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メモリー  作者: 花子
15/17

メモリー15


 信也サイド

 あれから頻繁に優子から連絡が入るが忙しいと断っていた。

会いたくないが本心だが今は言い訳を繰り返し誤魔化している。


「いい加減にしてよ。

 私を呼び出す時間があったら優子とデートでもすればいいでしょう」

 呼び出すたび、不機嫌な顔をする奈美。

 (少しでもいいから一緒にいたかった)


 奈美サイド

 毎回なんだかんだで信也に呼び出され困り果てている。

大学では優子に彼の愚痴を散々聞かされ、

「次の作品を書いているみたいでちっとも会ってくれないの」

会ってもらえないのに、嬉しそうに愚痴をこぼす優子の表情に本当に好きなんだと思うと心が痛かった。

それなのに三日と開けず私を呼び出す信也。

私は彼の家政婦じゃないんだと言いたくなる。

それに愛のない体の関係も嫌だった。

他に女がたくさんいるくせに‥‥‥


「酢豚が食べたい」

 今夜は家でのんびりするつもりだったのに‥‥‥又呼び出された。

帰り道、スーパーに寄り食材を買い込み、彼のマンションに向かった。


 信也サイド

 キッチンで料理する奈美の姿が好きで又呼び出した。

今夜は俺の好きな酢豚をリクエストした。

手料理が旨い奈美。すぐにでも結婚したくなる。

そう思いながらついつい婚姻届けを貰いに行ってしまった。


 奈美に自分の気持ちを話せないまま時間だけが過ぎていく。

夕飯を済ませるとすぐに帰りたがる奈美の態度が気にいらない。

(俺がこんなに想っているのに‥‥‥)

無理やり奈美を押し倒し自分の欲望を満たした。

歪んだ感情だとは解っているが‥‥‥やめられなかった。


 隣で穏やかな呼吸を繰り返し真っ白な肌の奈美はそのままの姿で眠っている。

目尻の涙の後が俺の胸を締め付けた。

泣かしたい訳じゃない。本心を伝えるのがこんなに難しいものだと思い知らされる。



 奈美サイド

 テーブルの上の紙をぼんやり眺めていた。

彼はまだベットの中でぐっすり眠っている。


信也の年齢を考えたらおかしくない。

 何人もいるという彼女の中からそろそろ一人に絞る気になったんだろう。

もしかしたらその相手は優子かもしれない。

優子だったら彼にお似合い。

それなのに‥‥‥


「これに名前書いといて」

 目の前の紙に頭の中が真っ白になった。

「酢豚食べたい」と同じぐらい簡単に言われた言葉。

どうして私が?

「婚姻届に名前なんか書けるわけないでしょう」

馬鹿にされたみたいで気持ちが高ぶり顔が真っ赤になった。

「書くぐらいなら問題ないだろう。

 これはただ奈美と俺の契約の形だ。

 俺が優子に奈美から頼まれた事をバラさないためだ。

 別に俺は奈美と一緒になっても得なことなんか一つもないからな」

最近彼の事をほんの少し優しい人だと見直していたのに‥‥‥

こんなやり取りの中で彼の事が解らなくなった。



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