メモリー13
「嘘、本当にあれから信也、奈美に携帯返しに行ったんだ」
次の日、大学であった優子はいつもよりはしゃいでいた。
「本当ごめんね。優子の彼にわざわざ携帯届けてもらうようなことをして」
「別にそれは構わないけど、信也、奈美のアパートに上がり込んだりしなかった?」
鋭い優子の目つきに奈美は必死に否定した。
「まさか、玄関先で携帯を渡してもらっただけだよ」
「良かった。
信也、今のところ私以外にも女が何人もいるみたいんだから信用できないの。
いずれは、私一人で充分だと気づくように仕向けるつもりだけど、
その間は奈美も私に協力してね」
その言葉に奈美の心臓は波打ったが素知らぬ顔をした。
今からこんなことで上手く優子を誤魔化していけるのだろうか?
不安は隠せなかったがそれを貫くしか奈美の選択は残されていなかった。
「解っているんだろうな、時間に遅れるなよ」
要件だけ言って勝手に切られた携帯を手の平で持て余してしまう。
「誰からの電話だったの?」
好奇心剥き出しの優子の言葉に、
「田舎の友達から、今度こっちに遊びに来るみたいで」
精一杯の嘘をついた。
嘘は昔から苦手、いっそう全てを優子に話してしまおうか、そんな気持ちになったが、
やっぱり出来なかった。
この間みたいな騒ぎは恐ろしい。
人から向けられる冷たい視線、考えただけで背筋が冷たくなった。
待ち合わせ場所のカフェに着いてからも奈美は、落ち着かなかった。
そんな気持ちを誤魔化すかのように注文した苺パフェ。
昔から甘くて冷たいものを食べると気持ちは自然と落ち着いてくる。
一口スプーンを口に運ぶとそれだけで幸せ。
食べることに夢中になった。
てっぺんにのっかった苺は、最後の楽しみに取ってある。
これを最後に食べる瞬間がもっと幸せ‥‥‥
それなのに、横から伸びてきた手に真っ赤な苺は奪われた。
「‥‥‥嘘」
ショックで顔が上げられない。
「苺ぐらいいくらだって買ってやるから凹むなよ」
その声で待ち合わせをしていたことを思い出した。
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