【敵はハルハ河西岸に集結中!】
みなさま、おはようございます(^▽^)/
今日は、この物語が少しでも読みやすくなるように、章の設定を入れてみました。
章の設定に伴い、サブタイトルもお話しの無いように沿うように変えてみましたよ(o^―^o)ニコ
これでもっと沢山の人に読んでいただき、ブクマや高評価をいただけ、再びランクイン出来るようになればいいのですが(;^_^A
それでは、本日も宜しくお願いいたしますm(_ _"m)
「大本営柏原少佐、ならびに中国大使館結城書記官、到着しました!」
「通せ」
「了解しました!」
エレベーターを降りて、薄暗い洞窟の中で待っていた。
入室の許可が出てチャンとドアがある部屋に通されて中に入ると、そこは洞窟のようにはなっていなくてコンクリートで覆われたビルの一室のようなチャンとした部屋になっていた。
違うのは大きな窓が無いことくらい。
「やあ、待たせたね」
石原のほうから手を出し、私は彼の握手に応じた。
石原にノモンハンの状況を聞くと、広いテーブルの上に地図を広げて説明を始めてくれた。
現時点では本格的な戦闘も、小競り合いもない。
情報はモンゴル経由で入って来るだけで、それによるとソビエト軍が鉄道を利用して沢山の兵士や戦車を持ち込んでいるらしい。
そしてそれらはハルハ河西岸に集結中であること。
そのため、現在ハルハ河東岸に偵察のため1個大隊を出して状況を探らせていると言う事だった。
1個大隊と聞いて私は驚いた。
偵察にしては、規模が大きすぎる。
これでは敵も、たかが偵察だと見過ごさず、挑発行為と認識して攻めて来る可能性が高いはず。
大胆と言えば石原らしいが、彼にしてはかなり無謀な気もして、その偵察隊をバックアップするための部隊配置を確認させてもらった。
後方には小松原少将率いる第23師団が控えていた。
時期こそ違うが敵の正面に位置するのが第23師団と言うのは前史と全く同じ。
師団長の小松原少将は前線に投入する部隊を小出しにしたため、敵に有効な打撃を与えられないばかりか投入された部隊もそれぞれに孤立して、第23師団は壊滅的な損害を受けてしまった。
もともと小松原少将の戦闘遂行能力には多くの将官から疑問の声があった人物で、師団付き参謀長の任に着いた大内孜大佐は、小松原在任中に戦いが起こることを危惧していた。
そのような人物を最前線になる場所に配置するのは石原らしくない。
これには必ず何か裏があるに違いないと思い、探りを入れた。
「偵察を大隊規模で出したのには何か思惑があるのですか?」
「ああ、より的確な情報が求められるから、関東軍参謀本部から人を出してもらったから、その護衛も兼ねている」
なるほど、確かに筋は通っている。
だが他の将軍は騙せても、私は騙されない。
「参謀本部からは、誰を指名して出してもらったのですか?」
地図を見ていた石原の動きが一瞬止まり、そして答えた。
「辻政信少佐だが、それが、なにか?」
辻政信。
彼は、このノモンハン事件で頭角を現し、後の太平洋戦争中に参謀として数々の作戦を企て “作戦の神様” と讃えられた人物。
だが、そんな作戦の神様が参謀として指揮した『ポートモレスビー作戦』や『ガダルカナル島の戦い』など、多くの兵士と物資が何もすることなくただ単に失われて行くだけの作戦になったこと、更に島しょ部の防衛に関しても、ただ「守れ!」と言うだけで有効な手立てを全く示すことが出来なかった事を踏まえると、これは陸軍でよくある
『勝てば手柄は自分の物で負ければ全て部下の責任』
しかも負けた場合にはその詳細な内容、つまり敗因を明らかにすべき立場にいるにも拘らず、生き残った関係者に自殺や懲罰を強要した。
たしか前史でもこのノモンハン事件で、最初の衝突から善戦して生き残った歩兵第72連隊長の酒井美喜雄大佐や師団捜索隊長の井置栄一中佐に対して小松原と共に敗因の責任を取らせるために自殺を強要した人物でもある。
つまり石原は、辻を要領よく捨て駒に当てた。
しかし何故?
前史を知っているならソレも頷けるが、彼はこの時代の人間でその事を知る由もない。
合理的に考えることが出来る石原が、ただ単に気に入らないと言うだけでこのような人事をするとは考えにくいから、本当に参謀直々に偵察をさせる必要があったのだろう……。




