表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メモリー  作者: 花子
16/17

メモリー16


 優子サイド

「優子の彼って奈美と付き合っているの?」

 講義で隣になった沙耶香の一言が胸に刺を刺した。


「あんたって馬鹿じゃないの?

 信也は今執筆作業で忙しくて私にも会ってくれないのに、

 奈美となんか会うはずないじゃない」

 口では強がって見せるが、心の中はザワザワさざ波が打ちよせていた。

「これ見てもそんなこと言ってられるの?」

馬鹿にした表情の沙耶香の声が甲高くなった。

「なんなのこの写真は?」

携帯を受け取った右手が震えてしまい左手で押さえた。

写真を見た瞬間、怒りで顔が真っ赤になる。

私にも見せたことのない笑顔で奈美と楽しそうに自転車に二人乗りしている信也の姿が映っていた。


 優子のプライドはズタズタに切り裂かれた。

家のキッチンからこっそり・・・を持ち出し鞄の中に忍ばせ信也のマンションに急いで向かった。


 信也は留守みたいでマンションの前でずっと立ち尽くしていた。

奈美の事を問い詰めるまで帰るつもりはなかった。


「本当だって俺が嘘なんか言うはずないだろう?」


 エレベーターの前から信也の楽しげな声が聞こえてきた。

私には忙しいと言って会ってくれないのに‥‥‥まだ他の女と続いていたんだ。

悔しさのあまり叫び出したい気持ちになったがぐっと堪えた。

今から修羅場になるんだから覚悟しておきなさい。

私みたいな綺麗な女を振るような馬鹿なまねは信也はしないだろうと信じている。

顔も見たことのない女に今から勝ったつもりでいた。

その時聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「嘘‥‥‥あれは書くだけで良いって約束だったでしょう」

 目の前の光景に思わず柱の影に隠れた。

信也のこんな楽しそうな顔を見たことは一度もなかった。

信也が笑顔を向けた相手は奈美。

素っ気ない態度の奈美、それに甘えるようにじゃれる信也の姿、


 (私の事を二人して馬鹿にして‥‥‥)

ハラワタが煮えくり返る思いで鞄の中から・・・をそっと取り出した。

部屋の中に入ろうとした二人の背中を追いかけるように、

後ろに居た信也の背中に刃を思いっきり突き立てた。

鈍い感触が指先から伝わってきて気持ち悪い。

もう後戻り出来なかった。

振り返った信也の顔は驚きで目をいっぱいに見開いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ