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悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで  作者: 倉桐ぱきぽ
番外編

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22/25

悪役一家のある日の晩餐

 その日、私は、久しぶりに実家へ戻った。

 家族で夕飯を食べるのも、久しぶりのこと。

 テーブルに並ぶのは、私の好物ばかり。しかもどれもが、三ツ星レストラン並みに美味しかった。


 ……まあ、それも当然。


 うちのシェフは、超有名レストランの前総料理長。それを父が、札束の山の力で引き抜いてきたのだ。

 以前、家族でそのレストランを訪れた時、『毎日でも食べたい』と、私がうっかり言ってしまったからだった。


 私は父が年をとってからできた娘で、甘やかされて育った。幼くして母を亡くすと、甘々になった。そして、魔法学校の寮に入って、めったに家に帰らなくなってからは、ゲロ甘になってしまった。

 それは、年の離れた二人の兄も同じだった。


 私はとにかく、超過保護に甘やかされて育った。望めば何でも手に入り、わがまま放題、やりたい放題。嘘をついたって、何をやったって、叱られることはなかった。


 そりゃあ、悪役令嬢になるわ。ヒロインだって殺そうとするわ……。

 

 思わず、ため息がこぼれてしまった。それに、二人の兄がすぐに反応した。


「どうした、ロベリーちゃん。何かあったのか?」

「まさか、学校でいじめられたのか?」

「何⁉ 誰だ、そいつは⁉」

「うちのかわいいロベリーちゃんをいじめるとは、許せん!」


 二人の兄がヒートアップしたところで。

 ドスンと、テーブルを叩いたのは、父だった。


「ロベリーちゃんをいじめるとは、一体、どこの馬の骨だ! このワシが成敗してくれる!」


 今すぐに、悪代官も組長も黒幕も、どんな悪役をもこなせそうな強面。普通にしていても、どすの利いた低い声。

 私の第一印象は、間違ってなかった。悪役令嬢の父は、本当に悪役伯爵だったのだ。


「僕は、手足の爪を一枚ずつ✕✕してやる!」

「だったら、僕は✕✕に✕✕んで、海に✕✕めてやる!」

「このバカ息子どもがぁあああ!」

「父上⁉」

「生ぬるいわぁあああ! お前たちは生ぬるすぎて、もはや、冷水! ワシは、そいつを生きながらにして、全身の✕✕を✕✕で、手足の✕✕を一本ずつ✕✕ってやり、最後は、両足に✕✕を✕✕けて、海に✕✕めてやるわぁあああ!!!」


 わーはっはっと、高笑いする父に、


「さすがは父上!」


 二人の兄も同意した。


 こうやって、日々、悪行の数々と悪の名言をすり込まれ、極悪英才教育のもと、悪役令嬢は作られたわけだ。

 私はナイフとフォークを置いてから、静かに呼びかけた。


「お父様。もし、そんなことをなさったら、大事なアレを切り刻んでしまいますわよ」


 ギロリとにらみつければ、父の手からカラーンとナイフが落ちた。


 父も昔はあくどいこともしたらしい。それも、母と出会ってからは、すっかり改心したというけど。でも未だに、昔のクセは抜けきらないようだ。その度、今では私が母に変わって、にらみをきかせているのである。こっちだって大好きな家族を、犯罪者にするわけにはいかない。

 

「お兄様たちも覚悟なさってください。使い物にならなくなるまで、ボッコボコにして、細切れにして、最後は燃やしてやりますわ」


 二人の兄も立て続けに、カラカラっと、ナイフとフォークを落とす。


「ロ、ロベリーちゃん……」


 食堂は静まり返り、父も兄もしゅんと肩を落としていた。

 父も兄も、根っからの悪人ではないと思っている。身内びいきかもしれないけど。私に関わることにだけ、見境がつかなくなるだけで。


「お父様とお兄様には、何度も言ってますわよね? 法を犯すようなこと、犯罪者になるような真似はしないで下さいって!」

「じょじょ冗談だよ。ロベリーちゃん。冗談に決まっているじゃないか! な? な? お前たち」

「そそ、そうだよ」

「も、もちろんだ」


 兄たちも次々とうなずく。


「明日も社会に貢献するぞ。ノブレス・オブリージュ!」

「ノブレス・オブリージュ!」

「ノブレス・オブリージュ!」


 父と兄は、拳を天に突き上げ、コール・アンド・レスポンスを繰り返す。


 ……なんだか、やばい団体っぽい。でも、まぁ、一家で犯罪者になるよりマシか。


 叫び続ける父と兄を放置して、私はシェフにデザートをお願いした。



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