メモリー4
一人部屋の中、奈美はテーブルの上の携帯を見つめていた。
振動を繰り返す携帯を見つめながら、出ないと不味いと思う気持ちと出たくないという気持ちが複雑に交差している。
深呼吸をすると思い切って携帯を手に取った。
「もしもし・・・」
震える声で電話に出た奈美、
「もしもし奈美ーさっきはありがとう。
無事に信也と仲良くなれたのは、奈美のお蔭だよ」
深夜、携帯から聞こえてきた裕子のハイな声、(そうとう酔っぱらっている感じだった)
「良かったね、おめでとう」
奈美は呟くと後ろめたい気持ちになり、すぐに電話を切りたくなったが、裕子は解放してくれない。
「最高なんだから信也のじっと見つめる瞳・・・」
まだまだ話しは続きそうで、奈美は大欠伸が出てしまう。
適当に相槌を繰り返し、ウトウトしながら裕子の話しに付き合っていると、
「奈美ちゃんと聞いているの?」
怒鳴り声が携帯の向こうから聞こえてきて鼓膜がキーンとしてしまう。
「うんちゃんと聞いているけど明日大学で聞くじゃ駄目かな?
私も流石に眠たくなっちゃった」
思わず本音が零れていた。
「解った。じゃ明日絶対だからね」
やっと電話から解放されてホッと溜息を零した奈美。
携帯をマナーモードに切り替え、布団に頭から潜り込んだ。
眠たいのが限界に達していた。
スーと夢の中に引き込まれ・・・
再び振動を始めた携帯に気付く事はなかった。
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