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◇◇◇冷蔵庫無しチャレンジ4日目◇◇◇


『元気かー?』とメールを寄越した、前の学校の友達。

 母さん同士も結構、仲良くしていた。

『やっぱり誰かオトナに、事情を話しといた方がいいのかな?』

 と迷いながらも、

『元気元気! 今度会おーぜ』とだけ、大雅(たいが)は返事を返した。

 

 キッズフォンをポケットにしまい、買い物に行く準備をする兄を見て、

 「あっお兄ちゃん、今日は(あん)もスーパー行きたい!」

 洗濯したタオルを洗面所の棚にしまいながら、妹が声を上げた。

 

 元々が共働きの家庭。

 今までも家事は手伝っていたから、2人共手馴れている。

 ただ夜になると、何となく心細くなって。

『お兄ちゃん、一緒に寝よ?』

 という杏の誘いに、留守番初日から。

 冷房を弱くかけたリビングに客用の布団を敷いて、並んで寝ている事は、友達には絶対に秘密だ。

 

「えっ……いや俺、自転車で行くから」

「歩いたって10分ちょっとくらいでしょ? パンとか自分で選びたいの!」

 言い出したら聞かない妹に、

「じゃあ自分で選んだ分は、荷物持つんだぞ? あとアイス禁止な!」

 厳しい声を出しながら、結局許してしまう――甘々な兄だった。


「暑い」「暑い」と言い合いながらスーパーに向かう途中、『東駅前商店街』と書かれたのぼりが目に入る。

「へぇ、こっちに商店街あるんだ」

「行ってみる?」

「いや……やめとこ」

 知らない商店街で買い物なんて、ハードルが高すぎる。

 個人商店に馴染みの無い、今どきの小学生はすぐに、首を横に振った。


 スーパーに着き、カゴを手にきょろきょろ……つい昨日の、あの子を探してしまう。

「何なに? 誰かと待ち合わせ? 彼女? 彼女出来たの!?

 だからお兄ちゃん、オシャレしてるんだーっ!」

 たちまち目を、キラーンと輝かせる杏に。

「おっオシャレなんて、してないだろ!?」

 思い切り動揺して、カゴを取り落とそうになる大雅。


 今日は黒のタンクトップにデニムのハーフパンツ、スポーツブランドのロゴ入り白い半袖パーカーを羽織っている。

 それに、いつものキャップ。

「だってそのパーカー大事にしてて、絶対スーパーには着て来ないでしょ? 今日はメガネだってしてないし!

 お兄ちゃんの彼女さんに会うんだったら、第一印象って大事だし――わたしも髪型とか、色々気を使ったんだよ?」


 まるで刑事のように、観察眼の鋭い妹。

 今日は髪を2本の三つ編みにして、白い大きな襟の付いた花柄ワンピ――という、昔のお嬢様みたいなスタイルで、得意げに腕を組む。

 頼むからその能力、別の方向に使ってくれ。

 

「かっ彼女とか、そんなんじゃないし……」

 動揺を隠して、右手を首の後ろに当てると、

「お兄ちゃん、ホントその『首痛いポーズ』似合うよね?

 イケメンだけに、許されるポーズ!」

 うんうんと(うなず)きながら、また意味不明な事を言い出す。


「そっそうだ、杏! 冷蔵庫入れなくても、大丈夫なジャム見つけたぞ!」

「えっ、ホント!?」

「給食で出てくるみたいに、個別包装してるヤツ」

「やったー! ジャムあったら、食パンでもロールパンでもどんとこいだよ!」

 話題を変えられて、ホッとひと息。

 浮かれる妹を売り場に誘導しながら、大雅はさり気なく店内を見回す。

 

 今日は来てないのか、あの子――高木 咲花(はな)さん。


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