしりたい。
俺の心は今までの恋愛に感じたことがないワクワク感に襲われていた。
パソコンを立ち上げると、彼女の印象を打ち込んだ。
あの場で一番大人しかったが俺の目から見たら一番輝いていた。
ずっと見つめていたのに気付いてもらえず自分からそっと近付いていた。
人を好きになるということは、こんな感じなのかな・・・？
ぼんやり彼女の姿を思い返していた。
残された着信履歴を見て驚いた奈美は朝から大きな溜息が出る。
そんなつもりじゃなかった。
ついうっかり眠ってしまっただけ・・・
言い訳を考えながら、電話を掛けなおした方がいいのか携帯を見つめ考えていた。
突然鳴り響いた着信音に思わず携帯を放りだしそうになる。
いったいどうしたら良いんだろう？
必死に考えながら思い切って電話に出た。
「・・・もしもし」
声が微かに震えてしまう。
「やっと出たか」
不機嫌な声が聞こえてきた。
「約束が違うよな。
俺からの電話は必ず出ることそれを初っ端から普通裏切るか？
散々お友達に付き合ってやったのに、奈美って結構冷たいんだ」
口調の変化にもついていけないのに、呼び捨てにされた自分の名前にも怒りを感じ、
「そんなの私の知ったことじゃありません。
それに私の名前勝手に呼び捨てになんかしないで下さい」
電話に向かい叫んでいた。
「それが奈美の本性なんだ」
聞こえてきた声に焦りを感じたが遅かった。
「お友達に今のことも含め電話しても構わないんだよな」
冷たい声に背中が凍りついた。
「違う今のは・・・」
言い訳を口にしようとするが、言葉が出てこない。
「今夜、昨日の店に八時、来るまでずっと待っている」
そう言って勝手に切られた電話。
奈美は深い溜息を吐いた。
更新が遅くていつもすいません。
