メモリー12
「本当に私と付き合ってくれるの」
行為を終えベットの中、優子は信也の胸に顔をうずめ囁いた。
「あー別に彼女の一人ぐらい増えたって今更平気だよ」
この言葉にも優子は余裕の笑みを向けた。
売れっ子作家なら仕方ないこと。
最後で信也を自分一人のものにする自信がある。
今まで男を振っても振られたことは一度もない。
そのことが今の優子のプライドを支えていた。
「今度は俺からの頼み聞いてもらえるか?
この携帯、直接本人に返したいんだ」
優子を信也の瞳が見つめている。
男なのに色っぽい。優子はうっとり見とれていたが、ハッとして、
「でも私から‥‥‥」
拒もうとしたが‥‥‥
重なった唇で言葉を最後まで言わせてはもらえなかった。
激しいキスを終えた信也は、酸素を必死に求める優子の耳元で、
「俺は他人に頼み事をするのは好きじゃないんだ。
だから家の場所さえ教えてもらえれば後は自分で返しにいく」
その声の低さに背中がゾクゾクして、優子は思わず頷いていた。
別に奈美の住所を教えたところで間違いが起きることはないだろう。
余裕の笑みを浮かべる。
見えないところで不敵な笑みを浮かべる信也。
その様子に優子が気づくことはなかった。
どうして?奈美の顔は強張った。
玄関を開いた先に立っている信也の姿、
いつものように新聞の勧誘かセールスマンだと思い安気に開いた。
慌てて閉めようとしたが、
「携帯返しにきただけだ」
その言葉を鵜呑みにしてしまい、手を差し出した。
その途端、真也は奈美の腕を掴むと玄関の中に押し込んだ。
「ちょっとなんなのよ、大声出すわよ」
必死に抵抗するが、その声は信也の唇で塞がれてしまった。
もうどのくらいの時間が流れたんだろう?
暗くなった窓の外を見つめ、奈美は溜息を洩らした。
こんなつもりはなかったのに‥‥‥
優子の彼氏じゃなかったら、もっと抵抗できたはずなのに‥‥‥
狭いベットの中、奈美は窓の外をじっと見つめていた。
バラスと脅される度今回みたいに言いなりになるしかないのだろうか?
虚しい気持ちが心を支配し、もうどうすることもできなかったが、
背中に巻き付く腕がギュッと奈美の身体を強く抱きしめた。
「一人にしないでくれ、寂しいんだ」
信也の寝言にドキッとした。
この人は寂しいんだ。だから誰にでも擦り寄ってくる。
私もその中の一人に過ぎない。
それなら、それで割り切るしかない。
自分に強く言い聞かせた。
辛い選択だったが、奈美も親友を失くすのは怖かった。
陰口を叩かれるのも怖い。
又昔みたいに‥‥‥
本当に久し振りの更新で申し訳ない限りです。
読んでくれる人には感謝しています。